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こんなにたくさんいたのかよ

 この境川にカメが棲み着いているのは知っていた。秋、泳いでいるのを二度ばかり見ている。たしかめるまでもなく、「ミドリガメ」こと「ミシシッピーアカミミガメ」だとわかる。家で飼えなくなってこの川に放たれたのだろう。だが、こんなにたくさんいたとは!

 大きく成長したのが、こうして姿を見せわたけだ。場所によっては、池にあったハスやスイレンを食べ尽くし、消滅したという事例もあるらしい。食害というヤツである。そんな調査結果からミドリガメは「特定外来生物」に指定され、いまや放流が禁じられている。

 昔は身近にいた日本古来の「ニホンイシガメ」などが環境省により「準絶滅危惧種」に指定されているそうだ。アカミミガメに駆逐されたのだけが減少の原因ではないらしいが、そういえば、もう長いことイシガメを見ていない。

 ぼくが住んでいる、東京・町田のほかの公園の池にはたくさんのカメたちがいる。だが、いずれもアカミミガメである。以前は、共生していたのに、このところ、さっぱりイシガメを見かけない。どこへいってしまったのだろう?

 アカミミガメだけではなく、魚、草、虫、そして、鳥たちもいまやたくさんの外来種がハバをきかせている。生態系が変わってしまうという心配はますます深刻になっていくだろう。かといって、生き物なので、ただ、捕まえて殺してしまえばいいというわけにはいかない。

自滅していくナガミヒナゲシの群生

 地中海の沿岸からやってきた、写真の「ナガミヒナゲシ」は、繁殖力が旺盛で、日本各地に群生が広がっているそうだ。アルカロイド性の有害物質を持ち、ほかの草花の育成を阻害するという。ただ、いっとき猛威を振るうが、翌年にはあまり見ない。自らの有害物質で自滅していくからだという。

 外来生物のすべてにこうした“自滅”というありがたい習性があってくれればいいのだが、たいてい、こちらは指をくわえてながめているしかない。人間は無力である。

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