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さよなら青春

座談会企画「HIROBA茶会」
水野良樹×高橋久美子×関取花

古く日本では戦国武将から文化人まで、それぞれの親睦を深めるために茶会を催したとか。英国では社交の基本に「tea party」があるとか、ないとか。
小難しいことはさておき、お酒が不得意なHIROBAの水野良樹が、どうやったら様々な分野の方々と交流がもてるのだろう。
「酒を酌み交わし、心を開いて本音を語ろうじゃないか」的な文化に、全然とびこめない水野が考えたのが「そうだ、茶をしばこう」。

お招きするのは水野がお仕事やプライベートでつながりをもった方々。毎回、茶会の主催である水野がエンタメにまつわるテーマを持ち寄り、それをもとにざっくばらんにおしゃべり。
自由でリラックスした会話から、なにかの刺激やアイデアが生まれないか。
仕事とプライベートのあいだの、座談会企画。

記念すべき第1回はHIROBAに縁の深い、高橋久美子さん、関取花さんのお二人です。

Part 4 さよなら青春

水野 たぶん、あったね。闇だったからなぁ、中学時代は。

高橋 エッセーにも書いていたね。

水野 暗かったね。

関取 意外です。

水野 野球部をやめてからは朝6時くらいに誰よりも早く学校に行く。登校中に人に会いたくない。会ったときにどんな顔をしたらいいかわからないから。

でも、そういう経験が作品に転換されるというか。マイナスがプラスに変わっていくような。

高橋 紛らわすことができなかったものね。私たちの中学時代はスマホもなかったし。

水野 そうだね。

高橋 なんとなく時間を費やすのは、本を読むか、CDを聴くかしかない。鬱屈とした感情から逃れようがなくて…それで私は詩を書きはじめたのよ。

関取 私も部屋に閉じこもって本を読むか、CDを聴くかでした。今は部屋に閉じこもっていても外とつながれちゃう。

高橋 そうなのよ〜!自由があるのよ。中学校で会った子どもたちは自由を手にしている目をしてた気がして。

水野 ああ、すごい!

高橋 スマホの中に自由があって、つながる場所もあって。もう満たされているんやないかなと。

水野 僕たちの頃は学校という空間がすべて。そこで認められないと息苦しいだけ。

関取 私も認められたくて外で必死になるタイプでした。

水野 今はその空間で認められなくても、別の空間があるからね。

高橋 私の中学時代にスマホがあったら、もっと救われたのかもしれないとは思ったね。

水野 そうだね、救われた子はいるよね。

高橋 表現というものがもっと身近になるだろうし、認めてもらえる機会もある。

関取 そうですよね。

高橋 今の子たちは、スマホの世界だけが全てではないことも理解している。

水野 バランス取れすぎてて、怖いときもあるよね。

関取 え!

高橋 そう、大人よね。

関取 大人はわかってくれないという心境は、反抗期の象徴としていつの時代にもあると思っていたけど…もはやそういう感じでもないのかな。早いうちからいろんな世界を知ることができますもんね。

水野 そうだね。

関取 そうすると…青春の在り方が変わってくるかも。

高橋 うーん、そうね。

水野 青春が好きなんですよね、関取さんは。

高橋 そうなのかぁ。

関取 どちらかというと学生時代を謳歌してきたタイプです。

水野 ほう!

高橋 うらやましすぎる。

関取 学生時代の過ごし方は人それぞれですけど、そのときに感じたことが原動力になることが多い気がして。でも、私にはそういう経験がない。自分のインタビューを読み返すと、その時々の夢を語っていても「先のことはわからないです」と言っていることが多くて。

水野 正直ですね。

高橋 うん、ホント正直よ。

水野 いきものがかりも結成から20年やってきた。

高橋 もうそんなになるのね。

水野 (吉岡)聖恵と山下(穂尊)と話して、「ずっと一緒に頑張ってきたという青春の感じを見せることはこの先やめよう」と。いい意味でプロ意識をより強く持つというか。

関取 はい。

水野 そうは言ったものの結局は「この10年くらいはめっちゃ青春してたね」と(笑)。

関取 ああ〜!

高橋 いいね。

水野 ツアーでいろんな場所に行ったり、3人それぞれのドラマもあって。でも、その青春も終わって次のフェーズを迎えた。これから40代になってどんな活動をしていくのか、人生プランを考えないといけない。

高橋 そうよね。

水野 青春ではない違う軸があるはずだと。それが「さよなら青春」という曲につながって。

関取 その背景を知って余計に泣けちゃいます。

水野 青春に対する憧れはずっとあるよね。

高橋 過去を振り返ったときに輝いて見えることはあるね。青春真っ只中の人が「うちら、今青春よね」とは言わないものね。

関取 言わないです!

水野 ない、確かに。

高橋 水野くんのエッセーにもあるよね。初めて武道館でライブしたときに周りのスタッフはみんな泣いていたけど、メンバー3人だけが泣いていなかったって。わかるわ〜!

水野 (笑)

高橋 私たち3人もそうだった。後から振り返ると青春だったとは思うよね。

水野 そうだよね。

高橋 新しいフェーズに入っていくんやね。

水野 そんな気がする。

関取 まさに、さよなら青春ですね。

高橋 50代になったときも振り返って「青春だったね〜」って言っとるよ、たぶん(笑)。

水野 そう思う。小田(和正)さんの言葉で印象的だったのが…。

関取 はい。

水野 小田さんが50代の頃の映像をチェックする機会があって。

高橋 うん。

水野 「すごく、子供っぽかった」と。

一同 (笑)

水野 「取り繕ってさ、カッコいいこと言おうとしてるんだよ」って笑いながら。

高橋 年齢を重ねても、常に輝いているからよね。

水野 そうだと思う。勇気が湧くよね。

(つづきます)

次回:Part 5 メンター
前回:Part 3 反抗期

高橋久美子(たかはし・くみこ)
1982年生まれ。作家・作詞家。
2004年、チャットモンチーにドラム、作詞家として加入。2011年、チャットモンチーを脱退。以降、アーティストへの歌詞提供や、エッセイ集の出版など、精力的に活動。近著に詩画集「今夜 凶暴だから わたし」、絵本「あしたが きらいな うさぎ」など。
高橋久美子オフィシャルサイト
高橋久美子Twitter
関取花(せきとり・はな)
愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けているミュージシャン。NHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等多くの夏フェス出演、初のホールワンマンライブの成功を経て、2019年5月にユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。
ちなみに歌っている時以外は、寝るか食べるか飲んでるか、らしい。
関取花オフィシャルサイト

<今回の茶会の舞台はこちら>
FARO CAFFE

Illustration/Yayoi Sunohara
Text/Go Tatsuwa

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