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HIROBA公式マガジン

水野良樹(いきものがかり)の実験的プロジェクトHIROBAの公式マガジンです。毎週金曜日にラジオ的長文コラム『そのことは金曜日に考えるから』が更新されます。その他の記事も随時更新…
ソングライター水野良樹が主宰するHIROBAの公式マガジンです。HIROBAは『つくる、考える、つ…
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#小説

読む『小説家Z』 水野良樹×珠川こおり 第4回:考え直す作業が入るのも、エンタメの一種なのかもしれない。

エンターテインメントには憧れます。 水野:これから、どんな作品を書きたいとかってありますか? 珠川:うーん、ちょっと『マーブル』は踏み込みすぎたなって。 水野:あー、そうですか! 珠川:ありがたいことにもうすぐ発売なんですけど、炎上するんじゃないかなとか不安になっちゃって。1作ぐらい、もうちょっと気楽に。いや…でも、書くんだったらやっぱり何かしら自分の思っていることを、見つめ直したりとかしたいなと思ったりもしますし。せっかくの作品なので、いろいろ考えちゃいますね。

読む『小説家Z』 水野良樹×加賀翔 第3回:「ちょっとでもおもしろくなりたい」って気持ちが、いつのまにか仕事になっていた。

「もうあんたは固定!お笑いでいってください!」 加賀:こんなこと水野さんに言うのは恥ずかしいんですけど。ポジティブないきものがかりさん、ずっと好きで。中学のときとか、ストレートに前向きなことを言うのって難しいと思うんですよね。避けがち。逃げちゃう。もちろん自分も斜に構えていた時期ありましたし。でも、王道のど真ん中で戦っているのが、すごくカッコよくて。そういう感覚があるので、自分もすかさないようにって。 水野:身につまされるなぁ。なんで加賀さんがお笑いにいったのか、芸人

読む『小説家Z』 水野良樹×加賀翔 第2回:ひとの神輿を担いでいきたい気持ちが強くなった原体験。

カメラマンとアシスタントのやり取り。 加賀:水野さんはフィクションというか、小説の主人公は自分じゃないし、自分の経験ではないことを書かれているじゃないですか。 水野:はい。 加賀:だから感動してしまったし、キツかったんですよ。エピローグ前の最終章とか、桜木がこう…。どこまで言っていいのかですけど。「あぁ…聞かずに…」というか、「どっちなの…!?」っていう。これが泣いてしまった。でもよかったなとも思える。どっちとも取れないけど、でも物語としてすごくおもしろかったです。

読む『小説家Z』 水野良樹×加賀翔 第1回:親父から電話がかかってきて、「小説読んだで」って。

コントを書くとき、台本は書かない。 水野:さぁHIROBA、小説家Zです。今日のゲストは初めての小説『おおあんごう』を出版された、かが屋の加賀翔さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。 加賀:よろしくお願いします。かが屋の加賀と申します。凄まじいところに呼んでいただきました、本当に。 水野:この番組は、僕のプライベートスタジオで収録しているんですけど。もう入って来るなり、加賀さんがスタジオを褒めてくださって。 加賀:いやいや。 水野:なんなら僕の活動まで褒

『小説家Z』 水野良樹×宮内悠介 第4回:読者のなかに湧き上がるイメージが最大の武器になる。

読者の想像力。 水野:昔スタッフに「それはちょっと変かもしれないな」って言われたことがあって。ドラマの主題歌だったり、商品のCMソングだったり、タイアップの仕事をするときに、僕も映像をイメージしたりするんですね。たとえば、お菓子のCMソングなら、そのお菓子がどこで食べられているか、このCMが渋谷のオーロラビジョンで流れたらどんなふうに受け取られるか、みたいな映像。その出口になるところをイメージして曲を書くんです。 宮内:ええ。 水野:「この状況で流れている音楽はこんな感

『小説家Z』 水野良樹×宮内悠介 第3回:私を発見してくれたSF。

犯人当てゲームが流行っていたんです。 水野:物語の立ち上げ方の話をずっとしてきたんですけど、一方で、どうして小説を書いているのでしょうか。宮内さんって実はいろんなことをされていて。『OTOGIBANASHI』でご一緒させてもらったときも、やはり音楽にお詳しいイメージがあって。宮内さんは趣味っておっしゃられるところもあると思うんですけど、たくさんのことをやられていて。小説が宮内さんを惹きつけるのは、どういったところなのでしょうか。 宮内:私は高校生くらいまで作曲家志望だった

