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外食2社を比較して会計思考力を鍛えよう

前回、「財務諸表を読みたかったら会計思考力を鍛えよう」というテーマで、財務諸表を読み解くために「実際の企業活動と会計の数字を結び付けて考える」“会計思考力”が必要だという内容をアップしました。
本日は具体的な企業の数字を元に、ビジネスモデルの特徴を分析していきたいと思います。

売上高販管費率の違い

売上高販管費率とは売上高に占める販管費の割合を示す指標になります。そもそも販管費というのは何かというと、広告宣伝費や営業マンの人件費などに代表されるような営業費用と、総務・経理など管理部門の人件費や研究開発費、役員報酬などに代表されるような本社・スタッフ部門の費用を合わせたものです。
売上高販管費率が高ければ、売上高に対して使っている販管費が多いということになりますし、売上高販管費率が低ければ、売上高に対して使っている販管費が少ないということになります。

外食企業で売上高販管費率を比較してみる

同じファミリーレストランの「すかいらーく」と「サイゼリヤ」の比較をしてみます。「すかいらーく」はガスト、ジョナサン、バーミヤンの運営企業、「サイゼリヤ」はイタリアンレストランのサイゼリヤの運営企業ですね。

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比較すると、サイゼリヤの方が原価率は高いが販管費率が低いことが分かります。

さて、ここから何が言えるでしょうか?

会計思考力を高めるためにはただ読んで納得するだけでなく、自分なりに実際の企業活動と会計の数字を結び付けて仮説を立てることが必要です。
もし会計思考力を高めたかったら、一度自分なりの仮説を立ててから先を読み進めてください。


サイゼリヤのビジネスモデルの特徴

皆さん自分なりの仮説を立てましたでしょうか?
今回は、私が頻繁に利用しているサイゼリヤについて詳しく説明したいと思います。


まずサイゼリヤの売上原価率が高い理由は、ズバリ良いものを安く提供しているからです。

サイゼリヤは“おいしさとリーズナブルへの挑戦”ということを方針に掲げており、徹底的にコストパフォーマンスを追求しています。原価を下げるためにオーストラリアに自社工場を持ち、自社でレタスの品種改良までしています。それなら原価率も下がりそうなものですが、それ以上に販売価格が安いため売上原価率は高めですね。


そして今回テーマとして取り上げた売上高販管費率が低い理由ですが、まずは広告宣伝費を他社と比べて圧倒的に抑えています。

皆さんサイゼリヤのコマーシャルを見たことありますか?またサイゼリヤがキャラクターや芸能人を起用してプロモーションをしているのを見たことありますか?

きっとないと思います。サイゼリヤはテレビCMやキャラの使用などのプロモーションは一切行っていません。そのため販管費の構成要素の一つである広告宣伝費を大幅に圧縮することができています。

また店舗でキッチンを覗いたことはありますか?

飲食店の店舗運営に詳しい方であれば、調理スペースの小ささとキッチンスタッフの少なさに驚くと思います。

これには理由があり、サイゼリヤは調理をギリギリまでセントラルキッチン(工場)で行っているからです。分かりやすく言うと、店舗のオペレーションは加熱と盛り付け程度で、キッチンには包丁すらありません。このような店舗オペレーションの簡素化により、店舗の運営コストを大幅に削減しています。


このような広告宣伝費や店舗運営のコストを削減していることが、結果的にすかいらーくと比べて大幅に売上高販管費率を低く抑えることに成功している要因です。

戦略やビジネスモデルが数字に表れる

今回は2社の外食企業を例に挙げて説明しましたが、会社の方針や戦略が明確に数字に表れていることを理解していただけたと思います。

このように「実際の企業活動と会計の数字を結び付けて考える」“会計思考力”を鍛えるために、様々な企業の特徴と会計の数字をリンクさせて考える習慣を身に付けましょう。今後も会計思考力を鍛えるための企業分析を紹介していきたいと思います。

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