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「TOKYO NIGHT PARK」 瀬尾まいこさん対談 HIROBA編集版 後編

作家の瀬尾まいこさんを迎えたJ-WAVE「TOKYO NIGHT PARK」の対談。
書くこと、つくること、それは誰のため?
文学や音楽を通して人とつながる、かけがえのない価値について考える。
前後編のHIROBA編集版としてお届けします。

【後編】生きているかぎり、曲は生まれ続ける

水野 瀬尾さんは、読者を意識されますか?

瀬尾 意識してないですね。もちろん、傷つけたくないとは思うので、嫌な言葉は書きたくないですし、今回ならパニック障害の人が「違う」という気持ちになるのは嫌だなと思いながら書きました。

水野 読者との距離感で、文脈や表現を変えることもあまりないと。

瀬尾 ないですけど、難しい言葉は使わないようにしますし、押し付けがましくならないように気をつけています。

水野 読者の反応を受けて、瀬尾さんの中に変化が起きることはないですか?

瀬尾 ないですね。悪い反応が返ってきても、申し訳ないなと思うくらいです。いい反応はすごくうれしいですよ。「本一冊で幸せになってもらえるなら、なんでもしてあげる!」というくらいの気持ちになります。

水野 だからといって、もっと喜んでもらおうとして作風を変えたりはしないと。

瀬尾 しないですね。変えられないですし、自分自身が楽しくないと書けないです。

水野 ああ、やっぱり楽しいんですね。

瀬尾 楽しいですね。作曲は楽しいですか?

水野 わからないですね。苦しいこともあるし。

瀬尾 楽しいところはどこですか?

水野 フレーズが思い浮かんだ瞬間はめっちゃ楽しいですね。

瀬尾 突然、頭の中に流れてくるんですか?

水野 突然といえば突然ですね。ずっとつくっている中で、一瞬ハマるときがあるんですよ。

瀬尾 へー!

水野 そのアイデアが浮かんだ瞬間って100点満点の想像が膨らむんです。アイデアの状態なので、国民的大ヒットになっているような妄想が(笑)。その瞬間だけは、天国にいる気分で。

瀬尾 (笑)

水野 でも、広がった妄想を現実に落とし込もうとつくり続けていくと、どんどん妄想が狭まっていく。その妄想に対応できる技術を持っていないから。可能性がしぼんでいくときはすごく苦しくて。このアイデアは俺じゃなくて、もっと才能がある人のところに降りてきていたら、もっと素晴らしい曲になっていたのにと思ったり。

瀬尾 作曲って才能ですか?努力でできるものですか?

水野 わからないですけど…才能って運じゃないですかね。育っていく中で何を聴いてきたかとか。それを勉強としてではなく、楽しみとして自分の深いところに入れられたか。家庭環境とか友達との関係とか、生きてきた環境に左右されるので、才能は与えられたものではなく、運で構成されていって、その運を伸ばす努力をどれくらいできるか。運を生かすのは技術なので、技術はないとダメで。その掛け合わせだと思います。小説はどうですか?才能ですか?

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