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全日本笹山さんを酔い潰そうじゃない会 協会(3)  大横浜場所

2003.06.29 解説 加賀美牛親方

■第六回大横浜場所 於:桜木町酷技旅館

笹山さんと中洲川端芳子嬢

■2022年追記:この時は、横浜焼酎委員会さんが主催した『横浜焼酎大選集』という大イベントで多くの蔵元さんが集まった時の開催。笹山さんをはじめ、現ISLAND BREWERYの原田知征氏、小玉醸造の金丸潤平氏、渡邊酒造場の渡邊幸一朗氏も参加されて賑やかな場所となりました。

遠征先で興が乗ったというのもありますけど、私は翌日二日酔いで死んでた想い出がございます。当然、横綱・笹山さんは動かざること山の如しでございました。

私が知る範囲ではありますが、蔵元さんは不思議なもので、底なしザルな方とまったく飲めない方の落差が激しいと感じます。たしか原田氏は仕事柄味見程度はされるものの、ほとんど飲めなかったと記憶してますが。だから酒の商いに向いていらっしゃるのかな。私なんぞだとせいぜい落語「花見酒」が関の山で。

そーいや、本編に登場する中洲川端芳子嬢、いまも元気にされてらっしゃるでしょうか。


『笹酔会』ファンの皆様、こんにちは。

通算6場所目となります、『笹山さんを酔い潰そうじゃない会』の時間がやってまいりました。

ここで今日の取組の解説をしていただくのは、お馴染み、元序の口・牛蔵丸の加賀美牛親方です。親方、どうぞよろしくお願いいたします。

加賀美牛:ごっつあんです。よろしくお願いします。

というわけで今場所ですが、『本格焼酎大選集』の開催と併せて横浜で開催されることになりましたが、それに伴って出場力士も豪華ですねぇ。いかがですか、加賀美牛さん?

加賀美牛:はい。そうですね。

それでは今場所の番付ですが、まず東から。連戦連勝が続いております大横綱の笹山関に加えて、大関・金丸関関脇・原田関の初土俵、それに国分場所で手堅い飲み口を見せた関脇・渡邊関も出場するということですが・・・、『笹酔会』ファンには、まさに瞠目の場所と、言えそうですねぇ。

加賀美牛:ええ・・・金丸関は蔵元所属力士の中では、結構稽古を重ねてイケル口です。好取組が期待できますね。原田関は、典型的な蔵元所属力士で、盃突き出しの連続にはちょっと弱い。慎重な飲み口で場所に臨んでもらいたいものです、はい。

続きまして、西ですが・・・おお、今場所はついに正横綱2力士が登場ですか?!

加賀美牛:壮観ですね・・・あの、初めて笹山関に匹敵する酒量といいますか、を持った強豪が揃い踏みした・・・という、感じですか。

まず初土俵のニシタチ盛けんじ関ですが、親方はどうご覧になります?

加賀美牛:はい。そうですね。宮崎県出身でニシタチ部屋所属の飲み巧者ですが、連日、午前3時、4時まで部屋で稽古に励み過ぎていると聞きます。“土俵に金が埋まっている”とよく角打界で言われますが、土俵で金撒いているのはニシタチ盛関ならではの、まぁ持ち味といいましょうか。

なかなか“練習熱心”というか?

加賀美牛:いやぁ~、そこが酒相撲の難しいところで・・・いわゆる「心・技・体」という面からしますと、ニシタチ盛関の場合は“技にはやって、心体が疎か”になっているきらいがあると、いいますか。まぁ、肝臓が大丈夫かなぁと、心配しておるわけです。

続いて同じく初土俵の中洲川端芳子関ですが、今回初の女流力士の登場、注目されますね。

加賀美牛:芳子関は、福岡県出身まりりんbar部屋所属ですが、部屋の福田親方に鍛えられていますから、飲み飲ませの攻め守りは万全ですよ。芳子関の場合はあえてもの申すことはありません。まさに「心・技・体」、酒相撲三位一体の完全なる合一を見せる巧者です。

それになかなか美しいと申しますか・・・。

加賀美牛:加えるなら後は「美」ですか。「心・技・体・美」・・・取組前から腰砕けにさせられる危険性がありますから、ここは大横綱の笹山関にとっても気が抜けない相手と言えるでしょう。慎重な飲み口をお願いしたいところです。

次に、連続出場記録を伸ばしています牛之灘関ですが、今場所の展開は?

加賀美牛:先場所、先々場所と、盃突き出しの連発、「浴びて倒れ」という決まり手で負けが込んでいますが・・・ええ・・・もう少し自制心というか平常心を養って、前向きな取組を期待したいと思いますね。

親方、ありがとうございました。それでは取組をご覧いただきましょう。

時間一杯です・・・。

というわけで、取組開始から少々時間が経っていますが・・・各力士、見合ったままですねぇ? “待った”がかかったままですが?

加賀美牛:いつもの場所とは、展開が違いますね。

これはいったい、どうしたんでしょう?! 親方はどうご覧になります?

加賀美牛:笹山関以外の各力士、特に男性力士勢がペース配分を気にしている感じが、しますねぇ。やっぱりナニというか・・・。

ナニ、と申しますと?

加賀美牛:長丁場の体力勝負ですから、ここで突き出しを連発すると自滅する危険性が高い、ですよねえ。ま・・・他力士が自滅した時点で、笹山関がガブリ寄りで芳子関を“土俵外に持っていく”ことを警戒しているというか・・・

確かに牛之灘関も、いつものガブリ飲みが見られません。打って変わった慎重な飲み口ですからねぇ・・・。これは意外な展開になってきましたっ!

