見出し画像

米を喰え!<パックご飯をトレジャーハントする> (6)さとうのごはん『銀シャリ』

1.サトウのごはん『銀シャリ』のスペック

価格:499円(某地場ディスカウンター) 1個当り@99.8円
容量:200g×5
製造・販売:サトウ食品株式会社 新潟県新潟市東区
商品特長:国産米100%、日本銘柄米おすすめブレンド 厚釜炊き
加熱時間:レンジの場合、1食分500w・600wで2分

200gパック5個のバンドル商材。これまで入手したサトウ食品株式会社8アイテムの中では、@が99.8円と最も低価格だ。

原料米は国産、「日本銘柄米おすすめブレンド」となっていて、トレーサビリティの点では致し方無し。そこんところが値頃感優先の普及品ならでは。

気になるのは、業界トップの「サトウのごはん」でしかも200g容量で100円を切るロープライスでありながら、本品を定番にしていたのは量販14店中1店の地場ディスカウンターのみだったという点である。

※この稿を公開した後の午後4時過ぎ、比較的近場ながら足を運んでいなかった西友系元地場スーパー(15店目)を覗いたところ、本品が5パック517円で3フェイスの棚で手前にはみ出さんばかりに詰め込まれていた。2店目の店頭化店を発見したわけだが、しかし本品隣に同社の『新潟産コシヒカリ(200g×5パック)』が3フェイス分の棚を取って特売472円で売り出し中。棚はすでに空っぽだった。そりゃ、価格安けりゃ新潟コシを買うよなあ。

全国およびローカル大手のチェーンでは、「ウーケ」か「テーブルマーク」ブランドの廉価商材か、その2社によるPBのOEM商品が多く棚を押さえている。そのため「サトウのごはん」については、中間価格帯の「こしひかり小盛り」やご当地米物など@120〜130円ラインの商材が導入はされているが、ロープライス品は棚に割り込むことが値頃的に難しいのだと見た。

さて、サトウのごはんの一般レギュラー商品『銀シャリ』を喰ってみる。

2.厚釜炊きながら、外観はスッキリとしてやや蒸気炊飯風。

規定の時間でレンチンして、蓋をむしり取ってみた。自分として意外に思ったのは、厚釜炊きの炊飯でありながら、ごはん粒の輪郭は比較的スッキリとしており、保水膜の形成が薄いという見た目である。

試食1回目
試食2回目

また同社や他社の『魚沼産こしひかり』といった銘柄米と比べると、粘り気やごはん粒同士のくっつき具合、テカリ具合なども、廉価版の蒸気炊飯商品に近いルックスなのだ。

個人的関心として、これまで「炊き」と「蒸し」の製法による差異はどこにあるのかと注視はしていたのだが、他のファクターもちゃんと目配せしないといけないようだ。

つまり、原料米の品種、貯蔵期間(新米・古米・古々米)、原料米の水分、浸漬時間などなど。特にブレンド米商材は価格勝負の要素が強く、コスト低減のために新米ではない可能性が高い。

シャリ切り後1回目
シャリ切り後2回目
同社『魚沼産こしひかり』のシャリ切り後のアップ

シャリ切り後のごはん粒については、同社の製品『魚沼産こしひかり』の画像を並べてみた。他社のこしひかり商品も食べているのだが、家内曰く「どのこしひかりも炊きが柔らかい」と感想は共通していた。

今は管理が徹底されて米の水分量は全国的に均質とされるが、かつては東北・北陸・北海道の北国で穫れるお米は、乾燥時期の気候が湿潤なことから水分量が多くて”軟質米”と言われていた。中でも「こしひかり」は水分が豊富でふっくらと炊き上がる粘りのある軟質米とされていたそうな。

また原料米自体の水分量や浸漬時の吸水率・量も、品種や貯蔵期間によって変わってくる。古米、古々米と貯蔵が長くなるに連れ、米粒の表層部から水分が失われて、炊くと硬く粘りの少ないごはんとなるようだ。

◇   ◇   ◇

米の貯蔵期間と吸水率、精米歩合、炊き上がりの違いについては、『貯蔵期間の異なる米の掲精歩合と浸水時間の相違が炊飯に及ぼす影響について』(井上タツ・鈴木裕、1986)という論文があって、新米・古米・古々米の搗き具合によって吸水率の時間と割合に差が生じることがわかる。

1)米 粒の吸水率

水温15℃での吸水、貯蔵期間のことなる92%搗精米の吸水率は、図2の如く新米は30分間で急速に吸水し、2時間後の80%以上を吸って60分後は吸水経過は緩慢となり、古米、古々米となる程吸水しにくく最大吸水率も新米にくらべて低く、2時間後も徐々に上昇している。古々米の揚精精度を高めた80%、60%精米の吸水率は、新米よりも高く、10分間における吸水が著しくなっている。

『貯蔵期間の異なる米の掲精歩合と浸水時間の相違が炊飯に及ぼす影響について』
『貯蔵期間の異なる米の掲精歩合と浸水時間の相違が炊飯に及ぼす影響について』
(原典81P 「1)米粒の吸水率」図2)

また、貯蔵の温度や期間によって酸化が促進されて食味の劣化、古米化現象を招く「脂肪酸」は、米の外層部分に多く含まれている。ゆえに古米、古々米であっても精米歩合を高めて外層部を磨くことにより、食味が戻るとしている。

2)米の脂肪酸度
古米化に従って急激に脂肪酸度が増加している。揚精度を高めて80%精米にすると脂肪酸度は低下し、新米と略々同じ数値になる。60%精米では新米より低い値となる。搗精度を高めることにより、脂肪は極端に減少しており、貝沼氏の考察のように古米化現象は表面でおこり易いと考えられる。 官能的にも, 80%精米は、古々米の性質を示さなくなる理由の一つがここにあると云える。

『貯蔵期間の異なる米の掲精歩合と浸水時間の相違が炊飯に及ぼす影響について』

以下、あくまでも個人的な意見なのだが、

ブレンド商材の原料に古米や古々米が使用されているとしたら、冷蔵保存で管理が徹底されているとしても、食味をリフトアップするためには外層部を削ることが必要となるのではないか。しかし削れば削るほど原料の歩留まりは悪くなり、コスト高となって売価に跳ね返る。

レギュラー商材としての量目の多さと売価との見合いで、どこに着地点を見いだすのか。そこが各社の腕と体力の差と想像している。

3.及第点。ブレンド米パックとして満足できる味わい。

本品については5パックバンドルのうち、私が3パックを、家内が1パックを食べた。

三度噛みしめてみて思うのは、風味や粘りなども問題なく、ブレンド仕様の比較的廉価な商材としてQualityも十分だと思う。家内も食べて美味しいと思ったようで間違いはなさそうだ。

ちなみに、私は家で食べる米については基本、銘柄米にしろブレンド米にしろ”米穀卸・販社”経由の商品は買わないことにしている。

いまはそういうことは無いと思うのだけど。母がよく言っていたが、かつて米屋は食味の違いに気づかれない様に銘柄米に違うノンブランド米を混ぜ、その量目から生まれる利ざやの多さが腕の見せ所だった、と。

だからうちでは、スーパーなどで精米済みの袋入りで積まれている米は買わない。地元JAの直売店で玄米として店頭に置いている、価格もそこそこの銘柄をその場で精米して買っている。

まあ、お米に対してそんな”古い偏見”を持っている者からしても、この『銀シャリ』は身近なプライスゾーンの商品として、選択肢のひとつとして挙げられるものだと思う。

(了)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?