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高強度インターバルトレーニング(HIIT)を構成する要素と変数

高強度インターバルトレーニング(HIITまたはHIT)とは、選手の心肺機能と代謝機能、そして競技力を効率良く鍛えるトレーニングとしてよく知られております。


HIITは短時間(60秒未満)から長時間(1分以上。2~4分程度)の高強度運動を休息を挟みながら繰り返します。


近年様々な研究がなされておりますが、HIITに対する長期的な生理的応答、およびパフォーマンスの適応には個人差があり、これが正しいやり方であると提示することは困難です。


しかし、運動/休息比や運動の種類といった様々な要素について詳しく探ることで、より効率的なやり方を模索することは可能です。


今回のポストでは、過去のブログで触れたことをおさらいしながらHIITを構成する要素について説明し、どのように考えるべきかについてまとめております。


HIITの理論的背景


まずHIITにおける高強度とは、一般的には90%VO2max以上の強度で運動することを指します。この強度で運動した積算時間をT@VO2maxと呼称します。


HIITにおいてはこのT@VO2maxが最も重要な意味を持ちます。なぜならば、VO2maxを向上させるにはVO2max相当かそれに近い強度で運動することが有効であり、T@VO2maxを増やすには一定ペースで長時間行うよりも、途中で休息をとるインターバル形式を取り入れた方が結果的に長く行えるのではないかという考えに基づいているからです。


HIITを構成する要素


それでは次にHIITを構成する要素についてお話いたします。以前のブログだと下記に記す9つとご案内しました。


・ワークアウトの強度
・ワークアウトの長さ
・レスト中の強度
・レストの長さ
・本数
・セット間の強度
・セット間の長さ
・セット数
・運動様式


現在はさらに

・路面の状況(硬さ等)
・外部環境(暑さや標高)
・栄養状態(筋グリコーゲンの貯蔵量等)

の3つが加わり、合計12個の要素で構成されると考えられております。

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具体的に申し上げると、路面が硬ければ地面からの衝撃は強くなります。それだけ骨格筋や腱へのダメージが大きくなります。舗装された路面を走るロードバイクだと余り考慮する必要は無いかもしれませんが、未舗装路を走るMTBやCX、ランが含まれるトライアスロンでは注意しなければなりません。


次に外部環境について。気温が高ければ疲労困憊までの時間が短くなり持久的パフォーマンスは落ちます。しかし、30秒未満といった短時間であれば最大パワーや平均パワーが向上したと報告する研究(Ball 1999)もあります。


どういった状況下でトレーニングを行うかによって適した強度や種類は異なります。


最後に栄養状態について。例えば、筋グリコーゲンの貯蔵量は持久的パフォーマンスと比例いたします。普段からしっかりした食事を出来ているかどうかは重要なポイントですし、カフェインといったエルゴジェニックエイドの使用もパフォーマンスに影響いたします。


他にも、金曜の仕事終わりにトレーニングを行い、土曜は朝からチーム練があると仮定します。このように前回のトレーニングとの間隔が短ければエネルギーの回復が間に合わず、しかるべきパフォーマンスを発揮できないといったことが起こりえます。


強度や持続時間の長さといった変数をどうするかといった以前に、それを適切に行える状況下にあるのかといった視点が必要です。


インターバル耐性とは何か?


先ほど述べたようにHIITは休息を挟みながら高強度の運動を何回も繰り返すインターバル形式を採用いたします。


HIITの変数についてお話しする前に高い強度を何回も繰り返す能力。俗に言うインターバル耐性とは何かについて触れてみたいと思います。


学術的には、インターバル耐性=繰り返しスプリントをする能力とは1本目のスプリント力+スプリント間の回復力と考えられます。詳しくは下記の図をご覧ください。


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これはランを対象にした研究なのでストライド長はトルク、ストライド頻度はケイデンスと変換していただくと自転車競技に当て嵌められます。


このように様々な要素によって成り立っております。繰り返しスプリント能力の向上を目指す際に、長い時間走り込むことで有酸素能力が向上し解決する人もいれば、スキルトレーニングで技術(運動制御)が改善することで解決する人もいます。他にも、筋トレで筋力が向上したら上手くいく人もいるでしょう。


今まで通りのやり方で上手くいかなければ、この図を参考に自分にとって足りない部分を探してみると良いのではないかと思います。


個人的には日本のライダーは筋力と弾性筋力の足りていない人が多いと考えており、筋トレの導入をお勧めしております。


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