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ノンアルコールビールはプレミアムビール並みの高利益商材

「ノンアル苦肉の増産 5月 ビール4社、酒提供制限で」

新型コロナウイルス禍で酒類テイストのノンアルコール飲料の需要が高まっている。緊急事態宣言で一部地域で飲食店の酒類提供が制限される中、飲食店でのニーズが増えているためだ。キリンビールやアサヒビールなど大手4社は5月、前年の1~8割の増産を見込む。ビール系飲料の出荷が低迷する中で苦肉のノンアルシフトになる。(2021.5.18日本経済新聞)

飲食店での酒類提供が制限される中、ノンアルコール飲料の需要が伸びているようですね。私もコロナ太りをきっかけに平日自宅に居る際はノンアルコールビールを飲むようにしています。10年前と比較するとノンアルコールビールも随分美味しくなりました。最近ではアルコールだけでなくカロリーや糖質も0の商品も増えており、原料や糖質制限に励む人にとってもありがたい存在ですね。
苦肉のノンアルシフトとありますが、果たして本当にそうでしょうか?物量自体が減っていることが業績に悪影響を及ぼしていることは間違いありませんが、ノンアルコールビールが売れることはメーカーにとってそんなに悪いことではないと思います。なぜならノンアルコールビールはプレミアムビール並みに儲かるからです。


ノンアルコールビールが安くても儲かるカラクリ

ノンアルコールビールは普通のビールと比べてなぜ儲かるのか?

一般に店舗で販売されている価格を見るとノンアルコールビールは普通のビールと比べて明らかに安いです。
価格が安いのに儲かるのは原価が安いからなのか?実はそんなこともありません。物流費は同じように掛かるし、原材料費だってそんなに大きな違いはありません。
富国生命が出した資料によると500mlでビールとノンアルコールビールの変動費は5円程度でした。販売単価で50~60円/本(350ml)以上ある差を埋める程ではありません。

それでは一体何が違うのか?
その違いは酒税の金額です。ビールは350ml換算で70円の酒税が掛かりますが、ノンアルコールビールはアルコールが入っていないので0円です。実はビールが高い理由は酒税が高いためであり、酒税を除いた単価は実はノンアルコールビールより安いくらいです。


ジャンル別に見る限界利益率

具体的にジャンル別にどの程度儲かるのか実勢価格を元に調べてみました。

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Amazonの価格は変動しますし、変動費は前述の富国生命の資料を元に私が予想したものなので、若干のブレはあると思いますが全体の傾向を捉える上では問題ないと考えます。

見ていただくと分かるように酒税引き単価(単価-酒税)を元に算出した酒税引き限界利益(単価-変動費)は【ノンアルコール】キリン 零ICHI:85円と【プレミアムビール】サッポロヱビスビール:86円で遜色ない水準であることが分かります。
【ビール】キリン一番搾り:70円、【発泡酒】キリン淡麗:56円、【新ジャンル】本麒麟:44円と比較すると大きな差があることが分かりますね。

このように低価格であまり儲からなそうに見えるノンアルコールビールは実はプレミアムビールに負けないくらい高利益であることが分かります。
商品戦略を検討する際にもコスト構造をしっかり見極めることが重要です。一見すると儲かっていそうなものが実は全然儲かっていなかったということはよくある話です。

戦略を立案する際も丁寧にコストを分解して考えましょう。

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