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ベースレジストリの欧州での取り組み

ベースレジストリは、デジタル化の重要な資源であるデータの中核として各国が重要施策として推進していますが、その辺の最新情報を改めて整理してみましょう。

そもそも、欧州でベースレジストリはどのような位置づけなのか

欧州の一部の国でベースレジストリの整備を進めていましたが、EU全体として展開をしようと、2016年に本格的なベースレジストリ・プロジェクトであるABR(Access to the Base Registries)を開始しました。
その目的は、 国内や国境を越えたベースレジストリへのアクセスを提供するためです。

ベースレジストリのメリットとして3点に着目しています。

  • さまざまな公共サービス間で情報を効率的かつ効果的に交換できること

  • 公共サービスを作るときに素早く容易に作ることができること

  • これを使うことによって 行政手続きの負担を 減らすことができること

このベースレジストリは、欧州の相互運用性の枠組みであるEIF(European Interoperability Framework)の中でも重要な役割を担っています。
EIFの各レイヤーを実装した行政サービスの一番下の緑の部分が、情報ソースで「ベースレジストリ」「他の信頼できるデータ」「オープンデータ」で構成されます。

EIF Conceptual Model

ベースレジストリの推進はフレームワークをや全体像が必要

ベースレジストリの整備は。Base Registries Access and Interconnection Framework (BRAIF)に従って着々と進められています。

ベースレジストリを使ってよい公共サービスを作るためには、ベースレジストリがどこにあるかのカタログを提供するとともに、ベースレジストリ間で相互のデータ連携(修正含む)を行うことが必要です。また、それぞれのベースレジストリはきちんとマスタデータ管理を行う必要があります。

BRAIF conceptual model

ベースレジストリになる各データには、それぞれの事情があり、まずは既存の環境にガバナンスを効かせることが必要で、その後にアーキテクチャに基づく規範を入れ、共通のデータモデルを使うとともにデータの管理体系を整備していく必要があります。

BRAIF conceptual model

そして、ベースレジストリ間をつなぐには、Service Oriented Architecture (SOA)をベースに考えます。再利用可能で、抽象的で、公開されて、正式化されたアーキテクチャで構成され、技術中立で標準化されて、利用可能なサービスとして提供されます。

Service Oriented Architecture (SOA) and Web services benefits

そして、ベースレジストリを構築するための詳しい手順はABR Catalogue of Solutionsとして提供されています。
また、ガイドラインとしてGuidelines on Access to Base Registriesが提供されています。

このように全体をフレームワークとして整備していくことが重要です。

欧州のベースレジストリの今後の展開

各国での取り組みは2021年まではダッシュっボードで見ることができ、2023年までは各国レポートで見ることができます。ここでは2021年時点の整備状況をもとに状況を見てみましょう。

各国で基本情報の整備が進んできており、以下は基本5情報のベースレジストリの整備状況です。人口、自動車、税、土地、企業のベースレジストリはほぼ整備されています。

EIF Monitoring

欧州ではデータ共有という言葉がよく使われるように、ベースレジストリが他の公共機関で利用可能かどうかという点では多くの国がデータ共有を許容しています。

EIF Monitoring

また、ベースレジストリの構造が、きちんとしたコードリストやデータモデルに従っているかという点では、既存システムがあることもありまだまだ十分ではありません。

EIF Monitoring

れーたを探すのが容易になるようにレジストリカタログを整備しているかという点では、多くの国が整備していて、DCATで検索可能にしています。

EIF Monitoring

ベースレジストリの品質評価ができているかどうかは利活用する上で重要な情報です。まだ十分に品質管理ができていない国も多いです。

EIF Monitoring

しかし、ベースレジストリの重要5情報については、マスタデータ管理も品質保証もできています。

EIF Monitoring

こんな感じで、ベースレジストリの整備は着々と進められています。

各国それぞれが、基本情報以外のベースレジストリ整備に取り組んでいて、たとえばフランスでは、アドレス、自動車、企業、税、ビジネスID、地理空間コード、地籍、行政機関、雇用等をベースレジストリとして取り組んでいます。

各国は毎年度ベースレジストリに関する調査報告を公開しているのですが、基本情報の整備が進み、応用範囲へと展開を図っているところです。

日本のこれまでの取り組み

2018年7月に、政府内の委員会(第2回新戦略推進専門調査会デジタル・ガバメント分科会)で下の図のようにコア・ボキャブラリとともに重要性が報告されています。

デジタル・ガバメント分科会 資料4

こうした検討を経て、国内で本格的に検討が始まったのが、2020年3月に政府CIO補佐官から出された提言「デジタル・ガバメント実現のためのグランドデザイン」です。ベースレジストリの整備を提案しています。
また、2020年6月のデジタル社会構築タスクフォースの報告でもベースレジストリの重要性に言及しています。
そして、2020年7月の「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(閣議決定)」の施策集にベースレジストリの整備が明記されました。

同時期には先進各国がデータ戦略を次々と打ち出しており、日本も本格的にデータ戦略を作るべく、2020年10月にデータ戦略タスクフォースを設置し、2020年12月に「データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ」と「ベース・レジストリ・ロードマップ」が公表されました。
また、それを精査して追加したものとして、「包括的データ戦略」が2021年6月に閣議決定されています。

その後、2022年9月にデジタル庁が設置され包括的データ戦略の一環としてベースレジストリチームができ推進されています。

各分野や地域でのベースレジストリの整備も進められていますし、データ社会の基盤として整備が進むといいですね。

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