Debt Equity Swap(2):実例

ひろです。
それではDebt Equity Swap(DES)の続きで実例を見ていきたいと思います。

~ここから過去の記事~

スティグリッツ先生の書籍に「銀行家は、自分が銀行家と自覚している場合は特に、ほかの人より不誠実で利己的な行動をとる」「経済学を勉強していると、ほかの人より利己的になる傾向があり、経済学を勉強している期間が長ければ長いほど、利己的になっていく」と書かれているのを見て、何とも複雑な心境になった、ひろです。学問ディシプリンに性格も影響を受けるのでしょうか…

さて、それではDebt Equity Swap(DES)の事例を見ていくことにしましょう。
直近ではフルッタフルッタ社デンタス社の事例があるようです。

とりあえず前者についてのみ軽く言及しますと、アサイーブームの終焉から19/3期には債務超過に陥り、フルッタフルッタ社はなんとしても債務超過を解消しなくては上場廃止懸念が生じることとなりました(当社上場市場であるマザーズの基準でも債務超過後1年間で解消する必要あります)。

16/6に提携していたJFLAホールディングスとの関係活用や独自の施策等を打つも奏功せず、複数のスポンサー候補と金銭支援について協議をしたものの、債務超過を解消可能なスキームを提案したのは今回の割当先のEVO FUNDのオーナーであるEvolution Financial GroupのMicheal Lerch氏のみであり、結果19/12には、先立って第7回新株予約権の発行を公表していました(なお、こちらは有利発行。参考はここここ)(更についでに言うと、A種種類株式発行に向けた定款変更もこの時点で実施)。

そしてこの度は、EVO FUNDが銀行から金銭債権を取得できたため、当該金銭債権5億円の現物出資でA種種類株式を発行する(真正DES)他、更なる資本増強のため、第8回新株予約権で金銭対価でA種種類株式を発行、第9回新株予約権でREVOLUTION社株式を現物出資してA種種類株式を発行、というスキームとなっています。
新株予約権については第9回(株式対価)を基本的には優先して行使、また、8-9回は債務超過が解消されるのに必要な範囲のみ行使する意向とのことです。なお、A種種類株式は、いわゆる無議決権優先株式です。
A種種類株式には、普通株式を対価とする取得請求権がなく、金銭対価の取得請求権はあるので、基本的には、EVO FUNDは対象会社に最終的に買い取ってもらうスキームを想定していると思われます。
なお、金銭取得の場合は払込金額相当×110%に加え、累積未払配当金(日本円TIBOR6か月+2.5%、複利)をフルッタフルッタ社は支払う、ということになります。

この後無事に当初の発行にかかる払込などがなされましたが、その後EVO FUNDが2億円弱の金銭債権を追加で銀行から取得したので、その分だけは現金対価の第8回新株予約権を行使し、その現金を用いて当該金銭債権を弁済するスキーム(疑似DES)に変更しました(リリース)。

第7回新株予約権からの流れや条件を見ているとなかなか厳しい交渉があったものと想定はされますが、結果としては、第9回新株予約権の行使もあったため、20/3期は債務超過が解消する見込みになったそうです(リリース)。

さてついでに、少し古いですが、金額が大きかった2015年のシャープの事例でも軽く見ておきましょう。
これは債権者であるみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行(nka 三菱UFJ銀行)に対してA種種類株式を計2,000億円(各1,000億円)発行する内容ですね。
同時にジャパン・インダストリアル・ソリューションズに対してB種種類株式を250億円発行していますが、性質がDESとは違う(成長分野への投資が目的となっている)ので、ここでは詳細には踏み込まないようにします(なお、シャープは2016年8月に300億円で買い戻しています[リリース])。

業績が落ち込む中でのDESなので、資金使途は当然銀行への債務返済となっており(各行1,000億円ずつ)、疑似DESとなっています。
A種種類株式は無議決権であり、優先配当は複利で累積し、日本円TIBOR6か月+2.5%の配当率が設定されています。
金銭を対価とする取得請求権も付されており、行使された場合には、払込金相当額×110%に加え、上記の累積未払配当金を支払うことになります。
この辺りは上記フルッタフルッタ社事例と同様ですが、違いとして、こちらには普通株式への転換請求権が付されています。累積配当がない前提で、希薄化率は最大で118.7%と、かなりの希薄化となります(なお、取得価額は株価に応じて定期的に変動)。

なお、今回の種類株式についてはデロイトに価値分析を依頼し、その結果等から総合的に「有利発行には該当しない」と判断がなされたものの、「念のため」有利発行の特別決議もとることにしています(前の記事で言及した通り、「念のため」事例も多い)。

さて周知のとおり2016年にはホンハイ傘下となったシャープですが、2018年6月に「資本財務再構築プラン」を公表し、A種種類株式の処理(両銀行から取得する方針)について言及しました。
公募増資などを通じて資金を取得し、その資金で種類株式を取得する、というものです。
金額は1,850億円となり、当初の予定の上乗せ金額による取得ではなく、払込金額から既払配当金額を控除する金額で改めて合意したそうです。

その後増資の決議も実際に行いましたが、6/5のプラン公表当初2,900円程度だった株価が、6/28には2,300円台まで下落してしまったため、29日にシャープはいったん計画を撤回しました。

その後も銀行との協議は継続した模様であり、2018年10月には改めてA種種類株式20万株のうち9.2万株について851億円で取得することが公表されました(20万株ベースでは1,850億円相当であり、同様に、払込金額から既払配当金額を控除した金額にすることで合意)。
更に続いて2019年6月、残る10.8万株についても、971億円で取得することが公表されました。なお、19/3期にA種種類株式には配当2.6万円/株があったため、その分だけ1株あたりの対価は減額となっています。

これをもって、2015年に発行したA種種類株式の処理は終了、ということになります。いやあ、やはり結構な期間がかかりましたね。

報道では「シャープ、経営再建完了へ(朝日)」「経営再建が事実上完了(産経)」といった論調が見られます。
危機の時にやむを得ず発行をした優先株式の処理が完了することが、「経営再建プロセスの完了」と言える条件、ということなのでしょう。

…ということで、やはりDES、困窮した企業に対して行われるものだけあって、その交渉やその後の処理等、なかなか大変な一面が垣間見れますね。
DESはここまでとします。

~ここまで過去の記事~

ではではまた。

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