プロの仕事
「TOKYO NIGHT PARK」HIROBA編集版
水野良樹×ハマ・オカモト
OKAMOTO'Sのハマ・オカモトさんを迎えて、
ついに実現した
J-WAVE「TOKYO NIGHT PARK」の対談。
2週にわたるオンエアに加えて
放送されなかった内容まで、
熱い言葉の数々を
全4回のHIROBA編集版としてお届けします。
Part 3 プロの仕事
水野 ここでメールを1通ご紹介します。
ハマ おお、ぜひ!
水野 今の話にもつながるなと思います。
ラジオネーム クリ拾いさん(24歳)
「考えてほしいことがあります。なんの仕事にもプロっていますけど、プロってなんだと思いますか?」
ハマ THE!の質問(笑)。水野さんも聞かれたことがあるんじゃないですか?
水野 うーん、こんなにストレートには…(笑)。
ハマ (笑)
水野 わからないな。どう思いますか?振っちゃった(笑)。
ハマ 僕が聞かれたときに答えたのは「プロと、そうじゃない人の違い」というか。プロは模範になる人、真似される側。
水野 おお!
ハマ オリジネーターよりも、その真似をした人のほうが有名になるイメージがあって。本当に最初にやった人は、実はまわりがそのすごさに気づいていないというか。
水野 なるほど!
ハマ 本当のプロは、常に真似される側にいる。常にお手本になる。そういう印象ですね。プロとは何かとはっきりは言えないですけど、真似されるのがプロ。
水野 すごく高いハードルですよね。
ハマ そうですよね。本物を見ているとそう感じますよね。
水野 ないですよね。真似されること。
ハマ 言葉を変えると「憧れられる」とか、そういうことですよね。音楽を始めた頃って、憧れて真似して…演奏も、人によっては服装や髪型まで。
水野 はい。
ハマ そうさせるのがプロの仕事なんじゃないかな。24歳、どストレートな質問で…。
水野 社会に出て迷う頃でしょうね。
ハマ ああ、そうですよね。定義がないですもんね。
水野 プロか…なんだろう。影響力を与える、憧れられる。ゼロイチのゼロのほう、ボケとツッコミだとボケのほうというか。
今はよく言われるけど、ツッコミ社会じゃないですか。何か起きたことにリアクションするのは得意で SNSは大喜利状態。いかに気の利いたことが言えるか。でも、何かを起こす側の人は少ない。
ハマ そうですね。
水野 自分のことを話すのは難しいですよ。
ハマ うーん。
水野 いきものがかりも最初は友達でした。部活動みたいな感じで。だんだん周囲に人が増えていくじゃないですか。助けてくれる人というか。
ハマ そうですね。
水野 フェーズが変わってきて「自分のためだけではない部分」を感じたときに、プロだなと思いましたね。
ハマ ああ、なるほど。
水野 大部分は自分のためです。歌をつくって褒められたらうれしいし。でも、自分のためだけじゃないと思う瞬間がたくさんあるし、そうじゃないとやっていられない瞬間もある。それがあるかないかで…けっこう違うのかなと。
ハマ 確かにそうかもしれないですね。
水野 活動休止する前はそんな話をよく吉岡(聖恵)ともしました。
ハマ へー!
水野 3人でいきものがかりを始めて、ありがたいことに多くの人が助けてくれたがゆえに「このグループ、自分たちだけのものじゃないね」という感じになって。いろんな人が愛をもって仕事をしてくれる。だから頑張らなきゃと。
ハマ そうですよね。
水野 バランスをとるのは難しいですね。そういうことを経て、多少はプロに近づいていくのかなと。
ハマ 責任もありますしね。周りの人たちの声を取り入れすぎて、壊れてしまうというか。
水野 はいはい。
ハマ 僕が19歳か20歳くらいのときに、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテが脱退して…好きなバンドのメンバーが脱退するって初めてのことで。
水野 けっこうな衝撃ですよね。
ハマ 「ジョン・フルシアンテは他の3人と年齢も離れているし…」なんて勝手に想像して。でも、彼の声明が「もう、人のために音楽をつくりたくなくなった」と。
水野 おお、なるほど。
ハマ 「自分のために音楽をつくりたい」という理由が、忘れられなくて。メンバー間の軋轢だとか、そんなことだろうと考えていたら…。あれほどのスターで、ギターヒーローであっても責任やプレッシャーを感じるのかという衝撃ですよね。
水野 うーん。
ハマ 自分がデビューして人前に立つようになっても、いまだに思い出します。同時に、彼の感覚が少しわかる瞬間もある。自分を苦しめる瞬間というか。常にバランスをとっていないと難しい。
水野 いきものがかりは歌ものでボーカルの比重が大きい。お客さんはボーカルをまっすぐに見ています。
ハマ はい。
水野 シンガーソングライターなら、自分でつくった曲を自分で歌って注目が集まるじゃないですか。
ハマ そうですね。
水野 いきものがかりの場合は自分が書いた言葉を違う人が歌って、その人に注目が集まる。僕と山下(穂尊)はお客さんではないし、ステージ上に立っていて見られてもいる。なんか中間にいるというか。
ハマ 確かに(笑)。客観視できる瞬間がありますよね。
水野 届ける側であり、聴く側でもある。
ハマ 水野さんの立場は、本当にそうでしょうね。
水野 変な感覚です。真ん中、つまり注目が集まっているところって怖いですね。センターステージに行けない(笑)。
ハマ 「視線が刺さる」とよく言いますけど、そういう感じはありますもんね。
水野 見ている景色は吉岡と同じではないと思います。
ハマ そうか、同じステージに立っていても。
水野 うーん。
ハマ つまり、「プロも『プロとはなんだろう』と考えていますよ」ということですね(笑)。
水野 (笑)まさに!60代、70代のレジェンドの方々に聞いたら、全然違う答えが返ってきそうだし。
ハマ そうですね。
水野 僕らが立っている地点から、何周もしていて。
ハマ そうでしょうね。
水野 ずっと考えているのかもしれない。考え続けることも、プロとして大事な在り方かもしれないですね。
ハマ そう思います。
(つづきます)
次回:Part 4 「何か一緒にやりたいですね」が叶う日
前回:Part 2 次のフェーズの距離感
ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)
1991年生まれ。ベーシスト。
4人組バンドOKAMOTO’Sの活動のほか、
数多くのアーティストのレコーディングや
ライブサポートでも活躍。
OKAMOTO‘S オフィシャルサイト
Text/Go Tatsuwa
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