見出し画像

20240610 心根がマッチョ

先日自分がつくった作品の感想の中に「マッチョ」という言葉があるのを見つけて、しばらく考え続けていた。まあそうだよなという気持ちもありつつ、その言葉をどう受け取っていいのか、そしてそのマッチョという事実をなんとも微妙な気持ちで受け取っている自分自身というものについて、しばらく考えないわけにはいかなかった。

▼今この世の中でマッチョというのは、基本的にはネガティブな響きをもつのだと思っている。マッチョであるということ自体がそもそも時代に逆行しているし、なんというか時代錯誤というか退廃的なイメージすらある。自分自身もまた、「あの人は結構マッチョな部分がある」という風に会話の中で「マッチョ」という言葉を使うとき、それがどのようなジェンダーの相手であれどこかしら「なりふり構わず相手をぶん回す」といったような暴力性をすこし頭に思い浮かべながら使っている自覚があるからだ。

▼今この瞬間に、シスジェンダーの男性であるというだけで既に暴力的、といったら多少言い過ぎではあるかもしれないけれども、それくらいの意味があると思っている。これまでに男性であるというだけで私はいろんな特権を得て来ているし、男性であるというだけで暴力的な存在でありうるし、男性であるというだけで誰かの足を踏んづけている、と思っている。

▼自分の団体が男性だけで構成されている、というのは、今となってはほとんど偶然なのだった。なぜ同期の、自分と異なるジェンダーの人に声をかけなかったのかということについては、単にそのとき「一緒に演劇をやろう!」と声を掛けられる、コミュニケーションコストが低かったのが男友達だった、ということ以外にうまく説明ができない。これまでに女性に出演してもらったこともあるし、スタッフにも女性はたくさんいたし、もちろん観客の方にも女性の方々は多くいらっしゃるけれども自分のカンパニーの創作における構成員が(ほぼ)シスジェンダーの男性だけ、というのは確かに今この瞬間に結構不適切なことだよな、と思ってはいる。

▼同質性が高い分、ちょっと油断すればすぐホモソーシャルの具現化みたいな集まりになりうるし、どれだけ私が「気をつけていますよ」といっても端から見える結果だけ見れば男性だけなのだし、どのようにも言い逃れができない。しかも私たちは肉体的にも演劇の手法的にもそれなりに意識的に”鍛えて”しまっているから、そうした”マッチョな”イメージというのは払拭しようがないと思っている。

▼なんというか、マッチョであるというイメージをきちんと引き受けた上で、今この時代に男性であるということを引き受けた上で、バランスを取るにはどうしたらいいのだろうということを切実に考えている。たぶんどれだけバランスをとって、たとえば俳優の数を男女同数にしたり、カンパニーの意思決定に参加できる位相に女性に参加してもらったとて、私が私である限り、このカンパニーはマッチョであり続ける。そこが、苦しい。「そもそもマッチョな奴が演劇なんかやるなや」という声も、なんだか聞こえる気がする。

▼なけなしの筋繊維も、本番にかけての数週間でコルチゾールに食われてしまったのだった(≒筋肉量が少なくなってしまった)。もうちょっと筋量が残っていたら、もう少し強気で考えられたのかもしれないが、マッチョというイメージとは裏腹に本番が近くなると食事もろくに取れずジムにも通えなかったので、減ってしまった筋量を嘆きながらどうにもうじうじと考え続けてしまっている。マッチョな男性が演劇をやるとして、どんな演劇をやったら納得してもらえるのだろう、ということを、まあしばらく考え続けてみようと思っている。

*****
◆日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき、資金調達が無事に終了しました。ありがとうございました!!
【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

◆本日もご清覧頂きありがとうございます。もしなにかしら興味深く感じていただけたら、ハートをタップして頂けると毎日書き続けるはげみになります!
◆私が主宰する劇団、平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co . では向こう10年の目標を支えて頂くためのメンバーシップ「かえるのおたま」(月額500円)をはじめました。
メンバーシップ限定のコンテンツも多数お届け予定です。ワンコインでぜひ、新宿から世界へと繋がる私たちの演劇活動を応援していただければ幸いです。
→詳しくはこちらから。https://note.com/hiraoyogihonten/n/n04f50b3d02ce
◆コメント欄も開放しています。気になることやご感想、ご質問などありましたらお気軽にコメント頂けると、とても励みになります。どうぞご自由にご利用ください。

平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02czx9t72zj31.html
【公演詳細】
https://hiraoyogihonten.com/2024/02/24/hiraoyogi8th_info/

ここから先は

0字

かえるのおたま

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?