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『社会学入門』

稲葉振一郎著『社会学入門〈多元化する時代〉をどう捉えるか』(NHKブックス/2009年刊)を読みました。この本は著者の稲葉さんが、最近SNSで紹介されていて知りました。稲葉さんの『寝ながら学べるニック・ボストロム第2回』も直前だし(第1回の飲みの時、自分が共通言語皆無だった謎に迫るためにも)そして、内容が僕にふさわしい〈入門〉なので読もうと手に取りました。しかし、読んでみたら、今の自分にとってドストライクな内容でした。急いで読んだので、流し読みになってしまったのが残念です。間違いなく書き込みしながら読んだら余白が無くなるタイプの本です。

内容は、社会学を学ぶ学部1年生向けの講義を著作化したもので、どこが入門書やねん⁈という本が多い中、間違いなく優れた入門書でした。今まで社会学というと、統計とかあって苦手、テレビでクローズアップ現代を観て終了、という感じだったのですが、特にこの本の後半はドツボです。ズバリ、近代をどう捉えるかがテーマです。そうだったのか社会学……誤解していました。僕の作品も近代をどう扱うかが大きなテーマなのですが、近代やモダニズムについて書かれた本を探しても、なぜかピンとくるものがなかったんです(『虚構の「近代」』が積読なので、単純な遅読のせいでもありますが)。それが、本著は入門書レベルなのでしょうが、鋭く考察されています。そして、巻末には丁寧な読書案内まで。丁寧過ぎて遅読の身には絶望的な量なんですけれど。

これを読めば、僕の未熟な近代観が補完されるのは間違いないです。内容が多岐に渡っているので、全ての感想は言えないのですが、一番印象的だったのは、社会学に一般理論がないのは「社会的に共有される意味・形式の可変性・多様性についつの学問だから」というところでしょうか。要するに、どう変化するかわからないもの、あるいは変化自体については、一般化できないということでしょうか。これって、モダニズム芸術も近いですよね。現代美術は新しさを宿命付けられていますから、そこにあるのは常に暫定的な理論でしかないと言えます。

あと、なんとなく自分は〈時代の危機への脅迫観念〉と相性が良さそうなので、適切な距離が必要です。そして、この中に出てくる〈大衆〉の話は、全く考えたことも無かったので、なるほどと思いました。

とにかく、何かの新しい部屋のドアのノブに手が掛かった感じです。

#アートの思考過程

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