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『社会学はどこから来てどこへ行くのか』

"どこどこ"こと、岸政彦、北田暁大、筒井淳也、稲葉振一郎著『社会学はどこから来てどこへ行くのか』(有斐閣、2018刊)を読みました。社会学をリードする研究者の方々が、社会学について本音で語った、白熱した対話の記録で、とっても面白かったです‼︎………。と、言いたいところですが、さすがにこの本を面白いと思うためには、社会学の世界に何かしら足を踏み入れていないと難しいのでは、と感じさせるほど、専門的な内容でした。

社会学の文脈をわかっていないと理解できない話が延々と続くわけですが、当然すべて日本語で話されているので、表面的な会話は理解できます。なので、それを読みながら、文脈を想像するという読書体験になります。まあ、よく考えたら、自分が哲学の本を読むのもそんな感じですが。

しかしながら、その中でも量的調査VS質的調査の立場の、愛憎半ばする(と言えば言い過ぎでしょうが)、独特の距離感とかすごく面白かったです。素人が考えるよりも、とにかく何事も奥が深い。突き詰めれば突き詰めるほど、白黒つかない領域に入るのが人間の営み、というのがよくわかりました。

個人的な興味で言えば、(一般的)法則と(個別的)因果連関の話が出てきたところで、グッと面白さがツボにはまりました(と、言ってもそんなに内容を理解したわけではないですが)。美術界は基本的に、人が恣意的に関わるので、一般的な法則が成り立たなくて、ほぼ因果論的なんですよね。だから美学がどうの、モダニズムがどうのと言っても、アグレッシブなコレクターが、その情熱でバスキアを競り落とすと(一例)、それで歴史が動いたりするんですよね。それを一般化したり数値化したりするのは不可能でしょう。まあ、そこが学問とは違う面白さでもありますが(ん?アートワールドも、一つの社会的コミュニティかな?…)。

もう一つ、超個人的なことで言えば、著者のお一人の稲葉振一郎さんの『寝ながら学べるニック・ボストロム』の講座の途中で、この本の書影を発売前にスマホ画面で見せて頂いたので、全くの他人事とは思えませんでした(読んでみたら、内容は完璧な赤の他人級でしたが)。まあ正直、自分が有斐閣の本を読む日が来るとは思わなかったので、良い経験になったと思います。それに、社会学の歴史と地図の良きガイドにもなっているので、興味のある方は必読の書ですね。

12月の梅田蔦屋書店のトークイベントは予約しました。これは楽しみ。

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