見出し画像

全体像をつかむ

組織として仕事をする場合、チームリーダーの働きは大事です。まず自分が仕事の全体像をつかむ必要があります。そして、新入であってもルーチンワークを与えられた時でも仕事について抽象思考をする癖をつける事が能力の高いチームリーダーに育つ為には必要です。

石切り場の話

石切り場にやってきた男が石工に『何をしているのか』と尋ねました。一人の石工は不機嫌そうな表情で『この忌々しい石を切っているところさ』とぼやきました。別の石工は満足げな表情で『大聖堂を建てる仕事をしているのだよ』と誇らしげに答えました。

完成した暁の大聖堂の全容を思い描く事ができて、しかもその建設工事の一翼を担っている石工はただ目前の花崗岩を見つめてうんざりしている石工よりはるかに満足しているし、生産的です。

何年かしたあと同じ石切り場を訪れると、ぼやいていた男は同じように石を切っていましたが誇らしげに言った石工は大聖堂建設の現場監督になっていました。ビジネスリーダーはプランを作り、人々にその完成図を示して建設への意欲を鼓舞するような人でなければいけません。

全体像をつかむ

仕事は全体像が見えていなければどんどん複雑になっていきますし、必然的にミスやロスが多くなってしまいます。全体像をとらえておくと余計なミスやロスが無くなり、よりシンプルに最短距離でゴールする事ができます。

植木屋の親方は時たま手を休めてちょっと離れたところから若い職人さん達の働きを眺めています。これは一人だけサボっているわけではありません。そうかと言って職人さんたちの動きをチェックしているのでもありません。

枝の一つ一つの剪定が庭全体のバランスを崩していないかをチェックしているのです。もし親方までが職人さん達と一緒になって剪定作業に夢中になっていたら部分的には素晴らしい物ができるかも知れませんが、庭全体がちぐはぐなものになってしまうでしょう。

ルーチンワーク

ルーチンワークとは本来考える事なしに出来る仕事です。『考える事なしに』という言い方が分かりにくければ無意識のうちにできる仕事と言い換えてもいいでしょう。要するに、車を運転する事や編み物するのと同じです。更に大組織の場合、平社員だけがルーチンワークを強いられているのではありません。

課長・部長・役員・社長、などの役職についても皆、似たようなものです。例えば大企業の社長が組織運営上の難題に取り組む事もルーチンワークです。大胆な改革を打ち出すために頭をひねるとしても、それは大企業では抽象思考とは無縁です。改革のアイデアは代々の社長がみな取り組んできた事の焼き直しです。

またコンサルタントにお金を払えば世界で行われた組織改革例の一覧がポンと目の前に出てきます。社長はそのメニューから好きな物を選べばいいだけの話です。このくらいの仕事なら車の運転や編み物と同じレベルです。

結果として文系出身者はもとより理系出身者でさえも大学卒業時に脳の働きがピークを打ち、その後は一方的に退化させていきます。この様に日本のビジネスマンは会社に入社したその日から定年退職の日までルーチンワーク漬けの毎日を送ります。そしてようやく定年を迎え、会社から解放される時には脳はすっかり使い物にならなくなっています。これではいけません。

どんな仕事に就いても仕事の全体像をつかみ、内容について抽象思考をする癖をつけないとその人の成長は望めません。

岩山を切出して建物を作るのは大変な、作業です

大企業のスローガンとして言われている『創造性』、『オリジナリティー』などの言葉は社員を同じ方向に走らせる為に鳴らす進軍ラッパです。今は戦時ではなく平時ですから人間のお尻を叩く手段には恐怖や暴力ではなく耳触りのいい言葉を使っていますが、目的は考える力を奪い、巨大な幻想を抱かせて大衆を総動員することにあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?