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六枚道場感想 第六回 DからG

引き続き感想を書いてみます。個人的な感想ですので、その点をお含みおきいただければ幸いです。

グループDはこちら

「こいぬ座の教え」

星座の話から始まって、よもやこんな結末になるとは、と唸り、でも確かにこいぬ座の教えだなあと納得します。するのですが。主人公はなぜ自分を三等星と決めてかかったのか釈然としません。地方で育ったらそういうもの、なんでしょうか? だとしても、その背景が知りたいところです。それともう一つ、一等星、三等星というのは便宜上の名前ですから、実際は違っていても面白いでしょう。悲鳴は連絡が取れなくなった颯太に対してあげられたものだった(=露出狂はもう一人いた)、とか。

「膨張」

綿花の摘み取りって珍しいな、というのが最初に思ったことでした。みかんとかトウモロコシとか、野菜果物はよく登場すると思いますが綿花は、自分が知らないだけかもしれないけど見たことがなかったので興味をそそられました。膨張は思春期の自意識とか、欲望とか、そういった諸々を指しているのでしょうか。少女の影がとても抒情的でよかったです。

「日本三大〇〇認定評議会」

珍味とか奇祭とか、三大なんとかを認定する評議会の前口上。却下されちゃったおじさんとか、そんなんあり?と思わせる薬師とか、いろいろあって面白かったです。元祖〇〇認定評議会、本家〇〇認定評議会みたいに、元祖と本家が争うような個所があっても面白かったかもしれません。


グループEはこちら

「無題」

小説と日記の違い、考え出すと面白いですね。自分以外が読むかも、と思って書けば小説なんでしょうか。自分しか読まないとしても、年月が経ったあとなら小説として読めるかもしれません。小説なのか日記なのか、事実か創作か、判然としないところがよかったと思います。

「楽園」

何回やり直しても同じ結果になるのだけれど、やり直さない選択肢はない。何かを変えるとしたら何を変えるべきなのでしょう。クローンを作らない? 地球を脱出しない? 遠くない未来に人類が直面するかもしれない事態を描いていて興味深かったです。

「マニッシュ•ボーイ」

コミュニティの果たす役割について、子供の目から描いた作品として読みました。自分たちへのこのような扱いは許さないとする大人たちの態度、武器を持って出かける様子、そこから子供は何を学ぶのか。時代劇の仇討ちを思い起こしました。誰かの仇討ちは、また誰かの仇討ちを招く。止める手段はないものか、と問いかけているようです。


グループFはこちら

「贅沢なキッチン」

新しい日常を描いた作品。以前は自分のために揚げ物をすることなんてなかったけど、今は豚肉を使い切るために揚げ物をしている。そもそも、以前は四枚入りパックを買うこともなかったのでは? このところの自粛や何かで窮屈さを感じることも多かったけれど、窮屈と感じるかどうか、自由を見出すかどうかも自分次第なのだと、はっきりとした希望を感じました。

「さっき見た夢」

夢の中で行う作業が次々変わったり、一緒に作業する人が入れ替わったり、行った場所が全然違うところになったり、まさに夢ならでは。辻褄が合っているんだか合っていないんだか、よくわかりません。でもそこが面白いんですよね。楽しく読ませていただきました。

「占い探し」

自分が覚えていたのと実際の歌詞が全然違ってた、というのがメインのエピソード。その見せ方も良いし、そこだけが突出した(目立った)感じにならないのがとてもよかったと思います。この二人の関係も良いですね。いつまで食べたらなくなるんだ、と思う大量の料理、というかデカ盛りの丼もの。読んでるだけで胸焼けしました。ゆずシャーベット食べたい!(笑)

「ささやかな祝祭」

終わり方が素晴らしかったです。この展開からこの結末?と驚きはしたものの、よくよく読めば確かにそうなるなあ、と納得するのでした。そして思ったのは、人が行動や考えを変えるのって案外、自分がその方がいいと思ったからだよね、ということ。他人からの影響は、実はそんなに大きくないのかもしれません。


グループGはこちら

「四句八句」

生きていくのは簡単じゃないなあ、と改めて思いました。虫は体内のいろいろなところに潜んでいて、それこそ虫の居所が悪ければとんでもないトラブルにも発展します。肥大する自意識は手に余り、自分で自分をどう扱ったらいいのかわからない。この作品群には、ままならない気持ちが表れているように感じました。

「キスをする双子」

表題作には、子供の世界と大人の世界の違いを思いました。子供たちが純粋な気持ちでやっていることでも、大人の目から見ればやめさせるべきことだったりする。大人もかつて子供だったのに、昔の気持ちを忘れてしまいます。子供のまま大人になることはできないのです。読む人の気持ちを波立たせる「さざなみ」、閉まると怪しいのボタンがあるエレベーター乗ってみたい!と思った「あやしいのボタン」など、印象に残る作品でした。

「腕たち」

腕だけになった父と母がとても愛らしい。「私」は加害者なのかもしれないけど、父母を見つめる視線は温かく、二人への愛情を感じます。(彼が腕になったのも「私」のせい?)やがて自分も腕だけになり、腕だけになったみんなで生きていきます。腕だけになることは体を失うことではなく、新たな生を享けることなのかもしれません。だとしたら「私」は加害者ではないのかも? どんな境遇でも、どう捉えるかは自分次第、そう言われているように感じました。


    §§§

以上で第六回の感想を終わります。投票できるのは公開から一週間なのですが、またしても投票しそびれました。毎回投票する気持ちはあるんです! 

今回は新たな日常を探る、あるいは構築するような作品が多かった印象です。新しい日常を送ろう、という気持ちの表れなんでしょうか。これからも楽しみにしています!


🐜おしまい🐜

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