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【お知らせ】LINEマンガにて、編集を担当した『戦国アナーキー』が連載開始しました!

こんにちは。田中裕久です。

本日は自宅でこの記事を書いています。ベローチェ&タリーズもよいのですが、やはり、何となく落ち着かず、自宅で、ミカン箱の上にパソコンを置いて、パタパタとこの原稿を打っています。

コロナ、大変ですね。先日市役所で80歳のおばあさんに聞いたら、そのおばあちゃんも「こんなの人生で初めてだ」と言っていたので、100年に1回級の事態が現在進行形で起こっているのですね。半年後の経済がどうなっているのか、それは誰にもわからないと思います。ただ、地球はグルグル回り続けている。私たちは溶けてバターになるまで地球と一緒に周っていきましょう。

さて、本日は、「論理的な感情移入」のお話をしようと思ったのですが、私がこの半年担当編集者として準備してきた『戦国アナーキー』(LINEマンガ)の連載が始まったので、ちょっとこちらのお話をしたいと思います。

『戦国アナーキー』作者・吉沢潤一さんとの出会い

作者の吉沢潤一さんは、私が専門学校で勤務していた時の生徒でした。

在学中にものすごい勢いでヤンキーマンガを描き、「ヤングチャンピオン」で『足利アナーキー』の連載準備に入り、卒業とほぼ同時に連載を開始しました。『足利アナーキー』は斬新な手法で、かなりの人気と話題を集めました。

その後、幾多の連載を生み出した人気作家なのですが、私としては、吉沢さんとマンガが作りたいなと思い、何となくの企画(ヤンキーが戦国時代にタイムスリップする話)を話したところ、彼も乗り気になってくれたので、15年ぶりに一緒にマンガを作ることになりました。とっても幸せです。

私は企画を作る時には、必ず3つの面白い要素、それは、キャラクターでもよいですし、ストーリーライン・シチュエーションでもよいですし、セリフ・画力・ギャグセンス、何でもよいのですが、確実に3つは面白い要素がないと、「面白い要素の少ないマンガ」になると思っています。特にWEBマンガにおいては、前回話した「直感的感情移入」以外についてその点をおざなりにしている作品が多く、ビュー数・いいねの数を見ていると、やはりそういう加速要素の少ないマンガは、途中で失速する率が高いように感じます。

眠れぬ夜の妄想から、「3つの面白さ」を見出すまで

さて、この「ヤンキー×戦国時代」ですが、大元は、私が毎晩寝付くまでにする妄想が基になっています。私は毎晩、特に眠れない夜などには、関ヶ原の合戦などで、西軍に世界のラグビー選手2000人が投入されたらどうなるだろう?と思います。

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ほぼ2メートルを超える、屈強な大男です。これが当時160センチが平均身長の日本の合戦に参加したら、どうなりますかね?

しかも、彼らは痛みに強い。おそらく、槍で刺されようが、弓で刺されようが、鉄砲で撃たれない限りはほぼ死なずに槍と剣を持って中央突破していくと思います。

私は眠れぬ夜は、脳内に西軍・東軍の陣地の地図をイメージして、例えば島津軍が陣取った隣りに2000人の兵を並べて突撃したらどうなるか、などを考えています。たわいもない妄想ですが、面白い。個人的に。

それで、私は吉沢さんはヤンキーマンガがとても上手に描けるイメージがあったので、ラグビー選手じゃなく、ヤンキーだったらどうだろう? と思いました。

もちろん、戦国時代の侍はいくさ慣れしているし、戦術は理解できている。

しかし、まず現代人の方が背が高いし、バイクに乗って関ヶ原の合戦を中央突破したら、きっと面白いことになるだろう。という、ビジュアルが浮かびました。これが、面白さの①です。

私はこれを吉沢さんに話し、LINEマンガ連載に向けて作っていきましょうとなったのですが、このアイデアを拡げてみると、ヤンキーにとって戦国時代はとても居心地がよい

何故ならば、戦国時代には勉強はないし、校則や社会的なルールがない。暴れれば暴れるほど評価され、褒美などがもらえる。偶然ですが、ここでアイデアががっちりはまり込みました。これが面白さの②です。

筋の良い企画というのは、経験的にこのような「後付け」が沢山生まれます。後付けとは、最初は考えていなかったけれど、シチュエーションや設定が色々な他のエピソードと繋がっていく、というものです。後付けが多い作品は面白いことが多い。

あとは、吉沢さんが、これまで描いてきたキャリアで、面白いヤンキーマンガを描けば、見どころとして、

①「面白いヤンキーマンガ」
②「ヤンキーたちが戦国時代で活躍するカタルシス」
③「戦国時代で、信長の家臣などにならず、独自のギャング集団を作っていく目新しさ(+ギャングのかっこよさ)」

という「計算できる面白さ」が3つになります。

企画は、企画書とネームを描いたらすぐに通りました。これは、吉沢さんのこれまでの実績も加味されています。

細かいことは考えず、「ファンタジー枠」に思い切り振り切る

連載準備中は、コロナ騒動などでだいぶんヤキモキしましたが、先週の金曜日にリリース、おかげさまで、人気急上昇ランキングでトップに表示されたりしているので、そこそこの読者さまはついてくれたのかな、と思います。

この作品、最初は「群青戦記」とかぶるのではないか?という心配をしましたが、ヤンキー押しになればかぶりません。

また、例えば桶狭間の合戦において、「雨の山道をバイクが走れるのか?」「ガソリンはなくなったらどうするんだ?」「歴史考証が甘くないか?」などのツッコミは当然ありましたが、私としては、難しいことはほぼ無視して、「ファンタジー枠」でこのマンガを作りたい、吉沢さんにもそういう細かいツッコミは考えず、思い切りヤンキーマンガを描いて欲しいと思いました。

今、コメント欄に載っている色々な意見を見ると、読者のほとんどもここの部分を理解して、いわば「マンガ的ウソ」(これはとても重要な概念なので、また今度ゆっくり話します。)を楽しんでくれていると感じます。読者のみなさんには、本当に感謝です。

そんなわけで、『戦国アナーキー』は、とりあえず「失敗ではない連載スタート」にはなりました。

今後、どのように売れていくかは、時々このコラムで書かせていただきます。

では、みなさん、コロナが大変だとは思いますが、創作の世界に集中し、三昧の境地でがんばりましょう!

4月15日
ミカン箱の上のパソコンを叩きながら
田中裕久

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