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コンセプト

コンセプトの話です。

前から気になっていたことがありまして、現代美術はコンセプトが大切だと言われます。実際そうなんですが、自分はなかなか自作のコンセプトを上手く説明できない。「浮世絵を西洋風に、陰影を使って描くのがコンセプトです」とか言っても、それは表現の話でコンセプトを説明しているわけではないですよね。

で、一言で言えるキャッチーなコンセプトを考えようと思いました。今回そう思った直接のきっかけがありまして、最近、Facebookで10m TVの広告を頻繁に目にしました。コンテンツの中に哲学の講義もあったので、試しに登録してBGM代わりに観ていました。すると何の気なしに観た楠木建さんの『ストーリーのための競争戦略』の講義がめちゃくちゃ面白くて、その中で扱われているコンセプトの話に心を動かされました。詳しくは直接動画を観ることをおすすめしますが、要は企業活動はコンセプトに始まりコンセプトに終わるという当たり前の話です(そのあたり前のことを、ほとんどの会社ができていないというのが肝です)。

芸術作品と企業活動の違いはあれど、初めに触れた通り現代美術もコンセプトが大切です。そこがクリアに定義できていないと、作家活動も深まったり広がったりしない。つまり、基準がないと深さ広さは把握できません。そこで、まじめに考えて、これ以上に本質的なものはないと思ったコンセプトがこれです。

『西洋と日本の間(あいだ)の現代美術』

シンプルですよね。「間って何?」って感じですが、そこが肝です。と言うか、そこしか肝はありません。つまり西洋文化を単純に取り入れるとか、見本、参考、アレンジ、模倣、擬態するとかではなく、西洋と日本の間に没入し、主体性を限りなく放棄して、作品を生み出すという感じでしょうか。近代的なものと距離を取るのが僕の基本姿勢なので、主体性にこだわるのはどうかなぁという感じです。ただし、あくまでも現代美術家としてそれを行うので、メタ的なのは否定しませんが。

そもそも、僕は「現代美術は西洋美術である、だから非西洋人に現代美術をする資格はない」という無茶な設定を自分に課しているので、それ越えるための今現在の答え(あるいはルールの解釈)が、このコンセプトです。

ちなみに「間って何?」と思って「間の哲学」で検索すると、速川治郎著『間の哲学』という本が出てきました。これは読まねばと思ってポチリましたが、どうやら著者はヘーゲルの研究者らしいので、全く理解できない可能性が大です。そして「西洋と日本の間」で検索すると篠原資明著『現代芸術の交通論ー西洋と日本の間にさぐる』が出てきました(こちらは『あいだの哲学』)。僕は面識がないのですが、皆んなが知っている篠原さんの研究です。へぇ、と思いましたが、京大人気講義シリーズと銘打たれているので、単に僕の勉強不足でしょうか。

コンセプトを考えたら、それを正しく理解するために勉強が必要でした、はぁ。そこから言えるのは(他の人はいざ知らず、僕に限って言えば)作品が先にあるのは確かです。理屈はそれを追っかける感じです。制作というのは、ある種の衝動でもありますから。そこで、作者よりも的確に作品を解釈するのが、優れた批評でしょうか。まあ、作者の意図と全く異なる創造的な批評もありますけれど、作者を殺す批評以外はありですかね……。

#アートの思考過程

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