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最低賃金引き上げは人手不足を加速させる

2021年度の最低賃金が出揃い、引き上げ額は過去最高の28円、全国の加重平均の時給額は930円となります。最低賃金は安倍晋三前内閣のもとで 2016 年度から積極的に引き上げられたこともあり、2012年の749円から10年足らずで181円も上昇しています。

最低賃金が上がることで企業の人件費が上がり、経営を圧迫する要因になりますが、実は人件費以外の部分でも最低賃金の引き上げは企業経営に影響を与えます。それは何かというと人手不足の加速です。

最低賃金の引き上げと人手不足がどう関係するの?と思われるかもしれませんが、その理由は俗にいう「103万円の壁」です。サラリーマンの夫がいる妻が仕事をする場合、扶養の範囲を超えないように多くの場合年収103万円を超えないように働きます。
税制上は103万円を超えても世帯の手取り所得が減少しないような仕組みにはなっていますが、夫が勤める企業で103万円などを基準に家族手当が支給されることが多く、それが実質的な「壁」を作っています。
この「壁」は税金以外に社会保険など色々な要素があり、103万、106万、130万、150万円など色々な壁がありますが、よく分からないから取り敢えず103万円を超えないように働くという方が多いです。

最低賃金が上がっても、この壁の金額は以前と変わらないので扶養の範囲で働きたいと考えるパートタイマーが働ける時間は短くなります。

計算してみると、2021年度は2012年度と比較して上限に達するまでの労働時間は約2割(267時間)も減っています。そのため、同じ量の仕事をこなすためにより多くの人を確保する必要があります。

2012年度:103万円÷749円≒1375時間
2021年度:103万円÷930円≒1108時間

コロナ禍の影響で有効求人倍率は下がったとは言え、2021年7月においても1.15倍と1倍を超える水準は続いており、建設業界や物流業界、介護業界などでは依然として人手不足が大きな経営課題となっています。

最低賃金を上げること自体は別に反対するつもりは全くありませんが、中小企業の現場の実情を考えれば、この「壁」の上限についても考えて欲しいものです。

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