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#5 帰ってきたあいつ

小学6年生になって、Nが帰ってきた。
Nのことはみんな覚えていた。

私がNのことを好きすぎて、当時同じクラスだったお友達は全員
N=ひろこが好きな人。という認識だった。

Nは引っ越し先の訛りが染みついて帰ってきた。
それまで手紙で散々愛をささやき合った私達。

小学生ながらにお互い両想いであることは知っていた。
だけど、私は恥ずかしくて今までひろこちゃんと呼ばれていたのを
苗字で呼ぶようにNに言った。

私もNの事を苗字で呼ぶようになった。

Nが帰ってきてからは、ちゃんと予習していたNARUTOの話でも盛り上がって
私がすっかり漫画アニメにはまってしまい、買ったNARUTOのゲームでも一緒に遊んだ。


Nは社交的になって帰ってきた。
私は自分で私の事を苗字で呼ぶように言ったのに、
Nがほかの女の子を下の名前で呼ぶのが嫌だった。

他の女の子と仲良く話すのが嫌だった。

「嫉妬。」

帰りは一緒に帰れなくなった。
マンションのロビーで隠れて待っているのが私達だった。
そこから一緒に遊んだ。

家にいるときは、すごく仲良しだった私達。
家の固定電話で通話しながら、メールでやりとりするという、意味不明な事もしていた。

彼がかけてくる電話に出て「Nです」というNの声をきくのが大好きだった。

ハウルの動く城の映画を映画館に一緒に見に行った。
自転車で行ったけど、お互いの距離は離れていた。
お土産コーナーで、カルシファのクリップの置物をNの誕生日プレゼントに買った。

二人でいるときは仲が良くても、
Nは私と一緒にいるのを嫌がるようになった。

私はそれに怒っていた。

だんだん私たちは疎遠になってきた。
小学校最後に図工でオルゴールを作った。
正確にはオルゴールの外見を作る授業だった。

箱には各々好きな絵をかいて、彫刻で掘った。
私はそこにくじらの絵を描いた。


小学校卒業式で、Nは他の女の子に告白をしていた。


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