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中途半端な電源構成政策から見える政府のやり切る力の弱さ

「カーボンゼロ」を経営目標に加える企業増加

最近「カーボンゼロ」というキーワードが新聞・ニュースでよく取り上げられます。環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して投資するESG投資も欧米を中心に広く浸透し始めており、企業としても対応を急いでます。

温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンゼロ」を経営目標に加える動きが日本の主要企業に広がっている。日経平均採用銘柄225社中少なくとも4割の85社が目標を定めた。投資家の圧力が強まるなか、環境配慮を徹底し、関連技術を磨いて競争力につなげる狙いがある。化石燃料に頼る電源構成(総合2面きょうのことば)の見直しなど、企業のニーズにこたえる態勢整備が不可欠だ。
国内で出る温暖化ガスの8割を企業・公共部門が占める。2050年のカーボンゼロという政府目標の達成には企業の取り組みが欠かせない。(2021.5.25日本経済新聞)


温暖化ガス排出の4割はエネルギー転換部門(発電など)


記事の中に「国内で出る温暖化ガスの8割を企業・公共部門が占める。」とありましたが、国内の温暖化ガス排出の内訳はどうなのでしょうか。

経済産業省が2021年2月に公表している「温室効果ガス排出の現状等」という資料がありましたのでその内容を確認してみます。

下記の資料は日本全体の温暖化ガスの84.9%を占めるエネルギー起源CO2の内訳になります。(残りはセメント製造や家畜のげっぷなど)

部門別排出量

左の図を見てみると、エネルギー転換部門が全体の42%を占めています。
エネルギー転換部門というのは、石油、石炭等の一次エネルギーを産業、民生、運輸部門で消費される電力、ガソリンなどの最終エネルギーに転換する部門(発電、石油精製)のことです。
電気・熱配分前(左図)と電気・熱配分後(右図)は、そもそも排出した部門(左図)と、最終消費ベースで各部門に割り振ったもの(右図)になります。


長期的には火力発電を減少、しかし短期的には増加?

下記の図からも分かるように発電の中でも火力発電は圧倒的にCO2の排出量が多く、日本のCO2排出量を減らすにはいかに化石燃料に頼った電源構成を変えられるかが課題です。

資源エネルギー庁HP

しかし、一方で経済産業省は今冬の電力の安定供給のために休止中の液化天然ガス(LNG)火力発電所などの再稼働を促す検討に入っています。
更には温暖化ガスの排出削減対策をとった火力発電所は、新設から一定年数は固定収入を得られる制度についても検討する方向のようです。

30年度に再生エネと原子力の比率を計4割超という政府目標を掲げ、火力発電を縮小するという大方針を掲げています。しかし一方で休止中の火力発電所の稼働や新設を促すというのは逆行した動きに見えます。

電源政策にも表れる政府のやり切る力の弱さ

どのようなものでも過渡期には混乱が発生し、方針の微調整も必要になります。

海外では再生エネの発電コストが石炭火力を下回る地域が増え、先行する欧州では既に3割超に達している国もあります。

丁寧に進めるという視点も必要だとは思いますが、他の諸外国に比べて大きな方針を推進するという点において日本政府は相変わらずやり通す力が欠けているように思えてなりません。

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