試作5

穏やかに、そして挑戦し続ける

たにたや店主として4周年を迎えた今年。思ったのは4年目というのは、3年間やってきたことを試される1年なのではないか、ということです。器でいつもお世話になっているTIME&STYLEさんから「陶芸家の水野さんの新作展の時に合わせて、たにたやとして何かしませんか?」と声をかけられたことから1年がスタートしました。TIME&STYLEさんでは、毎年、水野克俊さんのうつわ展を開催しています。水野さんの器は、料亭や様々な飲食店でも使われていて、毎年、春に開催される新作と合わせたこの展示を楽しみにしている方が多いのです。たにたやでも一部水野さんの器は使ったいましたが、水野さんの器だけに向き合うことをしたことはありませんでした。

器を意識して料理のレシピを考える

ほぼ毎日、3月末の展示イベントに合わせて料理を考え、試作して私自身のインスタ(hiroetanita)アカウントに#水野克俊 をつけてアップしていきました。そうすると、その投稿をみた水野さん自身から電話がかかってきます。器と料理のバランスなどのアドバイス、または良くない部分への指摘をいただくという、往復書簡のような日々が続きました。

案内状が出来上がってきました。たにたやの常連さんや他含め250人ほどの方々に一つ一つ手書きで一言添えつつ住所も手書きと言う、プリミティブな手法(笑)で郵送しましたが、さすがにペンだこと腱鞘炎寸前のような感じになったのを覚えています。そして、だんだん緊張感に包まれていき、

TIME&STYLE ミッドタウンで開催されたレセプションの日を迎えました。器3種に料理を盛り付け、プレゼンテーション。そして、水野さんとみなさんのの前でお話しをさせていただきました。

その後に約10日間、たにたやではノンストップで「水野克俊ウィーク」を開催。水野さんの器だけでコース料理を提供するという企画。6品で、¥5,000の設定は勇気が要りました。果たして、みんな来てくれるだろうか ? と不安だった気がします。ただ、水野さんの器で料理を提供するのだから、そこは自信を持って1月から3月まで続けてきた水野克俊研究の成果を見せなければと思っていました。

ありがたいことに、水野さんのうつわのファンの方、たにたやのお客さんでほぼ全日程に予約が入りました。やりきった後、料理は本当にクリエイティブな仕事であることを身を以て感じるのです。水野さんからはたくさんのことを教えていただきました。「やりやすい方にばかり進んでいってはいけない。自分がやってこなかったことに挑戦することが大事」 水野さんに何度か言われたことです。そして「使いやすい器ばかりに偏ると、成長がない」とも。水野ウィークは、私にとって、たにたやにとって新しく"美味しい"を知る経験となりました。機会をくれたTIME&STYLEさんに心から感謝いたします。

新しいコミュニケーション、「一緒に」と「グローバル」

GWが終わって、ふと「バイトを募集」を考えました。これまでも、臨時的にいろんな方に手伝ってもらったことはありましたが、ここにきて、ある程度定期的に手伝ってもらうアルバイトを"雇う"ということをしてみようと。

たにたやのウェブサイト、FBページ、インスタにあげてみました。意外にもいろんな人がみてくれていて。そして、不定期1人を含む3人の仲間ができました。

みなさん、本業がありながらうちの店に興味を持って、楽しんで手伝ってくれる人たちが集まってくれました。私も、人と働くことが、こんなにも楽しく癒される・・ことなのかと実感。それから、高くは支払えないバイト料の中でみんなとても一生懸命やってくれています。心から感謝し、来年も可能な限り彼女たちとやっていきたいと思っています。写真左から、一場ちひろさん、佐藤(的場)麻里さん、川島壽枝さん。週に1度か2度、または月に1度か2度だったりするので、いつも会える訳ではないですが、タイミングがよければか彼女たちに会えますよ ! 楽しみにご来店くださね。

今年は、前にもまして外国人のお客さんが増えました。そして、嬉しかったのは、みなさん帰国してから感想をメールでくれたり、SNSにあげてくれたり。たにたやは、積極的には飲食サイトやトリップアドバイザーなどに掲載はされていませんが、こうして来てくれた人たちが知り合いや友人に紹介してくれていく繋がりは、嬉しいものです。

