【演奏会に】クラシックコンサート初心者のよくある疑問にお答え【行こう!】

 こんにちは、廣瀬です。
 クラシック音楽に普段触れることの少ないお友達・お知り合いに演奏会の宣伝をさせて頂くと、結構な頻度で「何を着ていけばいいの?」といったご質問を頂きます。
 そこで、今回は普段クラシックの演奏会に行くことのあまりない方向けに、服装、差し入れ、マナー、準備についてなどをまとめてみました。

 ただし、あくまで私個人のイメージですので、他の演奏家や関係者の方々と細かいところでご意見・感覚に差がある可能性があることを先にお断りしておきます。


●何を着ていけばいいの?
 一番多く頂くのが服装についてのご質問です。
 皆様なんとなく「クラシックの演奏会はかっちりした格好でないと」というイメージは持って下さっている方が多いと思うのですが、では具体的になにを避ければいいのか、どれくらいのかっちり具合ならいいのか、ということがわからない、というご意見をよく耳にします。
 服装の基準は演奏会の種類や規模によって変わるものですが、とりあえず「ここを押さえておけば大体のクラシック演奏会で悪目立ちしないかな」というような内容を書いてみます。

 まず、「これは避けたほうが無難」というものを一通り挙げてみます。

避けた方がいいもの
・ジャージ・スウェット
 これらは運動着や部屋着ですので、演奏会には相応しくありません。
・ジーンズ生地・スニーカー・オーバーオール・つなぎ
 これらは元来作業着ですので、やはり避けた方が良いかと思います。
・音の出やすい服
 演奏会は何よりも「音」を楽しむための場です。演奏中は音楽以外の音を極力発生させないことが求められます。ですので、少し動いただけで大きな音が立つような生地のものは避けましょう。
・丈の短いもの・露出の多いもの
 演奏会では椅子に座りっぱなしになります。また会場内は人が多いことや演奏者(身体を使って演奏しているのでお客様より運動量が多く、暑く感じやすい)に合わせて、若干涼しめに設定されていることがままあります。
 また、多くのお客様が集う場所でもありますので、過度に肌が出るもの、丈の短いものはおすすめしません。
・サンダル・下駄・ゴム草履など
 これらも元来ラフな格好や作業用の履き物ですので、避けるのが無難でしょう。
・ブーツ
 軍服などにも採用されているので勘違いされがちなのですが、ブーツはもともと防寒用具であり、基本的にフォーマルな履き物ではありません。
・長靴
 レインブーツは名前の通り雨具です。雨の中綺麗な靴をあまり濡らしたくないという場合は、会場に入る直前に近くのトイレなどで履き替えるのも選択肢のひとつです。


 このあたりを避けた上で、ではどんな服装が推奨されるのか?ということをまとめてみます。

演奏会におすすめの服装

・少しかっちりめの格好
 ニュアンスが難しいのですが、オフィスカジュアルやカジュアルフォーマルで画像検索をかけて頂けるとイメージしやすいかと思います。
 ちょっと綺麗めのおでかけ着、といった感じでしょうか。
 上半身に関しては「襟のある服」と思うといいかもしれません。Yシャツやブラウス、或いは何かの上にジャケットを羽織る、など。靴は革靴、ローファー、パンプスほか。
 中には和服(浴衣は不可)やスーツのお客様もいらっしゃいますので、それらでも問題ありません。(ただ黒スーツだと、スタッフさんとかぶる可能性ありかも?)

・荷物は小さめに
 大ホールから中ホールくらいの、ある程度のサイズのホールだとクロークがあり、大きな荷物やコートを預けられる場合が多いのですが、小さめのホールだとそれができない場合も多々あります。そういった場合荷物は基本的に膝の上か足元(大体狭い)に置くことになるので、小さめにすることをおすすめします。
 ただ、演奏会ではプログラム(パンフレット)や他の演奏会のチラシが配られることが殆どですので、それを入れて帰れるサイズは必要です。配られるものは大抵A4サイズ以内なので、それを2つに折ってA5サイズになったものが入れば大丈夫。折らずに持って帰りたいと思われる方は、A4サイズが入る鞄だと安心です。

・脱ぎ着のできる(温度調節のしやすい)もの
 先ほども書きましたが、会場内は少し涼しめの場合が多いです。ずっと座りっぱなしで聴くことになるので、肌寒いな、と感じた時さっと羽織ったり、逆に暑かったら脱いだりできる上着や少し厚みとサイズのあるストールなどがあると安心ですね。