『小説家Z』 水野良樹×宮内悠介 第2回:いつも逆張りをしたがる

私はこう思いますけど、みなさんはご自由に。 水野:作品が書かれた年度を見てみると、実際に現実で起きた社会的なテロであったり、人種が絡んだ問題であったりが、かなり反映されていたり、リンクが感じられる箇所が多くて。そこでも批判が起きる可能性があるような気がするんですけど、そういったものについてはどのように考えていらっしゃいますか? 宮内:そういう思想的な、あるいは社会問題について強く訴えることはあまりないです。というより、題材は題材として扱っても、基本的にはどのように読めるも

『小説家Z』 水野良樹×宮内悠介 第1回:物語を構築していくための入り口。

「推し」、「情景」、「アイデア」、「テーマ」 水野:新企画、小説家Zです。小説家・作家の方をゲストに招き、物語や小説がどのように立ち上がっていくのか、なぜ物語を書き続けているのか、2つのテーマを軸にお話を伺っていくトークセッションです。第1回は小説家・宮内悠介さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。 宮内:ありがとうございます、よろしくお願いします。 水野:宮内さんには、『OTOGIBANASHI』に参加していただきまして、「南極に咲く花へ」という作品を書いて

『小説家Z』 水野良樹×彩瀬まる 第4回:長編物語で行けるといい場所。

<光る野原を 君にあげたい>の最後一行。 彩瀬:よく他の作家のひとと、「ひとつのお話をずーっと嘘のない形で書いていくと、最後のほうでやっと普遍性に触れられる」みたいな感覚について話し合うことがあります。たとえば、オリエンタルランドのアトラクションとかって、安全な設計がされていて、ここで上がって落ちて、キャーッ!ってなって、最後は出口まで連れてってくれて、「ばいばーい」ってなるじゃないですか。それはひとを安心して楽しませるエンターテイメントで。 水野:はい。 彩瀬:でも多

『小説家Z』 水野良樹×彩瀬まる 第3回:作家に冷静でいてほしいか、それとも、いちばん猛り狂っていてほしいか。

1か月ぐらいスケジュールが空いたとしたら。 彩瀬:たとえば、水野さんが洞窟に閉じ込められて、もうひとりだけ。音楽を作っても聴くのは自分だけ。自分の魂を慰めるための曲を作る。ってなったら、今とはまったく違う曲を作られますか? 水野:作ってみないとわからないところがあるんですけど…。曲を作ることは間違いないですね。 彩瀬:あぁー。 水野:2~3年前、すごく忙しかった時期、本当に疲弊して精神的にヤバくなって。スタッフのみなさんが気を遣ってくれて、1~2週間の休みを取ってくれ

『小説家Z』 水野良樹×彩瀬まる 第2回:綺麗に清算できないもののなかで、いかに楽に生きていくか。

作者の人間くささが、出ている小説と出てない小説。 水野:物語って、フィクションじゃないですか。一方で、現実の彩瀬さんが経験されている日々や、考えていることがあって。その元の“原液”とフィクションとの距離ってどれぐらいのものですか? 彩瀬:私はそんなに遠いほうではないんだと思います。幻想的な風景や物語を書いているときでも、根っこの部分の起伏というか、喜怒哀楽や、「何か今すごく不思議な感覚があったぞ」みたいなものは日常の体感から作っていることが多いので。 水野:距離がないほ

『小説家Z』 水野良樹×彩瀬まる 第1回:小説を書く体感は山登りと同じ。

五感が働く細部の感覚をみちみち書くのが好き。 水野:小説家Z。このコーナーは小説家の方、物語を作られている方に、どのように物語世界を作っているのか、なぜ物語を書いているのか。2つの軸をテーマにお話を伺っていくトークセッションです。今回のゲストは作家の彩瀬まるさんです。よろしくお願いします。 彩瀬:よろしくお願いします。 水野:まず彩瀬さんとの繋がりのスタートラインとして、HIROBAの『OTOGIBANASHI』という企画に参加していただきまして。「光る野原」という歌詞

『小説家Z』 水野良樹×塩田武士 第4回:ご飯を食べる時間ももどかしい、あの瞬間がいちばん楽しい。

孤独は実生活で誰にでもできる。 水野:塩田さんからいただいた文章のなかにもありましたけど、作家が孤独になる瞬間も必要だと。すべてをいったんシャットアウトして、自分だけのなかで咀嚼というか、向き合う時間が必要だともおっしゃっていて。 塩田:孤独というと、普通は人間関係の線を思い浮かべると思うんですね。ひとと会わないとか。でもそれは、孤独ではなく孤立。僕は孤独になるって、人間関係の線を断つことじゃなく、時間のことだと置き換えているんです。 水野:はい。 塩田:そういう時間