LIGHT & DISHES として

今年、私がこれまでやって来た経験が活かされる機会がありました。食関係、料理関係で知り合ったネットワークがきっかけでLIGHT & DISHES の世界を実現、そして伝えられたことがありました。きっかけは料理研究家で料理ユニットを主宰している、ごはん同盟のしらいのりこさん。彼らが不定期にランチ営業をしている、喫茶にちよう には足繁く通っていて、そんな縁もあり親しくさせていただいている関係。ある日、この喫茶にちようにランチに行った時、しらいさんから「知り合いのレストランが照明を変えたいと言っているんで谷田さんを紹介したいんです」と。その知り合いのレストランとは、私も以前から注目していた、モダンベトナミーズのアンディさん。オープンして1年近く経って、慌ただしくオープンしたせいもあり内装から照明までちゃんとできなかった部分があると。照明の力で、美味しいを伝えるということをミッションにたにたやを始めた私としては、模索しながらも、どうしたら伝えられるんだろうと日々考えていた中、このような機会は待っていた貴重なチャンスでした。しらいさんには、本当に感謝 ! 

photo : Masaya Yoshimura

食のプロフェッショナルの方々に、照明の力を理解してもえるのは願ったり叶ったりということでもありました。こちらのレストランは、今年もミシュランのビブグルマンも受賞していてさらに予約が取りにくくなっている模様。心底、やりがいのあるお仕事でもありました。今後も、このように飲食のプロの方々にも、飲食の仕事をしている自分だからこそ伝えられる、本当の照明の役割を知ってもらえるお手伝いができる機会があったら嬉しいと思います。

新しいことにチャレンジできる機会をもらえるのは本当にありがたいこと。照明の連載をさせてもらっているハースト婦人画報社 モダンリビングさんのご縁でお声かけいただいた案件。滋賀県・竜王町の谷口工務店さんの新しい施設の照明のお手伝いをさせてもらったことをきっかけに、たにたや出張料理の会"おでかけ tanitaya"をご依頼いただきました。これも、食と光で空間全てのクオリティに変化が起きるということを実感を持って伝えられる場でした。

挑戦できる機会が、大きく変われる時

いくつか、これまでにやったことがなかったことへの挑戦やきっかけを書いてきましたが、何が大切で、何を大事にしていかなければいけないか。というのをここで考えてみますと、自分自身が飛び込んでいく勇気と自信を持つこと。そして、常に穏やかであること。そんな状況が、新たな挑戦のきっかけを引き寄せるんじゃないかと思うのです。私は、いつも慌ててしまうし、冷静さを欠いているし、自分に自信なんて持ててない・・のですが、ほんの少しの気持ちの振動に気づき、好奇心の向かう先、を忘れないようにいることが大事なんだと思います。何にも偉そうなことは言えませんが、最後に一つ。去年のブログでも書いていましたが、「自分らしく」やっていくこと。これだけは心にとめて生きていきたいと思います。"大変"なことばっかり。。と言いますが、「大きく」「変わる」が"大変"なんです。常に大変なことを素直に受け入れられる自分でいたいと思います。2019年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

たにたや店主:谷田 宏江 

《番外》今年、行ったお店で印象に残ってるところ。

手打ち蕎麦風來喬、ドゥエクオーリ、手打ち蕎麦 夢呆、bar KAY、芙蓉庵、
蘭麻、 レピック、T.Y.HARBOR BREWERY、リストランテ エッフェ、喫茶にちよう、The Blind Donkey、vento(京都)、kaikado Cafe(京都)、楽菜(京都)、Old School(京都)、大傳月軒(京都)、efish(京都)、バル agiyao(京都)、
Grassa(前橋)、わくい亭、Cicada、Charlot(Frankfurt)、Apfelwein Wagner (Frankfurt)、Restaurant Adolon(Frankfurt)、La Scuderia(Frankfurt)、La Oliva Pintxos y Vinos(Amsterdam)、Restaurant Wilde Zwijnen(Amsterdam)
晴弘、季助、紫玉蘭、萬珍楼、オー・ペシェ・グルマン、酒肆 一村、青山 ぼこい、ラ・ボンヌ・ヌーベル、カタネベーカリー/カタネカフェ、基久屋、桃の木、酒と鮓 梅軒、アンディ、岡喜本店(滋賀県)、WORLD BREAKFAST ALLDAY、焼き鳥 平良、S エッセ、しまだ、サルーズキッチンマーケット
江戸蕎麦 ほそ川、トラットリア ヴィーノ ヴィーノ(前橋)、たらふくちゃん
鳥鳥鳥の店 鳥清 、能登美、Pelmeni Kitchen、板前寿司、手打ち蕎麦 まるやま、ピヴォワーヌ、大三元、東京担々麺本舗 ゴマ屋、まる八ラーメン(札幌)
French Panda(札幌)、ティルブション(札幌)、しあわせ(札幌)、kinole(札幌)
Na Camo Guro、かに福

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