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シリコンバレー人材流出論の真偽

昨日こんな記事を読みました。

生活費の高騰やコロナを理由に、テック人材がシリコンバレーから流出しているという記事です。イーロン・マスクやオラクルが拠点を移したテキサスが、流出先としてよくあげられますね。

私自身シリコンバレーを脱した一人です。大学を卒業して3年ほどAsanaのサンフランシスコ本社でエンジニアとして働きましたが、その後Asanaの日本展開に従事するべく東京に拠点を移しました。

自分の経験と照らし合わせて、この頃よく聞くシリコンバレー人材流出論に対する考えを3点にまとめました。

1. シリコンバレーがITの中心であることは変わらない

私が大学を卒業した5年前、ハーバードのコンピューターサイエンス学科は100名ほどいましたが、9割ほどがシリコンバレーに流れた印象です。私のアパートの徒歩圏内だけでも同窓の友人がたくさんいて、週末は一緒にバーに繰り出したりしました。その後新しい友人もたくさんできましたが、根底で自分を支えていたのは大学時代の友人の盤石なネットワークでした。

テックに強い新社会人の22〜23歳の若者は、引き続きシリコンバレーに来たがるでしょう。たくさんの友人や先輩がいるシリコンバレーを退けて、他の都市に敢えて行きたがる若者は少数派だと思います。そして、こうして多くの優秀な若者が流入し続ける限り、シリコンバレーはITの中心として活力を失うことはないでしょう。

そもそも、シリコンバレーから人が流出するのは今に始まったことではありません。私だって今は東京ですし、シリコンバレーで数年経験を積んで、その後他の都市に移住するのは、コロナ前からもとてもよく聞く話でした。その流出のペースが多少早まってはいるのかもしれませんが、それだけで世界随一の投資家・起業家・技術者・大学からなるエコシステムが一朝一夕に崩れるとは考えにくいです。


2. ただ、今シリコンバレーがどうこう以前にアメリカが大変そう

ベイエリアでの生活が楽しくも大変だったという記事を、以前noteに書きました。

この記事を書いたのが昨年の8月ですが、あれから色んなことがありました。黒人の権利にまつわるデモ・暴動、大統領選、そして先日の議会乱入と、過去に例を見ないくらい今アメリカが揺れているのはご存知の通りです。

外国人としてアメリカで働くのは容易ではありません。複雑な移民制度を理解し、大使館に何度も足を運び、大統領のツイートに一喜一憂して、場合によってはくじ引きに自分の運命を任せて、待って、待って、待って、ようやく就労ビザが手に入ります。

そこまでして移り住みたい国なのか。そんな厳しい問いを、世界中の人たちが今のアメリカに向けています。

シリコンバレーの王座を揺るがす要因にはならないと思いますが、諸外国からの人材の流入は少し落ち着くかもしれないと見ています。

3. 日本は今がチャンスではないか

アメリカがそこまでして移り住みたい国なのかを問うているのは、優秀な日本の人たちも同じです。

私のシリコンバレー時代の友人たちも、独り身でフットワークの軽い人たちから日本に長期帰国しています。数ヶ月日本からリモートで働いてみて、もういっそこのままでいいんじゃないか・・・という声も聞こえてきます。

元々アメリカで腕を鳴らしていた技術者が、一部でも日本に帰ってくるのは、日本にとっては好機です。かねてから、日本には優秀なエンジニアが不足しているんだろうなと思わされるニュースを度々目にしてきました。

大企業にせよスタートアップにせよ、海外人材を囲い込むなら今がチャンスだと思います。

いかがでしょう。アメリカの状況を対岸の火事のように捉えるのは気がすすみませんが、日本が発展するのはアメリカ含む世界にとって良いことのはず。コロナで厳しい状況が続く中にも、経済を押し進める糸口が見つかれば良いと思います。

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