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読み聞かせ 項羽と劉邦

項羽と劉邦

むかしむかし、いまから2200年ほどむかし、中国に二人の若者がおりました。

ひとりを劉邦(りゅうほう)

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もうひとりを項羽(こうう)といいました。

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劉邦は中国の沛(はい)というまちに生まれ、べんきょうもせず、しごともせず、まいにちまいにちあそんでくらしていました。
でも、劉邦にはたくさんのともだちがいたのでした。

劉邦はともだちとまいにちたのしくあそんでくらすのがすきなわかものでした。

いっぽう、項羽のほうはとてもゆいしょただしいお家に生まれた若者で、ちからもつよく、いつもいばっていたのでした。

「あっはっはっ。おれがいちばんだ」

項羽はいつもそう言っていばっていたのです。

あるとき、中国の王様とけらいたちのぎょうれつが項羽と劉邦の前を通りかかりました。

それはそれはたくさんの馬やたくさんのけらいたちを従えたおおきなぎょうれつで、まちのひとはそれを見てひどくおどろいたのです。

「これが中国の王様か」

「やはり王様はすごい」

「さすが王様だ」

とそういって人々はぎょうれつを見てはささやきあっていたのでした。

そんななか、項羽はひとり、こうつぶやいたのです。

「いつかおれがあいつにとってかわって王様になってやる」

それを聞いたまちのひとはびっくりぎょうてん。

みんな項羽のほうをじろじろみていました。

項羽といっしょにいたおじさんの項梁(こうりょう)もそれを聞いてびっくりしてしまいました。

「ははは、なんでもない、ただのじょうだんだよ」

そういってごまかしてその場をはなれたのでした。

項梁は、項羽をひとけのないところまで連れてきて言いました。

「項羽、めったなことを言うもんじゃあない。あんなことをいってお役人にばれたらろうやに入れられてしまうぞ!」

項梁にそういわれた項羽ははんたいにおじさんの項梁にこう言い返したのでした。

「おじさん、あいつはおれたちの家をほろぼそうとしたやつだろ!このままほうっておけるかってんだ!」

その項羽のはげしいまなざしを目にした項梁は

「こいつならひょっとして王様をたおすかもしれない」

とそうおもったのでした。

さて、一方。

遠くはなれた沛のまちでも、劉邦がおなじ王様の行列にでくわしました。

「なんてえ大きな行列だあ。おとこならいちどはあんなふうになってみたいもんだなあ」

王様の行列をまえにして劉邦はこうつぶやいたといわれています。


さて、それから何年か時がすぎ、中国の王様はきびしい政治でひとびとを苦しめるようになっていきました。

重い税金をかけたり、つらい仕事をむりやりひとびとにさせるようになっていたのです。

まちには盗みやごうとうがあふれ、お役人たちはひとびとをだまして、貧しいひとからお金をとったりするようになったのでした。

王様の政治がきびしくなり、ひとびは苦しんでいたのでした。

そして、しばらくすると中国のいろいろなところで、王様をたおすために人々がたたかいをはじめたのでした。

「王様をたおせー!」

「おれたちの生活をまもれー!」

そういってひとびとは団結して、各地のお城をどんどん自分のものにしていったのでした。

そして、項羽と劉邦もそれぞれ、王様を倒すためになかまを集めてたたかうことにしたのです。

そんなあるひ、ある知らせが劉邦たちのもとにとどきました。

それは王様が病気で死んでしまい、その弟が次の王様になったという知らせでした。

それを聞いた項羽と項梁は、かんがえをめぐらせました。

「そうだ!もう以前の王様はいなくなったのだ。」

「だからおれたちはおれたちで、新しい王様を自分たちで選ぼう!」

項羽と項梁は自分たちの故郷からあたらしい王様を探しだしました。

そして項羽と項梁の新しい王様は、反乱をする人々にむかってこう言ったのです。

「中国の都、咸陽に一番にとうちゃくしたものを次の王様にしよう」

それを聞いた中国各地の軍隊は

「わーー」「わーー」

と声をあげました。

みんな自分が咸陽に一番乗りしてやる と意気込んだのです。

項羽も、劉邦も同じように自分が一番になってやる とおもっていたのです。

張良と老人

このころ、一人の若者が劉邦のけらいにくわわりました。名前を張良(ちょうりょう)といいました。張良はとても頭のいい若者で、その昔、ある老人に出会い、たくさんの兵法や学問を学んだのでした。

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張良がたくさんの学問をおさめられたのは、この老人との出会いがあったのです。

まだ張良がわかいころ、橋のたもとで考えごとをしていると、一人の老人が張良のとなりへやってきました。

そして、自分のくつを脱いで、ぽいっと川へ投げこんだのです。

張良がびっくりして老人のほうを向くと、老人はこういったのです。

「そこの若造、くつをとってきなさい」

張良はびっくりしてたずねました。

「えっ、あのくつを、わたしがですか?」

「決まっておるじゃろう、はやくせんか。くつが流されてしまうぞ」

老人はそういって張良をせきたてました。

しかたがない、、そうつぶやいて、張良は川べりからざぶん、と水のなかへはいり、じゃぶじゃぶと川底を探し、
くつをひろい、老人に手渡しました。

「どうぞ」

びしょぬれになった張良は老人にくつを手渡そうとしました。

けれども老人はなにも言わずつっ立っているだけです。

いぶかしくおもっていると、老人ははだしの足をひょいと張良にむかってさし出しました。

張良はわけがわからず、老人に目をやると、

「はかせるんじゃよそのくつを」

と言うのでした。

さすがの張良もむっとしました。

「しょうがない老人だなあ」

そう思いながらも、張良はていねいに老人にくつをはかせ、うやうやしく老人に頭をさげました。

老人はよしよしと満足げに笑うと、くるっと背を向けお礼もいわず、つかつかと去っていこうとしました。

そして、橋のむこうまできたところで、再びくるっとふりむき、張良にこう言ったのでした。

「おまえは感心なやつじゃな。5日後の朝一番にここにこい、おまえによいものをやろう」

張良はなんのことだかさっぱりわかりませんでした。

けれども、なにかただならないものを感じた張良は5日後の朝早く、昨日の橋へむかうことにしました。

コケコッコー

一番鳥が朝をつげるちょうどそのころ、張良は橋のたもとにとうちゃくしました。

ところが昨日の老人はすでに橋のまんなかで張良を待っていたのです。

「おそい!5日後の朝、もういちどここへやってこい」

そう言うと老人はさっさと歩いて立ち去ってしまいました。

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