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個展のタイトル

CASのサイトに、個展の告知がアップされました。今回のタイトルは『Utamaro, Our Contemporary』です。前回から、タイトルは英語にしようと決めました。しかし、英語で気の利いたタイトルを考えられるわけもなく「それならば引用だ」というわけで、前回はアウグスト・ザンダーの写真集『PEOPLE OF THE 20TH CENTURY』から取って『PEOPLE OF THE 18TH CENTURY』にしました。見事なパクリ、いえいえ、引用です。

で、今回はヤン・コットの著作『Shakespeare, Our Contemporary』からの引用です。恥ずかしながらこの本は積読状態で序文と訳者あとがきしか読んでないのですが、要はシェイクスピアの作品は、それぞれが現代に通じる問題を扱っており、だから我々は今でもシェイクスピア劇を好む、ということを研究した本です。日本語タイトルは『シェイクスピアはわれらの同時代人』です。有名ですよね。

もちろんこれを、無意味に引用したわけではありません。ざっくり説明すると、西洋世界は近代になって創造の主体が絶対的な神から人間の理性に移って、世界が大きく変化しました。反転したというか。で、日本はその世界の変化を経験することなく、近代的価値観を輸入したわけです。つまり日本の近代は前近代と、ほとんど地続きなのではないか。浮世絵は絶対神無き前近代に生まれた表現ですが、それを否定する必要が本当にあるの?という問いかけです。いくら近代化しても西洋になれないわけですから、必要以上に前近代を否定しても意味がない。むしろ、適度に混ざっている方が多様性があって良いのでは。

例えて言えば、ピノキオはどうあがいても人間にはなれないのだから、命を持った人形というレアな価値を武器にしろ、ということです。僕にとって歌麿はその象徴でしょうか。見方によってはオリエンタリズムそのものですが、そこで思考が停止するのは良くないわけで、そんなものはただの空気である、と考えるのが重要だと思っています。世界に住んでいるのが、みんな木の人形だったら、たった一人の生身の少年は、いつか木の人形になる日を夢見ているでしょう。

ざっくりだとなかなか伝わりませんよね、この話。とにかく、9月14日(土)〜28日(土)、会期中無休の『Utamaro, Our Contemporary』を、どうかよろしくお願いします。

#アートの思考過程

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