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経営改革における獅子身中の虫

獅子身中の虫(しししんちゅうのむし)ということわざがあります。獅子の体内に寄生して、ついには獅子を死に至らせる虫という意味ですが、分かりやすくいうと組織などの内部にいながら害をなす人ということです。

経営コンサルタントとして沢山の企業の経営改革に携わってきましたが、獅子身中の虫が経営革新の大きな障害になることがあります。これは変化を拒む管理職やベテラン従業員であることもありますが、実は意外と多いのが元社長である会長がそうであるケースが多いというのが実感です。

以前ある会社で、志の高い二代目社長と一緒にお客様に貢献し、世の為人の為になる良い会社と作る為に経営改革に取り組んでいたことがあります。明確な長期ビジョンと具体的な経営計画を策定し、実現に向けてサポートしていました。
いざ実行段階になり、改革を進めようと思っていた矢先、元社長である会長に振り回されことが非常に多くなってきました。
少しでもお客様に喜んでもらうためにと、接点を増やし情報発信をしていこうという方針を立てても週次の実績が落ちると、お客様とのアポをキャンセルさせ管理職全員を呼び出し恫喝してプレッシャーをかけることもしばしばでした。やっとお客様のためにという気持ちで活動し始めていた社員達のモチベーションは低下しました。
また成長のために必要な人材を揃えようと求めるスキルを明確にし、計画的に採用活動をしていても、来月から知り合いの大手企業のOBを入社させることになったから何か仕事をあてがってくれとか、成長エリアへの投資計画を進めていても、撤退しようとしているエリアで良い土地を見つけてきたから銀行と話を詰めてきてくれと突然社長に報告があることもありました。普段から細かい無駄を排除したり効率化を図って少しでも利益を蓄積しよう思っている現場からすると、何のために普段頑張っているのかよく分からないといういう気持ちになってしまします。

そんなことが続いていると経営会議(会長は参加しない会議)でも、何かこちらが指摘をしても幹部メンバーは会長が納得するかどうかばかり気にして内部志向発言ばかり目立つようになりました。

結果的には、実の息子である現社長が奮起して会長に一線から退いていただき、その後はスピード感を持って経営改革を進めることができました。

このように経営改革を進める上で、一番の障害になるのが実は元トップということは少なくありません。事業が軌道に乗り、権限もお金も自由になると私利私欲に走り公私混同の組織運営になってしまいます。
だからこそ、経営トップはスキルやノウハウだけでなく、経営者としてそして人として正しい考え方を学ばないといけないと思います。


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