やるべきことはやった!
今年一年、ありがとうございました。
やることはやったなあ、という気持ちです。
満足はしていません。
年の瀬に振り返ります。
この家に住むために
家人には「ハズカシイからあまり公表するでない」と言われていますが、私だって愚痴は言いたい。
愚痴を言いたくなるほどには必死に頑張っているのだと、大声で叫びたい。
そのような数年を過ごしてきました。
この家に住み続けるために、かなりの金額のローンを支払っています。
独り暮らしだったら、引っ越ししてコンパクトな生活に切り替えるのもステキなんですが、高齢の実母がいるのでそうもいかない。
おまけに没落しているとはいえ出自だけは旧家なので、あれこれとモノが多い。いつの時代の作りかも知らない螺鈿の物入れなんかもう一回引っ越ししたら絶対に崩壊する。前回の引っ越しで崩壊しかけたので仕方なく大枚はたいて修理した仏壇なんか優に一畳分のスペースが必要である。
あと、大量の本。
……どうすんだ?
かくして、毎月の支払に追われてテープ起こしや夜勤など即金になる副業をするしかなく、派遣先で「本当は原稿を書いた方が絶対に効率がいい」とじりじりしながら荷さばきをする毎日でした。
原稿は、書くだけでも時間がかかります。家人の事情で集中した時間を保ちにくいのも悲しいことに事実です。書き終わっても本になるまでに時間がかかります。本になっても支払までに時間がかかります。
その数ヶ月が保たない。
せつないことでした。
いただいたものに感謝
ちゃんとしたところで働くつもりはなかったんです。
自分の中ではやはり「読者さんがいてくれる限りは小説家」だと思っていたので。
夜勤の日程をやりくりしながらせっせと原稿も書いておりました。
それが今年、賞をいただいたのです。
しかも、二つも!
もはやライフワークと呼ばれてしまっている〈博物館惑星〉シリーズの2冊目『不見の月』の表題作が星雲賞短篇部門を。そして3冊目『歓喜の歌』がなんとSF大賞を。
とてもとてもとてもとても、ありがたいことでした。
必要に迫られて決死の覚悟ではじめた連載でした(詳しくは『不見の月』単行本版のあとがきをどうぞ)。
前作を超えることが必須の厳しい連載でした。
そこをちゃんと評価していただけた。
ああ、私、まだやってていいんだなあと思えました。
投票していただいた方々に土下座してまわりたいくらいです。
取り立てていただいたことに感謝
嬉しかったことは他にもありました。
昨年呼んでいただいた「ゲンロンSF創作講座」に、ことしも講評者としてお招きいただいたのです。
私が何かを選評するときに心がけているのは「褒めるべきところはちゃんと評価して、モチベーションを下げない」「問題点はしっかり指摘して少しでも伸びてもらう」、です。
前回は指摘が厳しすぎたんじゃないかと反省もしていたので、続けてお呼びがかかってほっとしたところがありました。
おまけに、その後会で、講座的なものを配信しないかとお誘いを受けました。
実は、収入増をねらって、配信やウェブサロンも考えてはいたのですが、どうも私にはしっくりこなくて断念していたのでした。
主催者の東浩紀さんにお話を聞くと、この「シラス」という場だったら私にも需要がある気がしてきた。
冒頭は無料部分を設けることができるものの、完全な有料配信です。これがいい。
私はネームバリューもないから、何千人もの視聴者を集めることができないので、YouTubeで収益は望めない。しかも誰でも見られると当然荒らしも出てくるわけで、精神的ダメージが非常に怖い。
有料配信のいいところは、東さん曰くの「フィー・ウォール」。ちゃんと払って見に来てくれる場では、通りすがりの荒らしもいないし、視聴者は熱心である……。
できるかな、私でいいかな、と何千回も考えた末に、この秋に「菅浩江のネコ乱入!」というチャンネルを始めました。
人に教えるということは、自分の役にも立ちます。
あれこれ遠回りしてやっと掴んだコツのようなものを遠回りなしに会得してもらえると、ちょっとは役に立ったかな、と自己肯定できます。
なんとなくやっていた考え方なりやり方なりを、人に伝えるためにまとめていけます。
これまでに、コミックや書籍やアニメの読み解きから構造を知る、自己解説をしてみる、写真を描写してみる、など、たくさんの冒険ができました。
評判も上々なので、もっともっといろいろな人に見ていただければと思っています。
講評をほめていただけたのも、配信を始めたのも、ゲンロンやシラスのみなさんのお誘いゆえです。本当にありがとうございました。
我ながら頑張ったこと
みなさんのお蔭で、何年かぶりに夜勤に行かない年末を迎えています。
まだすっかり辞めてしまうほどにはなれませんが、仕分け荷物と格闘しなくていい年越しは、ほんとうに久しぶりです。去年も一昨年も夜勤現場でお正月を迎えたんだよなあ。
今年は後半に楽をしていたので、十キロほど落ちていた体重も、半分くらい戻りました(これは嬉しくない)。
その夜勤、実は夏頃に大変革がありまして。
日や時間帯でいろいろな部署にトバされるんですが、一番やりたくないことに抜擢されてしまって、どうにもこうにも逃げようがなかった。
三日くらいは目が慣れなくて吐き気がした……けど、どうせやらなきゃならないなら早く慣れようと思って頑張ったら、なんとかなりました。
普通は頼まれない部署なので、そのせいで風当たりが強くなり、居心地が悪くなっちゃったけど、キニシナイ。
原稿と違って、できるまでやらなきゃ、ではなく、時間が来たら終わるこの気楽さ!
