ベンチャー投資①:概論

新年あけましておめでとうございます。ひろです。

さて最近は、いわゆるバイアウト型のPEファンドにおいてもベンチャー投資が散見されたり、一般企業でもCVC(Corporate Venture Capital)が盛り上がっている等、ベンチャー投資への関心が高まっています(参考はここここ)。

いきなり余談ですが、巨大PEファンドであれば一部にベンチャー投資を組み込むのもポートフォリオの観点でも一応ありかも知れませんが、そうでもなければLP視点では「嫌」なのではないか、と邪推しています(LP視点だと素直にPEVCにそれぞれ出資すればよく、投資スタイルが大きくかけ離れたものがごちゃまぜ状態のファンドに出資する必要はないし、あまりしたくもないのでは、と)。実際のところどうなんでしょうね。

ついでに言うと、足元ではベンチャー企業において「ダウンラウンド(前回資金調達時の評価額よりも低い評価額での今回資金調達)」が頻発しており(参考)、もう「メタメタ」としか言いようがない状況です。
「コロナ禍でバブルだった」と言えばそれまでですが、「将来期待」に価値の大半が依拠しているベンチャー投資先は、価値のボラティリティが非常に高くなる(予想キャッシュフローが大きく変動し、そこに金利上昇も含めた割引率の変化が相乗効果をなす)、というよい事例ですね。

ちなみにCVCについては上記リンクの通り一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA登録社だけでも何十社とあります。
一般企業として強力な事業基盤があるためベンチャー企業側のメリットもある一方(ただし、その分一定の「色がつく」のは避けられないかと)、CVC側としてもある程度の事業シナジーを見込める必要があったり(自社事業と関係の薄い分野には投資しない)、リードはとらなかったり(※CVCの方針次第と思います)、といった一定の制約はあるかと思います。

さて前置きが無茶苦茶長くなりましたが、そんな期待の高まる(?)ベンチャー投資の契約における主要な条件や考え方について、簡単に概略をまとめていきたいと思います。

契約書の種類

ベンチャー投資について、契約書は大きく
投資契約と株主間契約にわかれる場合 と、
わかれない場合
があります。

①でいう投資契約は投資実行に関する部分、株主間契約は株主(および発行会社)間での約束事を規定する部分、ということになります。
①のようにわけておくと、投資実行した後は基本的には株主間契約を見ればよいので契約書として役割分担が明確であるのと、新たに他投資家が入ってきた場合も、株主間契約のみを更新すればよいので(投資契約はそのままにしておくことができる)実務的にも煩雑さが少なくなります。
②のようにわけないでおくと、株主間契約で規定するような内容も一つの契約に記載するので、投資家によって(その時々の投資契約によって)株主としての権利内容が異なることがありえ、管理面が煩雑になったり、一部条件はそもそも組み込みづらい(Drag Along等)、という点はあるかと思います。

ファイナンスの基礎条件

結局は投資契約等に記載されたりすることにはなりますが、ここで前提としてファイナンスの基礎条件について述べておきます。

株式の種類

ベンチャー投資においては普通株式のみではなく、優先株式が用いられるケースがままあります(参考)。これは、「普通株式では実現しづらい(法務・税務のリスクが生じる)経済条件を規定する場合に便利だから」、ということが背景にあります。

具体的な経済条件には、優先配当、優先残余財産分配、希薄化防止条項、といったところがあげられると思います。

優先配当は累積/非累積(未払配当金が累積するか否か)の別や、「参加型」(優先配当後に、普通株式への配当も同様に受領できるか否か)、といった条件面があります。

優先残余財産分配は、清算するような場合に優先的に資金が還元されるか否かという点です。これも優先されるか否かのみではなく、「参加型」か否か、という点があります(なお、「参加型1倍」なら投資額の1倍までが優先分配、「参加型3倍」なら投資額の3倍までが優先分配という意味になります)。
細かくは更に分かれることがありますが、細かすぎるので『起業のエクイティ・ファイナンス』あたりを参考にして下さい。
なお、みなし清算条項として、たとえばM&Aされる場合にもその対価について同様の考え方を適用させることがあります。

希薄化防止はかなり独特です。
優先株式を普通株式に転換する場合、通常は1:1ですが、ここで上述の「ダウンラウンド」になってしまった場合に、転換条件を調整する内容です。
転換価額を主に加重平均を用いて調整することになりますが、その際に潜在株を含む場合をブロードベース、含まない場合はナローベースと言います。具体的な計算はこちら等を参考にして下さい。

なおこの場合の優先株式については、当然ですが上場前には全て普通株式に転換されることが想定されています。

時価総額と資金調達額

時価総額は「プレマネー」(Pre-Money Valuation)というタームがあります。「マネーの前」、つまり投資がなされる前の時価総額、という意味で、要は評価額ということになります。

それに資金調達額(払込金額)が加わったものが「ポストマネー」(Post-Money Valuation)ということになります。

Post-Money Valuation = Pre-Money Valuation + New Money

なお実際の株式数等の計算上はどうしても端数は生じうるので、上記の時価総額に「ぴたり一致」とまではなかなか難しいこともあるかと思います。


さてどんどん長くなっていってしまったのでいったん本記事ではここまでとして、後は次回以降にまとめていきたいと思います。

ではではまた。新年もどうぞよろしくお願いいたします。

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