 こんな感じでしょうか。
 どうしてきちんとした服装なのか、というのはおそらく色々なご意見があると思いますが、私からは「元々が貴族の文化だから」というところをお伝えしてみたいと思います。
 クラシック音楽はもともと王侯貴族の文化だった時期があり、それが一般人にも広がっていきました。演奏会の場というのは、芸術の場であると同時に、貴族の社交の場でもあったわけです。
 ですので、「ちょっと綺麗な格好をして、貴族気分で楽しんでみよう!」と思ってみるのもいいのかもしれません。


●出演者への面会について
 次は、演奏会出演者への面会についてです。
 まず演奏会前は、演奏者は演奏のための準備に集中していますから、基本的に会うことはできないとお考え下さい。
 演奏会終演後は、
・演奏者が客席やロビーへ出てお客様とお話できる場合
・楽屋へお客様が入ることが許可される場合
・面会ができない場合
などがあります。最近は感染症予防の観点から、本来であれば面会できるような演奏会でも、終演後にお会いできない場合も増えています。
 また、楽屋へ直接行くというのはかなり親しい間柄(家族・師弟関係・ごく親しい友人など)の場合が多いので、演奏会初心者のうちは(出演者から誘われたりしない限り)あまり選択肢に入れなくてもいいかもしれません。

 客席やロビーへ出演者が出て行き、ご来場くださったお客様とお会いできる場合は、演奏会終了のアナウンスにてその旨が告知されることが多いように思います。
 演奏会終了直後の生の感想や激励を伝えて頂ける機会なので、お時間がある方は会いに行ってみてください。中には演奏者と一緒に写真を撮られる方もいたりします。
 この後に書く差し入れについてとも繋がるのですが、小さいサイズのものやなにか本人に説明が必要なものであれば、この面会時に直接渡してしまう場合もあります。


●差し入れについて
 もう一つよく聞かれるのが演奏者への差し入れについてです。
 知り合いやお友達が演奏するから、チケット代以外の形でも応援・お祝いしたい、というときに、差し入れをしたりします。これはしてもしなくても問題ありません。基本的には「演奏会に来てくれる」「チケットを買ってくれる」だけで十分なのです。あくまでご好意なので、「せっかくなので何か・・・」と思われたら参考にしてみてください。

 差し入れは、大抵の場合受付で運営側に預けることになります。演奏会中、ずっと持っているのは大変ですし、お花などの場合水気や香りが周りのお客様にご迷惑になる場合もあるからです。
 少し前に書いたように、ごく小さいサイズのもの(きちんと包装されたお菓子や紙類など)であれば、終演後直接、という選択肢もあります。

 差し入れの品物でポピュラーなのは、お花とお菓子です。
 お花は花束というかたちが多く、お気持ちにあわせて500円から5000円くらいの範囲で選ぶとおそらく無難です。貰って困る方が一番少なく、完全に嗜好品なのでお祝いという意味が込めやすいのです。また、枯れたら捨ててしまえるので、保管場所に困るといったことが発生しません。
 お菓子は、相手の食べられないものを考慮する必要がありますが、お花と同じく嗜好品かつ消えものなので、差し入れの品物としてポピュラーです。
 他にも相手と自分の関係性、相手の好みなどに合わせて選ぶと良いでしょう。
 注意点としては、差し入れは基本的に出演者が自分で全部持って帰ることになるので、手提げ袋をつける、過度に大きいものは持っていかない、といったあたりを考慮して選ぶといいかもしれません。


●演奏会でのマナーについて
 これも時々ご質問を頂くので、思いつく範囲でいくつか書いてみます。

・演奏中はお静かに
 演奏会は音を聴き、楽しむ場です。演奏中は極力音を出さないようにしましょう。咳やくしゃみなどが出てしまうのは仕方のないことですが、なるべく音がしないように工夫が必要です。

