遺言書を書いて法務局に預けてきた

ちょっとしたきっかけがあって,自分が死んだときに備えて遺言書なるものを書いておこうと思ったわけです.遺言書を残さずに死んだ場合は,法定相続のきまりに沿って該当する人に引き継がれることになります.たいした金額のものではないとしても,何かあって死ぬ間際になって,「あー,あれはあそこに引き継がれるのか…不本意だなぁ…」などと残念な思いをしながら逝くのはつらいだろうと思います.
自分の持ち物の行き先を自分で決めておいた方が,気持ちよく逝けると思うわけです.

公正証書になっている遺言書を見たことがあり、それが一番信頼されて安心だとは思います.ただ,専門家の手で作ってもらわなければならなかったり,公証人役場の人にも手伝ってもらったりと,つまりはなかなか面倒なわけです.
最近になって,法務局が遺言書を預かってくれるという新しい制度があることを知りました。それですと,ま,手軽にできそうですし,いい機会ですので,遺言書を書いてその制度を利用してみようかと思いました.

人なんていつ死ぬか分からないとは思いますが,わたしの場合,無茶をしなければまだしばらく時間があるかと思います.その間に身の回りや自分の心境にどんな変化があるか分かりません.公正証書の遺言書にしますと,後に気が変わってそれを書き直したくなったときに,またまた面倒です.その点,法務局に預けている遺言書なら書き直すのも比較的容易だと思います.

正式には 『自筆証書遺言書保管制度』と言うようです。法務省のウェブサイトでわかりやすく説明してくれています.死んだ時には,遺言書が保管されていることを残った人に郵便で教えてくれるサービス付きです.遺言書はこっそりしまっておくものでしょうが,死んだ後にそのまま見つけてもらえない可能性があります.そういうことは避けられるわけですね.

作業としては大きく2つに分かれます。ひとつは遺言書を書くこと,2つ目は申請書を書くことです。その2種類の書類を作ったら提出です。
ま,このあたりは制度が変わることもありますので,あくまで今現在のわたしの場合として書いておきます.

遺言書は,自分で手書きしなければなりません.文章を手書きするなんてむちゃくちゃ久しぶりです.例文はネット上にたくさんありますので,いくつかを参考にしました.結局PCに打ち込み,プリントアウトした紙に,白紙を重ねて透けて見える文字をなぞるようにして書き上げます.まったく達筆ではないので恥ずかしい気がします.こんな下手な文字でも国が預かってくれるのかと不安になります.
具体的な資産の内容は別紙にしましたが,これは手書きである必要はなく,PC打ちやコピーでいいようです.例えば遺言書の本文で,「別紙の口座の預金を…」と手書きし,別紙として貯金通帳の表紙のコピーを用意すればいいようです.不動産なら登記簿の写しでいいようです.わたしの場合は,別紙は数行のリストをPCで作り,プリントアウトしました.本文と別紙が1枚ずつで収まりました.
一方,申請書というのは,法務省のウェブサイトからダウンロードできます.PDFファイルですが,文字を入れる空白の四角いマスがいっぱいある書類で,そこに住所や氏名などをPCで打ち込んでいくことになります.もちろん手書きで埋めてもいいようです.用紙は5ページぐらいありますが,わたしの場合は事実上,ほぼ2ページだけの打ち込みで済みました.

住民票を入手して書類が揃いますと,法務局へ向かいます.法務局ならどこでもいいわけではなく,住所や不動産のある府県でなければならないようです.また,一部の小さな法務局では,この業務は扱いがないようです.ということで都市の中心部にある大きな役所へ行きました.
3,900円を支払う必要があるのですが,事前に役所内の窓口で同額の印紙を買っておきます.ま,後からでも買う時間は十分ありました.

ネットで予約していた時間より早めに着いてしまったのですが,係の人が声を掛けてくださり,応対してもらえました.
カウンターで,遺言書の本文と別紙,さらに申請書を見せます.遺言書の方はあっさりとしか見られません.遺言書の書き方については口出しをしないことになっているようです.書いた本人の責任ですね.
申請書の方はじっくりと見られます.わたしの場合は,少し打ちまちがいがあり,その部分だけその場でボールペンで修正することになりました.
あとは,登録するのに30分ぐらいかかるとのことで,そこら辺をうろうろしながら待ちます.
応対してくれた人もそうでしたが,局内を見ますと,女性の人が多く,揃ってなんだかとてもおしゃれな装いです.法務局の中でも,ふだん登記簿などをもらいに行っている部署とは働く人種が違うようです.他から出向している人たちかもしれません.
そんなことを感じながら気持ちよく過ごしていますと,名前を呼ばれます.カウンターへ行きますと,先ほどとは別のやっぱりおしゃれな人が,『保管証』という書類を渡してくださいます.登記簿のような薄緑色の紙で,機械で打たれた14桁のアルファベットと番号が載っています.
説明を受けます.「法務局に来れば保管した遺言書を見ることができる.保管証の番号を伝えるとスムーズだが,なくてもなんとかなる.生きている間は,本人でないと見られない.撤回もできる.内容を変えたければ改めて保管もできる…」といった説明を受けます.
法務局では,全部で小1時間の作業となりました.

さて,終わってみるとなんだかとても気持ちがすっきりしました.なんと言っても,専門家がPC打ちした公正証書遺言書とは違い,「自分の手で書き上げた」という達成感のようなものがあって,うれしいものです.

(ひろかべ)

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