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小谷正一さん

昨日につづき、戦後のメディアのすべてをつくったとされる小谷正一(こたにまさかず)さんについて思いを馳せている。

本を取り寄せることもままならず(アメリカへの送料が高い)、僕はまだ小谷さんのほとんどを知らない。
でも、橘川幸夫さんのnoteや電通報を通じて、少しだけその人生を遠くから覗き込むことはできる。

小谷さんは、プロデューサーである。
最初は新聞、次にイベント、そしてテレビ、さらにプロモーション(広告)の下地のすべてをつくったというから、とてつもない怪物だ。
なのに、人当たりは優しく、決して表に出てこなかった人物。

電通の顧問として引き止められて、引き止められつづけた後に、1983(昭和58)年1月20日、ついに引退のパーティーが催されたときの、挨拶の第一声が痺れる。

僕は人を壇上に上げるために生まれて来たのに、
なぜ僕が壇上に上がるんだ。

えぇ、小谷さん、生まれてきた意味を自覚しちゃってるよ・・・。
小谷さん、スケールがやたらとでかい。まじでかい。
プロデューサーという仕事の捉え方がすごい。どんなふうにすごいかを、電通報の一節をまるまる引用させていただく。

「日本三景のうち、松島と天橋立は自然が作りだしたものである。しかし宮島は人間の発想と作業によるものだ。厳島神社の鳥居と社殿を海の際に建てた着想が宮島を日本三景の一つにした。誰がこのように卓越した着想を持ったか。それを推進したのは誰か。鳥居を海の中に建てるという発想には当然反対があったはずだ。潮が満ちているとき工事をどのようにするのか。余計な手間と経費がかかるではないか。

しかしその反対を押し切って多くの困難を解決して鳥居を完成させた者がいた。俗論を超えた見識と決断を持った存在があってはじめて建立された。そのような推進者こそ真のプロデューサーといえる」。

なんてことだ。この人、厳島神社のプロデューサーの話してるよ・・・。

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厳島神社(いつくしまじんじゃ)がお祀りしているのは、天照大御神(あまてらすおおみかみ)と素盞鳴尊(すさのおのみこと)が高天原(たかまのはら)で剣玉の御誓(うけい)をされた時に御出現になった神々。
プロデューサーは、佐伯鞍職(さえきのくらもと)。神勅が下った鞍職は大神様が高天原から連れてきた神鴉(ごからす)の先導のもと、御祭神と共に島の浦々を巡り、海水の差し引きする現在地を選んで、西暦593年に御社殿を建てた。

思わずプロデューサーが誰か調べちゃったよ!
さえきのくらもとさんね。この人が「海の上に鳥居を建てちゃえ!」って神勅(しんちょく。神様から命令が下ること)があってプロデュースしたっぽい。
くらもとさん、いろーんなところを四季を通じて神様と一緒に何年も何年も巡り、ようやく「ここだ」と決める。その決め方までをもすら、物語にしてるっぽい。そしてただの物語ではない。実際に災害や海の満ち引きあらゆることを計算したからこそ、今も残っているわけだ。無数の改修はしているけどその価値があるから改修されているわけで、くらもとがすげえプロデューサーであることは間違いない。

で、小谷さんは次に、「京都の祇園祭は誰がはじめたんだよ?プロデューサーがいたんだろ?」って言ってる。いやぁ、今までそんな事考えたこともなかったけど、そのとおりですよね。

そして、電通引退の挨拶において、「広告は文化だ」と述べたあと、こう締めくくる。

私が電通の壁に書き残してゆきたいのは、
『広告は花だ』という一行です。
広告人はそこへ背伸びをしていくべきじゃないか。

広告は文化であり、花であるべきだ、と。染みます。
1992年に80歳でこの世を去った小谷さん、「21世紀っていったいどんな世紀やろ。一日でいいから生きて見てみたいな」とおっしゃっていたらしい。

小谷さん、私はあなたのことを、あなたが目をかけていた橘川幸夫さんを通じて知ることになりました。
そしておそらく、私の祖父とあなたも繋がっていたことと思います。僕の祖父もイベントだ!テレビ局だ!といろいろ同じ時代に駆け巡っていたようなので。もうその詳細を僕が知る機会はないのかも知れませんが、小谷さんに一言伝えたい。

電通も、その役目を終えました。
21世紀は、20年遅れてやってきました。
そして2020年コロナという不思議な全世界現象によって、「戦後」が完全に終わりました。
終戦から2019年まで続いた時代のメディアづくり、本当にお疲れさまでした。

時代は巡りますね。今、すべてがゼロリセットで、再び始まります。
企業の広告マーケティングの時代は完全に終わり、広告は花ではなくなりました。でも、戦後の焼け野原からこれから芽吹くのは、もう一度「暮らし」や「生き方」を生み出すという、素晴らしい新しい季節です。
その様子をどうか天国から楽しくみてください。良かったら、生まれ変わって参加してみてはいかがですか?参加型社会に。バトンはしかと受け取りましたぞ。これからの100年をもう一回転させて、地球を蹴り揚げてやりましょう!!

合掌。


興味を持った方は、こちらを読んでみましょう。全5回。

小谷正一さんから「ネクストジェネレーション」と言われた、ロッキング・オン創刊メンバーの橘川幸夫さんの追悼文はこちら。

(写真は電通報より拝借)

#参加型社会


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