毎日新聞朝刊で、長編小説『マチネの終わりに』の連載が始まります!
こんにちは。
昨年、noteにアカウントを開設して以来、しばらく更新が滞っていましたが、それも昨日までのことです(笑)!
今年は、ここが、僕の活動の上で非常に重要な場所になります。
なぜかと申しますと、……
3月1日から、毎日新聞朝刊で、新作『マチネの終わりに』の連載が始まります。
『透明な迷宮』に続く僕の第4期の小説で、『空白を満たしなさい』以来、三年ぶりの長篇となります。
物語は、天分豊かなクラシック・ギタリスト蒔野聡史(まきの さとし)と、海外の通信社に勤務する小峰洋子(こみね ようこ)との出会いから始まります。
蒔野は、2006年を締めくくるコンサートを華々しく終え、バックステージで、洋子を紹介されます。彼は、彼女の父親が、戦争映画の傑作『幸福の硬貨』の監督イェルコ・ソリッチであることを知り、興味を抱きます。彼はその映画の大ファンで、有名なクラシック・ギターのテーマ曲を、長年、レパートリーとしてきました。しかし、ソリッチのプロフィールから、洋子の存在はなぜか抹消されています。
蒔野と洋子は、互いに心惹かれつつ、その後、別々の人生を歩んでいきます。洋子は直後に、特派員として戦地に赴任します。蒔野は、世評に反して、自身の音楽家として未来に不安を感じ始めます。
幾度となく交錯し、またすれ違う二人の運命は、やがて、……
……というような話です。
小説の中心的なテーマは「恋愛」ですが、そこは僕の小説ですので、文明と文化、喧噪と静寂、生と死、更には40代の困難、父と娘、《ヴェニスに死す》症候群、リルケの詩、……といった、硬軟、大小様々なテーマが折り重なって、重層的な作りになっています。
もちろん、全篇にわたって音楽の存在は重要です!
『透明な迷宮』以来、「ページをめくる手が止まらない」小説ではなく、「ページをめくりたいけどめくりたくない、ずっとその世界に浸りきっていたい」小説というのを考えてきました。
何かとくたびれる世の中ですが、小説を読むことでしか得られない精神的なよろこびを、改めて、追求したいと思っています。
因みに、タイトルにある「マチネ」というのは、コンサートの「昼の部」のことです。
挿絵は、今飛ぶ鳥を落とす勢いのクリエーター集団カイブツの石井正信さんです。
従来の新聞連載の挿絵とは異なる、あっ!と驚く仕掛けがありますので、こちらも乞うご期待です。
……で、最初の話に戻りますと、この小説、毎日新聞紙上だけでなく、なんとこのnoteでも読んでいただけます! (※新聞掲載の10日遅れです。)
更にnoteだけの連動企画として、若手アーティストのみなさんとのコラボレーション、noteユーザのみなさんとのコレボレーションも展開します。
『マチネの終わりに』をテーマに、アーティストに作品を制作してもらうというもので、そのプロセスや僕とのインタラクションも、この場を通じて楽しんでいただけます。
どんな作品が生まれるのか? 僕自身の創作の刺激となるような世界を期待しています。参加アーティストの名前は、後日、またここで発表します。
小説は、ジラルダンの時代から新聞とともに発展し、その連載という形式は、明治時代に日本にそのまま受け継がれ、今やほとんど日本でだけ残っています。
このオーセンティックな文学のための「場所」が、ウェブの世界とどんな新しい関係を築きうるのか?
何よりも、小説そのものを楽しんでいただくのが一番ですが、こうした試みの全体を、ちょっとしたお祭りのように面白がっていただければ幸いです。
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