20240705『若き日』セルフライナーノーツ⑩
Photo by Mikio Kitahara
ふと思い立って先の公演のセルフライナーノーツを書いてみようと思った。私たちの『若き日の詩人たちの肖像』は上演時間60分の作品で、オープニングとエンディングを合わせて20のシーンからなる。リハーサルではひとつひとつのテクストを俳優たち自身で選定し、シーンを立ち上げていった。私たちの創作はどことなく音楽のアルバムを作るときのそれに似ているような気がして、せっかくなのでセルフライナーノーツとして、覚えている限りでその過程を書き留めておければと思った。
「11 学生狩り」は昨年（2023年6月）の第一期の創作の時にはもうそのタネみたいなものができていて、オープンリハーサルでもデモンストレーションをしたりしていた。元々稽古場でやっていた遊びのようなことから人を入れ替えたりしながらすこしずつ展開させていった。
▼元はと言えば「気配斬り」という、YouTubeなどに転がっているなんてことのない遊びが原型となっていて、気配斬りだと互いに目隠しをして斬り合うところを鬼だけ目隠しをする格好にした。そうして一人だけが鬼になった時にどうすれば元のスリリングさ、見る方もやっている方もハラハラする感じを残せるだろうかということから逆算してルールを決めていった。
▼考えてみると平泳ぎ本店の創作の場合、シーンを立ち上げ、つくっていくときに外形的なイメージからつくっていくことができる場合もあれば、ルールというかプログラムみたいなものを「ああでもない、こうでもない」と言いながら考えていることが多い。ルールに瑕疵があるとシーンがうまく走らなくなる（バグが出る）のでその都度何がよくなかったのかを検討してルールを更新していったりする。
▼ルール（コード）さえうまく書ければ、シーン（プログラム）はうまく走ってくれて、自動生成のAIみたいに舞台上の上演は（わずかな時間だけれど）進行してくれる。俳優はというとその与えられたルールを考え実行することと同時に、いかに合理的に逸脱していくかを考えている。
▼つかこうへいさんの作品で安保運動のデモ隊の振り回していた角材を表す小道具として新聞紙を丸めたものが使われることがあって、今回使用していたウレタンの棒はそのオマージュでもある。この棒と鬼がつけていたアイマスクは小道具のNichecraft辻本さんの作で、プロ野球のバット職人よろしく鬼のスイングから逆算してグリップの感じと振り心地ともに微細な調整が重ねられていた。
▼語られているテクストの内容からして国家権力の持っている暴力性やそれがほとんど個々の違いを認識しようとせず盲目的ですらあること、そしてそのお互いの立場の違いというのはただ偶然でしかないこと、を考えながらこのシーンを上演していた。犀の角で上演していたとき、上田の商店街の路上で目隠しをつけて棒を一振りしたときに「ああ、このシーンはこうすればいいのか」ということがはっきりとわかったりした。再演があるなら、もっとよくしたいと思っていたりする。
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平泳ぎ本店／Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日（金）ー19日（日）
各日18時30分開演（17時45分受付開始・開場）
※雨天決行
於：戸山公園（箱根山地区）陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02czx9t72zj31.html
【公演詳細】
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