[パターン別]業務用iOSアプリの配布方法
はじめに
フラジェリンでは、医療従事者とメールでコミュニケーションするためのShaperon Emailというプロダクトを、製薬企業向けに開発しています。これまでWeb版のみでしたが、iOSアプリを先日リリースしました。
アプリの配布方法として、誰でも使えるオープンなアプリならAppStoreでの公開ほぼ一択ですが、例えば業務用途などクローズドなアプリだと、AppStoreに公開してもいいものか迷うこともあります。
Shaperon Emailは後者にあたるので、どういった配布方法があるのか調べましたが、結構まとまった情報が少なかったです。同じように悩んでいる人の助けになれば良いなと思い、この記事でまとめることにしました。
業務用アプリとは?
この記事では業務用アプリについて、インハウスアプリとBtoBアプリを対象とします。概要は以下の通りで、これ以降の項目で詳細を紹介していきます。
なお、Shaperon Emailについては一番右の「BtoBの別パターン」を採用しており、その理由も後述します。
※以降の説明でMDM(モバイルデバイス管理)やApple Business Manager(以下ABM)といったワードが出てきます。以下簡単に記載しますが詳細については割愛します。
MDM
登録されたデバイスに対して、アプリの一括配布の管理や、OSの機能制限、遠隔での操作、といったことができるツール。ABM
MDMと連携し、Apple Storeで購入したデバイスをMDMに自動登録する機能を持つ。また、カスタムAppのインストールについてはABMを経由する必要がある。
インハウスアプリの配布方法
インハウスアプリは社内での業務用途なので、公開はしたくない、というケースがほとんどかと思います。ここでは非公開の配布方法について紹介します。
その前に開発プログラム(ライセンス)の種類が、以下の2種類あることはご存知でしょうか。いずれかのプログラムに加入しないと開発やリリースができません。
Apple Developer Program(以下ADP)
Apple Developer Enterprise Program(以下ADEP)
どちらのプログラムにも非公開で配布する方法が用意されていますが、内容は異なります。以下に特徴をまとめます。
比較すると、審査がなく、配布やインストールも自由度が高いADEPに加入して開発する方がマッチしているように見えます。
かつてはADEPを選択することが正解だったと思いますが、現在はあまりそうとは言えません。おそらく審査がなく配布も自由なので、インハウス目的以外のアプリを配布されてしまうことが多かったのでしょうか。加入の申請時にライセンス違反にならないか、今ではかなり厳しく見られるようで、加入すること自体が難しいようです。
そのためADEPは現実的な選択肢にはなりづらく、実質消去法でADPのカスタムAppを使うことになるケースが多いかと考えられます。
審査はありますが、ガイドラインに沿っていればリジェクトされることは基本ないです。また最近は審査期間が短くなっており大体1日、遅くとも2日で結果が出るため、スピード感としてもそこまでクリティカルな問題にはなりません。
あとは、アプリをインストールするためにはABMを使用しなければいけません。カスタムAppは非公開であるため、AppStoreの検索には引っかからず、ABM経由でしか扱えないためです。ここは少し面倒なところではありますが、社内利用というところを考えれば、こちらも大きな問題にはならなさそうです。
BtoBアプリの配布方法
非公開にしたいパターン
契約しないと使えないようなBtoBアプリは、非公開にしたい場合があります。
ADEPはインハウス専用であるため、他社が使用するBtoBアプリに適用できません。非公開にしたいならADPに加入し、カスタムAppでの配布一択となります。
条件としてはインハウスアプリと同じであるため、インストールの際にはABMが必須となります。つまり顧客側がABMへ加入することと、ABMを使用することを顧客ごとに強制することになり、これがアプリ導入への足枷になる可能性があります。
また、企業全体でiOS端末を使用している場合、MDMツールを導入しているケースもあります。その場合には端末にインストールするアプリをMDMで管理しているため、ABMと併用しなければならないとなると一元管理が難しくなります。
ちなみにフラジェリンがターゲットとしている製薬企業では、MDMを使用していることが多いため、懸念するところでありました。
上記のような理由で、実質非公開で取り扱うのはハードルが高いと言えます。
Shaperon Emailを配布する際にも非公開にすることを検討しましたが、上記を懸念して諦めました。
公開してもいいパターン
BtoBアプリをAppStoreに出してはいけない、というルールは特にありません。公開してもよければADPに加入し、AppStoreに公開・AppStoreやMDM経由でインストールする事となります。
誰でもインストールできるようにはなってしまいますが、非公開のパターンで挙げたようなABMの使用強制や、MDMでの一元管理を阻害する、といったことがなくなります。
そのため意外と公開する方がオーソドックスな方法ではないかと個人的には思います。
Shaperon Emailでもこのパターンを採用しました。
注意点としては、誰でもインストールできてしまうため、契約しないと使用できないことが伝わるようなガイドをアプリ内に入れておかないと、審査時にリジェクトされる可能性は考えられます。
ちなみに、Shaperon Emailでは、契約して初期設定の手続きを踏むまではログイン画面を表示せず、「使用するには契約が必要です」と表示するようにしています。
まとめ
インハウスアプリ
→ADP加入&カスタムAppで配布BtoBアプリ
→ADP加入&AppStoreに公開
以上、まとめると最初に記載した通り、オススメの配布方法は上記になりますが、もちろん目的によりけりですので、判断材料としてこの記事が参考になれば幸いです。
今回調べてみて、聞きなれない用語や仕組みがたくさん出てきて、その目的や役割、それぞれの関係性がパッと分からず苦労しました。ABMやMDMについての説明は、複雑で話が長くなるため今回は割愛しましたが、また別途まとめる予定です。
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