伊賀FCくノ一が“憧れの対象”に!
ちょっと前の話になります。
11月23日の皇后杯2回戦、このラウンドから『プレナスなでしこリーグ』の1部を戦うチームが参戦して来ます。筆者は今季なでしこ1部で4位に躍進した伊賀フットボールクラブくノ一VS新潟医療福祉大学を観戦。今回は取材者としてではなく、「イチ女子サッカーファン」として観戦していました。
国内外4冠獲得に向けて順調なベレーザ
皇后杯の初期ラウンドは1つの会場で2試合が行われるのが通例。よって、この試合の前にはリーグとリーグカップの2冠を獲得した絶対女王=日テレ・ベレーザと、今季初めてなでしこリーグ2部に昇格しながら8位で自動残留を勝ち取った大和シルフィードFCの対戦カードも組まれていました。
ベレーザはこの直後に今年から試験的に開催された『女子クラブ選手権2019 FIFA/AFCパイロット版トーナメント』参戦のために開催地である韓国へ出発。韓国では開催国や中国、豪州の国内王者と中1日で3試合を戦う超過密日程にも関わらず、この大和戦でも代表選手を先発に8人起用。前半は大和の組織的な守備に苦戦するも、後半に入って均衡を破ってからは一気呵成に連続得点。4-0でしっかりと勝利。
ベレーザは直後のアジア選手権でも2勝1分無敗で見事にアジア制覇。帰国後にも皇后杯で3回戦と準々決勝を戦い、約2週間で6試合の超過密日程ながらも、U19日本代表として来年のU20W杯出場権獲得に貢献したMF菅野奏音(おと)や左SB松田紫野といった若手を積極的に起用。皇后杯も着実にベスト4に進出しています。
そして、くノ一の登場です!ベストメンバーでした!
今季『プレナスなでしこリーグ1部』で4位に躍進した、くノ一。さすがに相手となる新潟医大とはチカラの差が存在していました。特に前半は圧倒的にボールを支配してのハーフコートゲームとなったため、くノ一側のスタンドからはほとんどゲーム展開が観れないという現象に。そのため、筆者は前半は新潟医大側のスタンドで観戦。
新潟医大側から観た、伊賀FCくノ一
御存知ない方にも説明しておくと、新潟医大は、『プレナスチャレンジリーグ』という、なでしこ1部から数えて実質国内3部リーグに当たる年齢制限のないリーグ戦を戦っているチームでもあります。
監督はかつてJリーグのガンバ大阪でもプレーしていた草木克洋さん。ガンバで技巧派MFとして鳴らした時代、筆者もちゃっかりサインももらったりしていました。(写真右側は故・久高友雄元選手)
57歳となった現在は、白髪が綺麗な“サッカーおじさん”。先日、『全国地域サッカーチャンピオンズリーグ』に初出場し、決勝ラウンドまで進出しながらJFL(日本フットボールリーグ)昇格を僅かの差で逃したチーム=おこしやす京都の前身であるアミティエSC京都監督なども歴任。関西弁丸出しの指導も馴染み深いですね!
そんな新潟医大側のスタンドにはメンバー入りできなかった選手や親御さんが来場して観戦していました。そんなしっかりとしたサッカーの知識がある“事情通”さんたちがこの試合を観ながら口々にお話していたのは、
「やっぱり、なでしこリーグ1部で4位のチームは格が違うな!」
「全てのプレーが速い!速さも、判断の早さもある!」
「狭いスペースでも余裕でプレーしてる!」
といった言葉の数々でした。
特にこの試合で1人で4得点を挙げた主将⑩MF杉田亜未選手については、得点だけでなく、狭いスペースでのテクニックや判断力、俊敏性などに改めて惚れ込み、「こういうチームと試合できるのは幸せやな!」と憧れの眼差しを向けられる人たちも多くいました。
単になでしこ1部で4位に躍進してから見る目が変わったのかもしれません。しかし、今までは1部残留争いの常連であり、2部への降格も複数経験していることもあって、なかなかこうした憧れの的にはなれなかった、くノ一。
2021年シーズンから女子サッカーリーグはプロ化することを発表しています。経営・運営面での問題の方が大きいでしょうが、まずは前提としてチームや選手達が“憧れられる存在”でなければ、新たなファンやスポンサーの獲得には至りません。
そういう意味では2019年シーズン、くノ一は大きな“タイトル”を獲得したのだと思います!(この項、了)
ちなみに、今年の伊賀FCくノ一の斬新な戦術=ストーミングについては、以前に筆者が寄稿しました『サカノワ』さんの下記記事をご参考ください☆
参考記事『なでしこに旋風!伊賀くノ一が巻き起こす「嵐のサッカー」』