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「ルビーのなみだ」 1

ロンドンの中心にある
小さなアパートメント。

ローズは携帯を見て
大きなため息をついた。
妹ルビーからのメールで
スザナが、久しぶりに日本から
帰ってくるという。

スザナは、日本に渡って20年。
パパが倒れた時にも
ロンドンに帰ってこなかった。

大好きなパパが倒れたのは
17年前。
10年介護して、他界した。

その間、次女のスザナは
二度ほど帰国しただけ。

ローズとルビーが必死になって
ママを助けて、パパの介護に
奔走しているとき、スザナは
日本の大学の試験を受けていた。

パパが倒れて数年経って
やっと顔を出した。
自分の立場が安定したからだ。
後は危篤の時。
その頃には、なんと日本の大学で
物理を教える講師になっていた。
もともと頭がよかったスザナは
イギリスより日本で開花したようだ。

それっきり会ってないので、
ローズとしては、妹という気持ちで
スザナと接することに、違和感があった。

末っ子のルビーはとても家族思いで
やさしい子だ。
スザナを家族として見放しては
いけないと思っているのだろう。

ローズは、違った。
家族が一番困っているときに
自分のことだけをしていたスザナに
会いたいとは思わなかった。

(続く)




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