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池袋

池袋にきて、はや6年が経った。初めての東京生活に対して、やっていけるのかと思う不安。これからどんな楽しいことがあるのか、新しいものにであう期待。何もかもが新しい世界。染まっていくことに精一杯だった。

それから6年後の今日。新しく見えた景色は、見慣れた景色に変わった。刺激の少ないものへと変わっていった。変わったといえば、6年前にあったものが無くなっていることだろうか。

『ワンコインランチ』の冊子を片手に持って片っ端から行ったお店、夜食として使っていた有名チェーン店、サークル活動の帰りに寄ったいつものお店もなくなっていた。

自分たちの思い出が詰まった場所が、無くなった。 思い出を思い出すきっかけを奪われた… そんな気分。

大学近くにいくと見慣れた光景があった。いつものように人混みで歩きにくい。遅刻できる回数を計算して歩いたことが昨日のようだ。

大学は何も変わってない。だけど某ウィルスによって校内に入ることは、関係者以外はできない。もう関係者じゃないのかと現実を突き詰められる。

キャンパスの中に行っても、知り合いに会うことはない。「今日よく会うね(笑)」「久しぶり! 元気?」とすれ違ったときの会話もできない。知り合いがいないだけで、こんなに世界が変わるのか。キャンパス内の建物は何も変わってないが、キャンパス内の雰囲気は変わった。これは時間の経過が奪ったものだ。

唯一思い出を呼び起こせる場所は、閉ざされたものとなった。時間は2度と戻せないが、振り返ることはできる。しかし、その機会も今はできない。

右も左もわからない池袋だったが、今ではどこにいっても思い出が詰まった場所になっていた。

思い出が詰まった場所もいずれ変わってしまうのだろう… 今のうちに目に焼き付けておきたい。

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