無償の愛
さすがアラン・ドロンである。訃報が流れて何日かたつというのに、彼に関連する日本発の報道やら投稿、分析の記事などがネット上に流れてくる。
フランスよりも日本のほうが人気は高かったという。フランスではジャン=ポール・ベルモンドのほうが上だったそうだ。本当かどうかは知らない。
日本では絶対的な人気をほこるドロンが、最後は日本人女性と——その女性によれば——事実婚の関係にあったという。でき過ぎた話である。そして、彼女は、最後、ドロンの息子たち親族から追い出され、モラスハラスメントで訴えられている。まるで映画のようだ。
だが、よくある話だし、日本でも大物俳優が死ぬと最期をみとったという女性が現れる。そして、遺産をめぐって親族と争いが生じる。とりわけ、その俳優に連れ合いがいないとよく聞く話である。
俳優が男ではなく、女の場合にそうした争いは聞いたことがない。女優さんの場合、それまで寄り添っていた男がうまく立ちまわって表面に出てこないのだろうか。俳優が男だと最期をみとってもらう以外にもお世話になる。最後は下の世話まで、だれか特定の女性の世話になろうとする。
その点、男はお世話するのが下手くそだし、もしも、かいがいしく女優さんの面倒をみてきたしても、男としてのメンツがあるからいいづらい。遺産をわけてもらう約束があったなら、彼女が死んでからもめるのがわかっていれば、生前にちゃんとすませておくだろう。
知人が、重篤の奥さんのところへいき、遺産相続の同意書にサインしてもらったという話を聞いたときも、事務的に処理する彼がひどい男だとは思わなかった。むしろ、奥さんがすばらしい。わが家だったら考えられない話だ。
無償の愛など、まず、ありえない。ドロンの場合、くだんの日本女性が、老いたドロンと晩年の何年かをともにできただけで満足だったのなら無償の愛と呼べるかもしれない。
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