有終の美のあるべき姿〜Mリーグの最終戦を観戦して〜

先日幕を閉じたMリーグファイナル。最終節での村上選手の立ち回りが物議を醸している。風林火山を応援していた筆者にとっては村上選手の立ち回りはありがたいものでその選択が優勝を決定づけたことは間違いない。

まず、前提としては村上選手の最終節での一貫した姿勢に賛辞を送りたい。その一方で、サクラナイツ、アベマズのファンからは強いバッシングが起きたことは紛れもない事実であろう。


この状況下を他のプロスポーツに置き換えた時、一つのシーンを思い返した。それは、昨年の阪神タイガース、藤川球児投手の引退試合だ。かつてのスター選手の最終登板に対して既に優勝が決定していたジャイアンツの原監督は代打坂本を指名した。球場の誰もが藤川がストレート真っ向勝負で三振を取る姿を期待して観戦していたことだろう。そして、その期待通り坂本選手は空振り三振を喫した。

https://youtu.be/jTJPLfgWBfQ

側から見るとわざと三振しているように見える。ジャイアンツファンからすると、真剣にプレーしろと叱咤する人もいるであろう。しかし、ほとんどのプロ野球ファンがこの演出への粋な計らいと期待通り三振をした坂本選手に賛辞を送ったことは間違いない。恐らく、坂本選手の頭の中はこうだ。

「藤川球児投手を愛したファンと今日の引退試合を提供した阪神タイガースの関係者、藤川投手の最後の花道を盛大に盛り上げたい。」

これに応える方法はフルスイングで三振をすること。もちろん、巨人ファンも納得の行く結果であろう。

その一方で、全く同じ引退試合で反感をかった選手もいる。それは2005年に広島の大エースと言われた佐々岡投手の引退試合だ。当時、ホームラン王を争っていた横浜の村田選手が現役最後の佐々岡投手が投じた球をホームランしたのだ。

https://youtu.be/T24q50saZYg

これに対して広島のファンは大激怒。試合後、号泣して佐々岡投手に謝罪する村田選手の姿が非常に印象的なシーンだった。しかし、結果村田投手はこの年ホームラン王を獲得することになる。横浜ファンからしたら村田選手の個人タイトルの獲得は讃えられるべき結果と言えよう。

話を戻すが今回の村上選手の立ち回りはどうだろうか。もちろん、ごく一部のドリブンズファンの中には優勝の行方よりもドリブンズのファイナル初トップを見たかった、という意見もあっただろう。

しかし、Mリーグを観戦しているほとんどの麻雀ファンは3チームによる拮抗した優勝争い、そして麻雀ならではの条件戦を楽しみに観戦していたのでは無いだろうか。プロの世界では多くの人が関連している。

それは選手であったりその家族、ファン、そして何より大会を運営するスポンサー企業。時にはエゴを捨ててそういった周りの人達の意向に沿ったプレーをするのもプロフェショナルの流儀なのでは無いか。もちろん、麻雀において上がりを目指すことなくただベタオリをする姿というものは決して美しくない。ただ、時にはスター選手が意図をしない三振をすることが美しいと囚われる場面もあることは事実だ。

今回の南2局以降の村上選手の3回の上がり。個人タイトルの芽も無いあの場面で、果たして村上選手のホームランを期待していたファンはいるだろうか。

ほとんどのMリーグファンは他の3選手のバチバチの上がりを見たかったことに違いない。他の干渉を気にせず自分のエゴを貫いた村上選手もある意味プロフェショナルと言えるがオーラスを待たずしてチャンネルを切り替えたサクラナイツ、アベマズのファンが多くいることを決して忘れてはならない。

村上選手個人を批判するものでは無く、選手にその選択をさせたMリーグの関係者にこの事実を1番に伝えたいと思う。筋書きの無いドラマは周囲の環境が描かせるのだから。今後、さらに麻雀がプロスポーツとして認められオリンピック種目として発展する上では今回の物議は解決すべき大きな課題であることは間違い無いと言えるだろう。


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