あれこれ突っ掛かってくる人のことを考えると、もう行きたくはないけど、自分的には頑張って仕事に慣れたというのは自慢できると思っています。
そしてこのnote。
シラスのお声がかかる前に、なんとかしなきゃ、という気持ち & 経験値を伝えておきたいという野望、でエイヤと始めました。
誰も読んでくれなかったらどうしよう……。
もちろん心配でしたが、何人かにはフォローしていただき、著作権や転売屋の話は広く受け入れていただき、なんとか今日まで続けてこられました。
創作講座系は、シラス共々、きっとお役に立つことと思います。
更新ごとに支援を下さる方、月ごとにまとまった金額で支援していただく方、そして記事をご購入くださる方々、ほんとうにありがとうございます。
集中して創作原稿に取り組めない苦しい事情が、この場があることで少し薄れた気がしています。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
いい記事書きますので!
受賞を機に、博物館惑星のグッズを作ったのも頑張ったことのひとつでした。
ステキなイラストを描いてくださる十日町たけひろさんに、ささやかでもお礼がしたかったのです。
がつんとお支払いできるほどの売れ行きではありませんでしたが、大好きな絵を自分で商品にできたのは、私自身へのご褒美でもありました。
これに加えて、専門学校(ライブ)と大学の授業(オンデマンド)。
zoomや動画だと、その場でぱっと言い換えるとか書き換えるとかができなくて、準備がたいへんです。
……なんか、ずーーーーっと働いていたなあ。
いつものことですが。
今年は新規に始めたことが多かったので、よけいにそう感じます。
積み残したこと
SF大会 F-CON
コロナのせいで第60回大会に抜かれてしまった第59会日本SF大会「F-CON」。
3年ばかりこの事務方として作業をしています。
このところは若手に割り振ってかなり楽になっていますが、本番はこれから。
高級温泉宿での楽しい大会になりますので、お申し込みがまだの方はぜひどうぞ。
『みなとの星宙』Kindle化
SF大会の企画に間に合わせるつもりが、大会自体が延期になったのでずるずると遅れています。
放課後のプレアデスファンの有志が力を貸してくれているので、なるべく早いうちにKindleで出版したいと思っています。
秘密の企画
その1。
ヒミツだから言えないけど、小説周辺、という感じのことを年明け早々にやります。
その2。
ヒミツだから言えないけど、小説とはぜ~んぜん関係ないことをやっています。絶賛現在進行形。
もちろん原稿
ずっと言い続けていて恥ずかしいですが、短篇「夢」の長篇化を狙っています。いわゆる発達障害(未来の話なのでそのものではない)の人たちが、飛来している謎の信号と向き合う話です。
次は平身低頭。中断している連載があります。
東京創元社Webで『妄想少女』を載せていただいているのが、ずいぶん長い間更新できていません。
あと1話と半分くらい(すぐ続けるつもりだったので、なんと1話分の半分で掲載してしまった)残っていますので、これは早々に。
たぶん実現するだろうヒミツの企画も、ちょっと書き足しがあります。
これから売り込むヒミツの企画も、ぜひ頑張りたいところ。
来年もよろしくお願いします
……というような年末。
来年は、先日の米子映画事変のように、出張して喋っておいしいもの食べて気が晴れる、みたいな仕事が多いといいなあ。
やることは精一杯やっているつもりなので、どうか引き続きのご支援ご支持ご購読のほど、よろしくお願いいたします!
みなさまのお心次第で、この活動を続けられます。積極的なサポートをよろしくお願いします。