事業承継と中小企業診断士

ここ数年、事業承継問題はテレビも含めたメディアでも大きく取り上げられ、日本の深刻な社会問題として世間にも認識され始めてきた。
会社勤めの私ですら、後継者がおらずに会社をたたもうと思っているという話を、経営者から直接聞く機会が何度もあった。

何故そうしなければならなくなるまでに至ってしまったのか、私は考えた。
「私は病気で動けなくなるまで社長をやる、その後のことは知らない」という意識の経営者が一定数いることは否めない。
その意識を変えるのは並大抵のことではないが、それ以外の
<どう準備していいのかわからなかった>
<準備に時間がかかるとは知らず、その時にはどうにもならなくなってしまった>
<病気や事故により、その時が突然訪れてしまった>
といったケースは、私でも何か力になれることがありそうだと思った。
だから本を読んだりマスターコースに行ったりしてみた。

約3年前、人口5万人に満たない私の地元のとある経営者が、「身近な機関に相談すると、どこからか相談しに行ったことが漏れ、あの人は病気なんじゃないかとか、倒産しそうなんじゃないかとか、良からぬ噂を立てられるから相談したくてもできない」と言っていた。
あれから時間は経過し、事業承継問題をメディアで目にする機会が多くなってきた。社会的な問題と捉えられ始めた今、悩みを抱えた経営者は、以前よりはオープンに相談しやすくなったのではないかと思う。新聞を読めば商工会や金融機関は事業承継支援にかなり力を入れて取り組んでいるのがわかる。
相談しやすくなり窓口は増えたのだろうが、果たして、経営者は誰に相談すべきなのであろうか。

事業承継は手段であって目的ではない。
M&Aは言うに及ばないが、たとえ親族承継であったとしても組織に大きな変化をもたらすため、引き継げたらゴールとするには不具合が多すぎる。企業永続にとっては引き継ぎ後が重要で、事業承継によって対内的・対外的に発生しうるマイナスの変化を防ぎつつ、将来に向かってプラスの変化を推進していく必要がある。それこそ、中小企業診断士の得意分野ではないか。私は中小企業診断士が事業承継の相談窓口となり、準備から事業承継後までコーディネートし、伴走支援することが望ましいと考える。

事業承継を専門分野としたいのであれば、覚悟を持ち、知識を得て、経験を積むしかない。
あとは、どうやって事業承継を考えている人に到達するか。

(事例)
①…M&A、PMIうまくいかず、経営陣入れ替え
②…突然死による親族承継、株式分散
③…親族外承継、創業一族強く多額の資金必要

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