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「ズレた時計とイノベーション」

 前回のコラムでイノベーションのことについて触れました。このような変化の激しい環境下で企業としていかに環境に合わせて変化するかが企業の成長、場合によっては存続を左右することがあります。

 これまで様々な会社を見てきましたがイノベーションが起きやすい会社と起きにくい会社があります。変わることも変わらないことも習慣のようなもので、変わることが当たり前の会社ではちょっとした変化がすぐに起きますし、変わらないことが当たり前の会社ではなかなか変化が起きません。イノベーションが起きやすいかどうかは会社の風土のようなものです。

 私は企業を訪問する際にいつも気にしていることがあります。それは“時計がズレていないか”ということです。
 企業を訪問すると時折、時計が10分進んでいたり10分遅れていたりすることがあります。気が付くと、「時計がズレていますね?」と指摘します。そうすると、20社に1社くらいは「10分前行動のためにわざと10分進めているんです。」という答えが返ってきますが、ほとんどの場合は「あっ、そうでしたか・・」もしくは「そうなんですよ、ズレているんですよ」という答えが返ってきます。

 私はそのような際、それ以上のことは特に何も言わず、しばらく様子を見ることにしています。それによって何を確認するかというと、時計がズレているという問題に対してすぐにアクションをするかどうかということです。
行動の早い会社は訪問時のミーティングの合間の休憩時間に脚立を持ってきてズレた時計を修正します。もしくは翌月訪問するとズレた時計が修正されています。一方で、翌月の訪問時もズレた時計がそのままの会社もあります。

 この違いは一体何なのか?それは問題を認識してそれに対する対策・行動ができる会社かどうかということです。
 時計くらいでと思うかもしれませんが、一事は万事でこのような小さなことがすぐにできる会社はイノベーションが起きやすく、小さなことすらできない会社はイノベーションが起きにくいのです。

 とある全く同じ事業をやっている2つの会社があります。一つの会社は会社はズレた時計をすぐに修正する会社、もう一つの会社はズレた時計を放置する会社です。コロナ禍において当初は同じように苦戦していました。しかし前者のズレた時計をすぐに修正する会社は先行きを読み、迅速にコスト削減や新たな販路の開拓を進めました。更には有効求人倍率が下がるのを見るとこれまでなかなか採用できなかった幹部候補の採用に乗り出しました。結果的にコロナ禍の影響を受けやすい業態にも関わらず利益水準を維持しています。一方後者のズレた時計を放置する会社はどうだったかというと、売上が減ってきたにも関わらず楽観的で何も手を打たず、結果的に大きく利益を落とすことになりました。
 かつては後者の会社の方が売上規模は大きかったのですが、現在は前者の会社の方が何倍もの規模になっています。
 勿論、企業の業績は沢山の要素の上になりたっているため一概には言えませんが、少なくともコロナ禍で問題を認識してすぐに行動する組織だったかどうかということが多少なりとも影響しているのではないかと思います。

 変わるのも変わらないのも習慣です。日々意識して行動することの積み重ねで変わる習慣を身に付けることもできます。
 細かいことを・・と思われるかもしれませんが会社の中に起きている小さな問題を見つけてすぐに対応することがイノベーションが起きやすい組織になる一歩

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