・拍手のタイミング
 クラシックの楽曲の中には、「複数の曲がセットになったもの」「曲の途中で音が一度完全になくなることがあるもの」が存在します。
 ですので、クラシック初心者だと拍手をしていいタイミングなのかどうか迷われると思います。最初のうちは、周りのお客様の殆どが拍手をしていたら自分もする、というのが一番わかりやすいかと思います。
 演奏会では、基本的にお客様から出演者に送れる唯一のメッセージが「拍手」です。終わった後に出演者と話したりメッセージを送ったりすることはできても、「今この瞬間、この曲に対しての感想」は拍手でしか伝えられないのです。ですので、拍手の音に思いを乗せてあげて下さい。演奏者にとっては一番のご褒美です。
 また、演奏が終わった直後、まだ余韻が残っているうちは、新しい音が出ることがなくても「曲の途中」です。曲が終わると、演奏者の雰囲気が「曲」から「そうでないもの」へ切り替わる瞬間があると思います。演奏後の少しの静寂も含めて「曲」のうちなので、演奏者の空気感が切り替わるまで拍手はどうぞお待ち下さい。

・声かけについて
 演奏が終わったあと、素晴らしい演奏だったときに「ブラボー!」というような声がお客様からかかることがありますが、上級者のワザなので最初のうちはやめておきましょう。
 豆知識ですが、「ブラボー」はイタリア語で、「Bravo」と書きます。本来の発音は「ブラーヴォ」といった感じで、「優れた」「りっぱな」という意味の形容詞です。「いい演奏だったぞ!」という意味でかけられることがあります。
 イタリア語の形容詞は修飾する先の名詞の性と数によって語尾が活用するので、男性単数(ソリスト)の場合は「bravo(ブラーヴォ)」、女性単数の場合「brava(ブラーヴァ)」、複数人(オーケストラや合唱団、或いは多重奏など)の場合「bravi(ブラーヴィ)」、女性のみの複数人の場合「brave(ブラーヴェ)」となります。

・飲食はロビーか外で
 ホール内では飲食厳禁、という会場が殆どなので、演奏会前後や休憩中に水分補給・軽食などをとられる場合はロビーか外へ出ましょう。


 そのほか、公共のマナーやルール、会場でアナウンスされるお願いを守って、自分も周りも演奏会を楽しめるようにしましょう。

 また、「ランチコンサート」「ディナーコンサート」「カフェコンサート」などの場合は、飲食しながら聴くことが前提ですので、演奏中の音や飲食、服装に関してのマナーがちょっと異なります。なるべく静かにというのは変わりませんが飲食程度の音は許容されますし、お店の雰囲気によって服装は変わります。ピアノのあるライブハウスやカフェもあり、そういった会場でのコンサートであればジーパンにスニーカーでもOKだったりします。


●オマケ:準備について
 他に演奏会に向けてできる準備は?ということについて。
 これはオマケなので、余裕がある時は試してみてくださいね、という程度です。

 クラシック音楽にあまり慣れていない方は、演奏会に行っても「知らない曲」が多いのではないでしょうか。
 楽器だけの曲をじっくりと聴く機会も普段の生活ではあまりないかもしれません。また、声楽作品であれば言葉がありますが、(日本語の作品もありますが)基本的にイタリア語・ドイツ語・フランス語などの外国語が多いです。
「知らない曲」ばかりだと飽きてしまいやすく、演奏会へ行った経験が苦い思い出になってしまうかもしれません。
 それだと悲しいので、もしよろしければちょっとだけ「予習」をしてみてください。
 演奏会のチラシには、よく「こんな曲を演奏しますよ」というように、曲目の一部が書いてあります。
 それらをYouTubeなどで検索して、是非聴いてみてください。集中して聴かなくて大丈夫です。ただ「全く知らない曲」が「聴いたことのある曲」になるだけで、演奏会で聴いた時の入りやすさは全然違うと思います。
 歌詞や背景となる物語があるものであれば、どんな内容なのかもGoogleで検索するとわりと出てきます。
 そうやって一部でも「聴いたことのある曲」にしておくと、「全部知らない曲の演奏会」から、「聴いたことのある曲とそうでない曲が混ざっている演奏会」に変わります。
 クラシックは再現芸術、つまり同じ曲を色々な人が演奏するのが当たり前のジャンルですので、それらを比べる楽しみ方があります。「動画のあの人はあんな風に演奏していたけど、演奏会のこの人はこうやって演奏するのかー」と比べてみてください。


 いかがでしたでしょうか。私なりに演奏会初心者にお伝えしたいことをまとめてみました。ここまで読んで下さった方はありがとうございました。
 どうぞ色々な演奏会へ行って、お気に入りの作曲家や曲、ジャンル、演奏家と出会って、クラシックを少しずつ好きになって頂ければ嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?