加賀美牛:いやぁ~、私も驚きました。角打ち界生活二十余年、初めてですね、こういう場所は・・・。

牛之灘関が立会を外して、行司の方を向いていますが。おっと! こりゃまた美人です!

加賀美牛:今日の行司で、店守伊之娘さんです。やはり横浜、『笹酔会』全体のレベルも高い、という感じですね。

さて、土俵に変化が出てきましたが。ニシタチ盛関が、段々と盃を突き出し始めましたね?

加賀美牛:蔵元勢は爽やか系揃いですから、これはそうそうに勝負を投げましたか。

土俵外に出て、のんびりタバコを吸っているようです。いや、これは驚きましたっ! それと、金丸、渡邊、原田の三力士ですが、原田関にだいぶ疲れが見え始めた感じがしますが。いかがでしょう?

加賀美牛:原田関は、盃一杯がほとんど限界と言っていいと思います。ここはひとつ、一歩引いて長丁場に備えてもらいたいと思いますね。

というわけで意外な展開のままですが、中入りとなります。

中入り

さて、中入り後の取組ですが、同じ桜木町の別の小酷技館が土俵となりました。さて、親方。ニシタチ盛関ですが、相当疲れが出ているという感じです・・・が?

加賀美牛:まぁ・・・さすがにここに来て、連日連夜の稽古の疲れが出たようですね。

それにしても、芳子関、飲ませ巧者ですねぇ。

加賀美牛:やはり、まりりん部屋所属の強みですか。侮れません。

おっと! ここに来て芳子関、終電の時間が来たということで、土俵外に出るようですが・・・。また場所の流れが変わりそうですね?

加賀美牛:泣く子と終電には勝てぬ、と申しますから、致し方ないでしょう。

お! 芳子関が立ち上がったら、金丸関も立ち上がりました! いったいこれはどーしたか??? 金丸関、笹山関に挨拶をしていますが!? 「もう酔って限界」との声明を出しています。金丸関、土俵を割るか? 金丸関、土俵を割るのか????

ああ! 金丸関、芳子関と一緒に土俵外に出ました!!!!! 駅まで見送りに行く、ということですが?! 土俵にたいへん異常な緊張が走っています!!!!!! 驚きました!

加賀美牛:こういう展開は、これまでに見たことがありませんよ。

あああ! 今度は牛之灘関が立ち上がりました!! 牛之灘関、一体どうしようというのか??? 牛之灘関、なにかニシタチ盛関に耳打ちしているようです・・・。おっとぉ!!笹山関になにも断らず、突然土俵を割るようです!! 玄関口に向かっています!!! 割るのか?! 土俵を割るのか?! あ!!、酷技館を後にしました!!! これはイケマセン!!!! 無断の途中休場! 前代未聞です!!!

加賀美牛:まさか、芳子関を追いかけていったとか? いけませんねぇ、土俵を割るとは!

本当に驚きました!!! 『笹酔会』史上でも初めてですね、こういう出来事は・・・。

加賀美牛:私も驚きましたよ。こんなことがあるんですねぇ・・・。あ、物言いですか? 当然でしょう。

いま、審判から物言いが付いたようです。審議です。親方がおっしゃるとおり、当然でしょうね。判定が下りるまでしばらくお待ち下さい・・・。



15分後


いま判定が決まったとのことで、こば之山「笹酔会」協会会長のアナウンスがもうすぐ始まるそうです。

「ええ・・・この度のぉ・・・大横浜場所におきますぅ・・・牛之灘関の無断途中休場につきましてぇ・・・協会で審議した・・・結果ぁ・・牛之灘関にぃ・・・出場停止3カ月のぉ・・・裁定がぁ・・下りましたぁ・・・・・・・・追伸:芳子関。回りの力士に気を付けろ」

最後の追伸が意味不明ですが、これはまた牛之灘関、今後の力士人生に影響するかもしれない、大変なことを起こしてしまいましたねぇ、これは・・・。

加賀美牛:いやぁ、こういう展開になるとは思いもしませんでした。牛之灘関には猛省を促したいですね。

というわけで、今場所の星取り表です。

笹山関・渡邊関・原田関と芳子嬢、終電押し出しで芳子嬢の負け
笹山関・渡邊関・原田関と金丸関、終電押し出しに吊り出されて金丸関の負け
笹山関・渡邊関・原田関とニシタチ盛、浴びて倒れてニシタチ盛の負け
笹山関・渡邊関・原田関と牛之灘、無断途中休場で牛之灘、処分

午後9時00分から午前2時まで続いた激闘でしたが、笹山関がさすがの横綱相撲、そして渡邊関・原田関はペース配分の巧みな落ちついた飲み口で勝利。

しかし、金丸関の「終電押し出しに吊り出され」という決まり手での黒星は、東にとってはちょっと惜しかったですね。しかし横綱・笹山関は、これまでの通算成績を、

【6戦6勝無敗】

とさらに伸ばしています。それにしても、牛之灘関の突然の無断途中休場という前代未聞の出来事もありまして、本当に波乱の場所、と言っていいかと思いますが。加賀美牛親方、今場所を総括していかがですか?

加賀美牛:笹山関の安定した飲み口を見てますと、やはり「心・技・体」の調和が取れた飲み口が完成されていると思います。それにしても、牛之灘関の今回の一件は本当に残念です。やはり心の修行も・・・ええ・・・しっかりと行っていただきたいと思いますね。

というわけで、今日の解説は加賀美牛親方でした、ありがとうございました。

加賀美牛:ごっつあんです。

また次回「笹酔会ダイジェスト」をお楽しみに。


(了)

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