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日本の歴史を学びに行ったのに、いつの間にか海外の歴史を学んでいた出来事について(2024/6/21 #68)

前回飛鳥山&渋沢史料館を巡った話を書きました。

渋沢史料館に行ったのは歴史を知って「思考をタテに深める」目的があったのですが、思いがけず「思考をヨコにも広げる」出会いがあり、その体験について書いてみます。


タテとヨコの思考

いきなり出てきた「タテとヨコ」ですが、国内大手生命保険会社から転じ、ライフネット生命を創業した後、立命館アジア太平洋大学学長も務めた出口治朗さんが提唱している思考法です。

世界をフラットに見るには方法論が必要で、「タテ・ヨコ・算数が大切です。
「タテ」とは、人間の脳みそは1万年以上まったく進化していないので、昔の人と我々は喜怒哀楽や判断は一緒です。だからこそ、昔の人の意見を聞くことが大切です。
「ヨコ」は、世界の人がどう考えているか、です。
 ホモ・サピエンスは単一種ですから、黒人や白人という区別は単なる気候差にすぎません。だから、タテ・ヨコに物事を見ることは、ものすごく大切です。

出典:ダイヤモンドオンライン 出口式「タテ・ヨコ・算数」の思考法

余談ですが、私がnoteを書くきっかけになったのは木下斉さんのvoicy。
木下斉さんを知るキッカケになったのは、ちきりんさん。
そしてちきりんさんを知るキッカケになったのは出口さんだったのでした。

15年近く前に出口さんの講演を聴く機会があって、その際に出口さんが「情報は『Chikirinの日記』から得ている」とコメントし、そこでちきりんさんを知ることができたのです。今思うと、出口さんの話を聴きに行ってなかったら、noteを書くことも無かったかもしれません。

100年前の渋沢栄一

話を渋沢史料館に戻します!

渋沢史料館のチケットを買うと、文化財である青淵文庫(渋沢栄一の書庫、接客の場として利用された建物)の中にも入ることができます。

青淵文庫の一室
(ソファに座ってみたいけど、座面に「座らないでください」という張り紙がしてありますw)

この青淵文庫に「今日の渋沢栄一」という展示があります。

おそらく、過去の同じ日付の中から、特徴的なイベントがあった年のものを選んでいるのだと思います(受付の人に聴いてみたのですが、選定理由は分からず・・・)。

今日の渋沢栄一

で、この日付の大正13年なのですが、西暦にすると1924年。今から丁度100年前なのでした。

青淵文庫に来る前に、史料館で100年前のタゴール氏が渋沢栄一を訪問したという映像を見て、「これが100年前の出来事か」と写真も撮っていたのですが、日付も含めてほぼ100年前だったとは気づいていませんでした。

タゴール氏が渋沢栄一を訪問した際の映像

キリのいい数字というのは、人にインパクトを与えるものです。

正直、この瞬間まで「タゴール氏とはいったい誰なのか?」サッパリ知らなかったのですが、何かの縁と思い調べてみることにしました。

タゴール氏 あなたは誰だ?

タゴール氏はインドの詩人、思想家、作曲家。1913年にはノーベル文学賞を受賞しており、アジアで初めてノーベル賞を受賞した人なのだそうです。

これまで詩にはサッパリ関心を持っていなかった私ですが、せっかくの機会なのでタゴール氏の作品を調べてみます。

すると、下記のような詩に出会ったのです。

あなたは誰だ、私の詩をこれから百年後に読んでいる読者よ
私はこの春の富の中のただ一つの花、彼方の雲の黄金のただ一筋をも君に送ることができない
君の扉口をひらいて外に見たまえ
花咲いている君の庭から、百年前に消えた花の香ばしい思い出を集めたまえ
君の心の喜びの中で、ひょっとすると君は、百年という歳月をこえて、その喜ばしげな声を送り出した、ある春の朝の詩人の生き生きした喜びを感じるかもしれない

出典:『タゴール詩集 山室静訳』

この詩が書かれたのが何年のことなのか分かりませんが、彼が日本の飛鳥山に来ていた100年後に、私はその地にたまたまやって来て、それをキッカケにこの詩にたどり着きました。まさに100年後に読んでいる読者になったのです。

読んでいる皆さんにとっては「何のこっちゃ」という感じかもしれませんが、この事は私にかなりのインパクトを与えました。

がぜんタゴール氏に興味を持ったので、さらに調べると「タゴール・ソングス」というドキュメンタリー映画がAmazon Primeにあったので、こちらも勢いでレンタルしてみました。

映画「タゴール・ソングス」

タゴールの詩、そしてその楽曲は、インド東部とバングラデシュにまたがる「ベンガル地方」の人々に非常に親しまれています。

この映画は、タゴールの音楽がこの地方の人々に与える影響を描き、彼の楽曲が現代においてもどのように受け継がれ、愛されているかを探るものです。

こちらに出てくる音楽、詩も、印象に残るものがありました。

もし 君の呼び声に誰も答えなくても ひとりで進め
もし 誰もが口を閉ざすなら
もし 誰もが顔をそむけ 恐れるなら
それでも君は心開いて 心からの言葉を ひとり語れ

引用:『タゴール・ソングス』公式サイト

これは上記のyoutube、20秒あたりから流れてくる楽曲『ひとりで進め(Ekla Chalo Re)』の歌詞ですが、木下斉さんのvoicyに出てくる「違和感を拾う」であるとか、「反対されても最小単位で始めてみる」といった、現代でも大事な行動と通ずるところがあります。

この詩が書かれたのは、当時インドを植民地としていたイギリス政府が、独立運動を抑え込むために「ベンガル地方の切り離し」を目論んでいたタイミング。
タゴールは、切り離し政策に反対してこの詩を書いたと言われています。

現在はイギリスの統治下を離れ、いずれ世界第3の経済大国にならんとしているインド、そして「ベンガル地方」のうち、インドから切り離されたバングラデシュ(最初はインドからパキスタンの一部となり、やがて独立)。

方や経済大国、方やまだまだ発展途上。
かつての同じ地域が違った歩みをしている。しかしいずれも「タゴール・ソングス」が共通項として存在する。

これまであまり知ることのなかった地域のことについて、映画を通じて理解を深めることができました。

興味を持つキッカケはどこにあるか分からない

ということで、タテの思考を深めようと渋沢史料館に行ったところ、ベンガル地方の詩人・その作品を取り上げた映画を通じ、思いがけずヨコの思考を広げる結果となりました。

きっと来月、新1万円札が出たタイミングで渋沢史料館に行っても、ここまでタゴール氏に興味を持つことは無かったのかなあ、と思います。

何かに興味を持つキッカケはどこにあるか分からない。
でも、出歩く機会が多いほど、キッカケが増える。
そんなことにも気づいた散歩だったのでした。

では今回はこのへんで。

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