宮崎蔵元アーカイブズ 2002〜07(4) 川越酒造場再び
■殊勲!全日空国際線ファーストクラスでの販売なった『川越』。
今回の宮崎deep焼酎行、まず最初は7月にお邪魔した川越酒造場さんの再訪である。
この行程は、参加予定だったSASANABAさんが前回川越さんにはお邪魔できなかったために、けんじさんが配慮したものであった。彼は九州大学農学部出の川越義博社長、そして科学者であるSASANABAさん両者による学術的焼酎対談を狙っていたのである。
ところが残念なことに休場(注:この時SASANABA氏はご息女の急病で欠席)というわけで、蔵元美女にファインダーを合わせることしか念頭に無いわてを伴って、腹を括って飛び込むことにしたようだ。
さて、事務所には川越社長、そして奥様の龍子さんがいらした。
前半、まず最初の話題は、全日空の国際線ファーストクラスで機内販売されることとなった『川越』である。その話は以前けんじさんから伺っていたが「ほんに良かこと」とわてらも喜んでいた。
大手航空会社の機内販売には、そうそう簡単に載っかるものではない。厳しい社内審査を幾重にも経て決定されるとのこと。今回の搭載については川越さんはまったく寝耳に水だったそうだ。全日空サイドからオファーがあり、こんな小さな蔵の商品が本当に選ばれるのだろうかと、最初は半信半疑だったといふ。とにかくサンプルを送ってみたそうである。
そして、正式決定の吉報が飛び込んできたのだった。その掲載誌が眼前にある。
機内誌は2種類あって、本誌とも言うべき『翼の王国』11月号、そして機内販売のカタログ誌である。それぞれに『川越』が掲載されていた。特に阿部真理子氏の筆と絵になる『翼の王国』記事は、読み物としても面白い。
とにもかくにも、まず「宮崎の芋焼酎」というデカイ表題が、うれしいじゃぁないか!
そう話している間に、電話が続々と掛かってくる。龍子さんが受話器を取る。酒販店さんからの『川越』の注文だ。機内誌掲載によってさらに人気が高まった事が解る。しかし、品数は限られている。来年初頭まで供給は逼迫しているようだ。
今度は寡黙な社長がそっと口を開いた。
見れば、事務所奧の本棚にあの前山光則先生の本が20冊近く並んでいる。
殊勲の全日空国際線ファーストクラス搭載は、宮崎焼酎全体にとっても大きなエポックであると信じる。今回の出来事を素直に喜ばれる龍子さんの姿は、とても清々しかった。良かったと、わてらも心の底から思った。
■気になる設備関係をじっくりと拝見する。
さて。けんじさんの目論見とは別に、わて自身も再訪させていただく目的を持っていた。ひとつは跡を継がれる二十代目の雅博氏にお会いして抱負を伺うこと。そしてもうひとつは、老朽化した設備を再度確認させていただくことである。
残念ながら雅博氏は外出中ということで、不在。そこで社長のご案内で設備を拝見することとした。
現在社長が新たに取り組まれているある製品の貯蔵タンクを拝見した後、老朽化の著しい機器や設備について案内していただき、説明を伺ったのだった。
ん~~~~ん、国連の査察団やないっちゅーに(^_^;)
特に懸案となっているのが、まずボイラーや自動製麹機といふ。ボイラーは耐用年数の20年を大幅に繰り越しているし、自動製麹機も同じく7年を遙かに過ぎている。どちらも定期的なメンテナンスを繰り返しながら、騙し騙し使っているのが現状だ。
その他にも古くなった煙突や建屋の改修や、タンクの増設も課題となっている。
装置産業としての焼酎造りの現実と、次代の蔵への想いが交差した社長の言であった。
というわけで、長っ尻は禁物。そろそろお暇する時間となった・・・。
■ご長女誕生記念の古酒に、親心をさらに垣間見る。
ふとそこで思い出したのが、新製品の『川越』30年物古酒。実際に拝見させていただく。本当は31年物なのだが、1年くらい良いだろうとキリ良くしたそうだ。お嬢さんの誕生年に仕込んだものを社長が大切に取っておかれたという。
冗談めかしに製品の経緯について語る社長だが、やはりそこは親心。息子さんの誕生年に仕込んだものもあるということだ。大切に貯蔵されていたんだなぁ~。
◇ ◇ ◇
今後操縦桿を握られるであろう息子さんが戻られて一安心、加えて全日空のジェット噴流でさらなる上昇への推力が付いた川越さん。しかし、次代への安定飛行には、親としてまだまだ心を砕かねばならないことがあるようだ。
一ファンとして、川越さんが積乱雲を見事突っ切って、成層圏にまで達していただきたいと祈っております。川越さんのためにも、そして宮崎焼酎のためにも・・・。
(了)
■2022年追記:この機内誌掲載の反響は大きく、お邪魔してるときに机の上の電話が鳴りっぱなしだったのは鮮明に覚えています。レガシーメディアの効き具合、現在のネットとSNS状況を思うと、昔日の感あり、です。
でも、記事に出たからと電話してきて唐突に取引を迫るのを横で聞いていると、あまり気分が良いものでは無かったすね。今まで苦しい時に応援してきた方々がいらっしゃるわけで。そういう信頼が大事なんだなと歳取って改めて思います。
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