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反抗期

座談会企画「HIROBA茶会」
水野良樹×高橋久美子×関取花

古く日本では戦国武将から文化人まで、それぞれの親睦を深めるために茶会を催したとか。英国では社交の基本に「tea party」があるとか、ないとか。
小難しいことはさておき、お酒が不得意なHIROBAの水野良樹が、どうやったら様々な分野の方々と交流がもてるのだろう。
「酒を酌み交わし、心を開いて本音を語ろうじゃないか」的な文化に、全然とびこめない水野が考えたのが「そうだ、茶をしばこう」。

お招きするのは水野がお仕事やプライベートでつながりをもった方々。毎回、茶会の主催である水野がエンタメにまつわるテーマを持ち寄り、それをもとにざっくばらんにおしゃべり。
自由でリラックスした会話から、なにかの刺激やアイデアが生まれないか。
仕事とプライベートのあいだの、座談会企画。

記念すべき第1回はHIROBAに縁の深い、高橋久美子さん、関取花さんのお二人です。

Part 3 反抗期

高橋 話は変わるけど、母校の中学校で少年式というのがあってね。

水野 あ、Twitterで見たよ!

関取 愛媛の儀式ですか?

高橋 そうなんよ。とりわけ愛媛はずっと残っていて、私たちのときもやったのね。

水野 へー。

高橋 そのタイミングで講話をしてほしいと言われて、「絶対無理です!」って一度はお断りしたんやけど。

関取 えー!

水野 でも、どうしてもと。

高橋 そう。中学時代が闇だった私が何を話すんだと悩んで。「頑張れば絶対に夢は叶うという話をしてください」と頼まれて…。

関取 うわ〜!

水野 それね…。僕も中学時代は闇だから卒業してから一度も行ってない。

高橋 やっぱり?私も卒業式以来よ。前日に挨拶に行ったときも校長先生から「頑張れば夢は叶うという話をね、高橋さん」と言われて、「先生、夢は叶わないと思います!」とたまらず…。

水野 えらい!

高橋 先生たちは「え!叶えたじゃないか」という反応で。でも、大概は叶わない。いや、私も叶わなかったことがほとんどで、ほぼ挫折でしたよと。

関取 そうですよね。

高橋 何を話そうか…ほぼ眠れないままに中学生たちの前に出て、「夢は叶わないことのほうが多い。だけど、好きなものを追いかけるのはめちゃくちゃいい時間だよ」と。

水野 いい!

高橋 「なるべく好きなことに近い仕事ができると幸せだよ」「音楽が好きだったらアーティストだけじゃなく、いろんな仕事があるよ」と…現実的な話をしました!

関取 そのほうが響きますよね。

水野 うん。

高橋 難しいね。どう話したら伝わるかなって。

水野 「夢を叶えたよね」って言われる機会は多いんじゃないですか?

関取 歌手になることが夢だとは言ってなくて。流れのままに今あるだけなので。

水野 子どもの頃は音楽やりたいとは思ってなかったですか?

関取 はい、全然思ってなかったです。

水野 何に興味があったんですか?

関取 中学時代はバスケ部で、音楽だとTOKIOとKinKi KidsとRAG FAIRと浜崎あゆみさんの曲をMDに入れて。

高橋 ああ、MDいいねぇ。

関取 高校では軽音楽部に入って。バスケはやり切ったし、バイトもしたかった。音楽に対する特別な理由はなかったですね。大学では就活もしましたよ。

水野 おお!就活してないからなぁ。

高橋 私も。

関取 10代の頃に賞金欲しさにコンテストに応募した動画を偶然YouTubeで見てくださったCM制作会社の方から連絡をいただいて。

水野 巡り合わせだね。

関取 何がやりたいでもなく漠然としていたタイミングで。ちょっとやってみようかなと。

水野 流れで。

関取 流れですね。

高橋 でも、みんな流れよね。

関取 そうですよね。

高橋 水野くんのエッセー(「誰が、夢を見るのか」)がすごく面白くて。

水野 (照れ笑い)ああ、ありがとう。

高橋 スポーツが題材だけど、人生の哲学が詰まった本だなと思って。まさに流れを読んでいる気がする。

水野 流れだね、確かに。

高橋 野球少年だった水野くんが今は音楽の世界にいる。

関取 そうか!そうですよね。

高橋 野球をやめて、そこから音楽の道に進む。人生は決断だね。

水野 ホントそう!

高橋 選択と決断の連続。

水野 その時々で一生懸命やってきた。でも、どうして今の道に進んだのか聞かれると…。

関取 そうですよね。

水野 結局は巡り合わせになる。

高橋 うんうん。

関取 面白いですよね。

高橋 巡り合わせと、そこで「よし!」と決断することよね。「また機会があれば」では違う結果になるだろうし。

関取 いやぁ、本当にそうです。

水野 関取さんはそこで決断した。

関取 お話をいただいた曲が大学のCMソングで、高校3年生の子が大学進学のために上京するという。

水野 ぴったり。

関取 ちょうど同じ時期に「自分も家を出るのかな」とか想像して。まだ反抗期も続いていたので…親への想いもあらためて考えるきっかけになりました。

水野 反抗期が?

関取 ひどいもんですよ。

高橋 ええ!意外!

水野 何か反発があった?

関取 学校では「花ちゃん、花ちゃん」と、かまってほしくてワイワイやっていて。

高橋 うんうん。

関取 でも、家に帰るとホッとするのもあって無になっちゃう。そういう様子は外では見せないし、見せてしまったとしても友達は気づかない。

でも、親はすごい。靴の脱ぎ方、ドアを開ける音、洗濯物の出し方、そういった些細なことから「機嫌悪いな」とか「落ち込んでるな」とかが、わかるんですよね。

高橋 うーん。

水野 いい話。

関取 いつも通りのつもりでも「おかえり、何かあったの?」ってお母さんに言われて。外では完璧に繕って、そのまま2階に上がって、着替えて、笑顔でリビングに戻ろうとしていたのに…。バレたことが悔しいというか。

高橋 中学生日記みたい!

関取 そうです!まさに。

高橋 珍しいね。反発ってもっと違うものじゃない。

関取 何でもわかっているような顔をして!外での私を知らないくせに!という反発です。

高橋 ああ!なるほどね。

水野 面白い。

高橋 「もしも僕に」なんかを聴くとね…そうか、逆に反抗期があったからなのか。なんか納得できるかも。水野くん、反抗期は?

(つづきます)

次回:Part 4 さよなら青春
前回:Part 2 内にあるもの

高橋久美子(たかはし・くみこ)
1982年生まれ。作家・作詞家。
2004年、チャットモンチーにドラム、作詞家として加入。2011年、チャットモンチーを脱退。以降、アーティストへの歌詞提供や、エッセイ集の出版など、精力的に活動。近著に詩画集「今夜 凶暴だから わたし」、絵本「あしたが きらいな うさぎ」など。
高橋久美子オフィシャルサイト
高橋久美子Twitter
関取花(せきとり・はな)
愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けているミュージシャン。NHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等多くの夏フェス出演、初のホールワンマンライブの成功を経て、2019年5月にユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。
ちなみに歌っている時以外は、寝るか食べるか飲んでるか、らしい。
関取花オフィシャルサイト

<今回の茶会の舞台はこちら>
FARO CAFFE

Illustration/Yayoi Sunohara
Text/Go Tatsuwa

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