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少年ギター特集

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少年ギターのマガジンです
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#1969年

少年ギター

All rights reserved by {HIRAKATA_HIROAKI_2008}2018 一九六〇年後半から七〇年初頭にかけて、 日本戦後ミュージックシーンに、ひときわ異質な数年間があった。定型化した作曲家や作詞家による演歌、ムード歌謡、ポップス、 イギリスのロックムーブメントを日本風に解釈したグループサウンズ。 アメリカの長期化したベトナム戦争に対抗する反戦運動とヒッピームーブメントが、日本のベビーブーマーに学生運動の風をおこし、 国家権力により革命の志は挫折

風と火花/少年ギター外伝

風を見たことがあるんだ。初老の男が呟いた、 たぶん、あれは風だったと思う。 国鉄のガード下を通り過ぎて、商店街へ向かう細い路地ですれ違った背の高い痩せたふたりの若者。 ギター弾く真似をして音楽の話をしているようなふつうの学生。ショルダーバッグと図面ケースを肩にかけていた建築学部にでもいそうな。 僕は小学生、AAAを買いに、スリーエース? ああ煙草さ、お使いでね。 電車が通過する、そのときなぜか振り返ったんだ、 1人の男が倒れる影、2人の男が走って曲がる影。 怖くて商店街へ走っ

風をみたひと/少年ギター外伝

風をみたひと/少年ギター外伝_1 得物の手入れをしていたら、メールボーイが来た。新聞紙にマジックで走り書きの伝言が安全靴の中に入っていた『ろてしきなうじをみくよきくも』こどもだましな単純な暗号だが2回の変換が必要なので見つかっても時間が稼げる代物だ、 『ほういもうひろがるたいきせよ』ガサ入れにあっても何も見つからないようには普段から掃除はしている、これでも綺麗好きな方だ。大家に家賃を払いにゆく、実家に不幸があってひとまず再来月まで家賃を先払いする。いいのよ気にしないで

少年ギター外伝/マキシ

少年ギター外伝/マキシ_1 マキシ、黒ずくめのその女はみなにそう呼ばれていた。 マキシはかすれたガラガラした声の女だ。 酔っ払ったマキシがうたう、居合わせた奴が言った。 地獄に引きずり込まれる、だから俺はマキシの歌を聞いて恋をした、マキシに。それが、マキシだ。 50年台のフランス映画のVampのような広縁のハットをかぶる、化粧の濃いマキシ。黒い毛皮のコートをふくらめて羽織るマキシ。それがお前のあだ名さ、 その後、彼女を歌ったフォーク歌手がいた。 黒いフォークを