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移りゆく景色  11 (連続短編小説)

ジンは、伊都と二人、
夜の公園にいた。

「なんで、こうなっちまうんだよ・・・」

朋明の通夜の帰り、
二人は呆然としていた。

朋明は、自宅で倒れているのを
奈緒に発見されて、
救急搬送されたが、
もう息はなかった。

先ほどの通夜で、花の中で
横たわる朋明は、
安堵したようにも見えた。
そして、その美しさに
朋明本来の姿を見た。

「あんなに眠るように・・・
トモが死んだのは、
オレのせいかな?」

朋明の亡骸にすがって
泣いていた奈緒が、
ジンの姿を見たとたん
その胸に飛び込んできた様子は
異様だった。

ジンは、朋明が一番嫌がっていた
シチュエーションを
亡き朋明の前で見せるのがイヤで、
冷たく奈緒を伊都の方におしやった。

伊都もそれを察して、
奈緒の体をしっかりと受け止めた。

「トモの言っていたことは
本当だったんだな。
辛かったんだな、
トモ、可哀そうに・・・」

ジンは夜の公園で、
人目もはばからず涙を流した。

伊都も、泣きながらうなずく。

「こんなに差し迫っていたことなら、
もっと早く真剣に考えてあげればよかった」

奈緒の取り乱した様子は、
ジンに近づけないことで、
ますます悪化した。

「死んだのは、トモだよ。
なんで奈緒さん、あんなにジンに
取りすがるの?
トモは毎日、あんな奈緒さんと
暮らしていたんだと思うと、
悲しいよ」

伊都の率直な言葉に、
さすがにジンも後悔した。

「オレが悪いんだ、奈緒さんや
トモの気持ちを理解しないで
いつまでもダラダラしてるから・・・」

「ジンがアキラさんに似てることが
悪いの?
そんなバカバカしい・・・!」

そういった伊都だが、
奈緒の様子に異常を感じた
ジンたちが早めに通夜を
切り上げようとしたときに
奈緒がつぶやいた言葉を思い出した。

「アキラさんだけの子なら
絶対自殺なんてしなかったのに。
私に似てしまったのよ、トモは」

奈緒の独白に、ジンも伊都も
叫び出しそうだった。

―トモを殺したのはアンタだ!-

さすがにそれは言えず、
通夜を後にした二人は、
葬儀にはいかないと決めていた。

これ以上、朋明に恥を
かかせるわけにはいかない。

ジンは伊都につぶやいた。

「オレさ、なんでアキラが奈緒さんを
選ばなかったのか、よくわかったよ」

伊都は、何度もうなづく。

ジンは腹の底から声を絞り出した。

「アキラのバカ野郎、
ちゃんとトモを迎えに来いよ」

                続

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