政府相互運用性フレームワーク(GIF)の解説ビデオ作りました
政府相互運用性フレームワーク(GIF)が2022年3月31日に公開されましたが、これはいったい何なのかという話をよく聞きます。確かにページを見るとファイルが大量にあってわかりにくいですね。そこでGIF全体の考え方をまとめた解説のビデオを作ってみました。
ついでに、ビデオでは軽くしか触れていないエンジニアリングという観点からの整理をこのnoteで書いてみたいと思います。
GIFとは何か
GIFは政府相互運用性フレークワーク(Government Interoperability Framework)の略で、デジタル社会を作るための技術基盤です。ルール、ガイドブック、データモデルなどで構成されています。
エンジニアリングを改めて見つめなおそう
GIFでは、エンジニア視点で議論をしてきています。
これまでもソフトウェア・エンジニアリングは検討が進められてきました。しかし品質管理等に焦点が当たりがちで、モデリング等の分野はまだまだ整理ができていません。
建築や製造の分野はモデリングがしっかりしているので、設計資料があれば同じものを作ることができます。しかし、今までのITの世界は、設計資料があっても同じものを作れていません。そのため、複数のサービスをつなごうとするとそこに差異がありつながらないということが起こります。
また、建築や製造の分野はモデリングに加えて規格化もしっかりできているのでネジなどの共通部品が汎用的に使われています。一方、デジタルの社会は、日付や住所の書き方さえ統一できていないという状況です。
これは、ソフトウェア・エンジニアリングに分野の人がサボっていたというわけではありません。
建築や製造は1700年代後半の産業革命のころからの知見の蓄積があり、近代的な図面化が行われ、それがCAD/CAMに反映されています。
コンピュータは50年くらいの歴史の上、技術変化が速いので方法論を確立することが難しいのです。
欧米は、積極的にモデリング手法を取り入れ、パッケージ化(ひな型化)することにより、このソフトウェアの課題に取り組んできました。
パッケージが提供する業務のベストプラクティスである業務モデルと自業務のフィット&ギャップを考えることで、ソフトウェア開発の生産性向上や利用時の相互運用性の向上を実現してきています。
GIFは、まさにひな型化とフィット&ギャップを入れる考え方を導入しており、これまで国内で中心であった御用聞き型のデータ設計と異なるグローバルに一般的にとられるアプローチをとっています。
データ・サイエンティストではなくデータ・エンジニア
世の中では、データ・サイエンティストが引く手あまたで、AIの専門家にもフォーカスが当たっています。でも、データ・サイエンティストもAIの専門家も、多くの時間をデータの探索と処理用にデータを成型するデータクレンジングに時間を使っています。実感として7,8割はデータクレンジングに時間を使っているのではないかとよく言われます。
ここの生産性を抜本的に上げるためには、データを使いやすい基盤を作ることが必要です。
今、育成が進められている大量のデータサイエンティストやAIの専門家の力を活かすための「多様で質の高いデータを十分な量の供給する」ことが重要です。これを実現するにはオープン化や取引市場の整備というデータの流れを効率的に行える仕組みを作るのはもちろんですが、供給するデータ自体をきれいにする必要があります。
そのための仕組みとしてGIFは作られています。
使いやすいデータは何かという観点でデータモデルの設計を集中的にしています。
そこが、データエンジニアの腕の見せ所です。効率的に使えるデータモデルを分野横断で考え、グローバルな標準や既存のデータとの整合性を考えながらデータモデルを設計していきます。住所をいくつのデータ項目に分けるべきか、データ内にハイフンを入れるべきか等、社会全体に影響を与える重要な判断をすることも多いです。
大量のデータ利用者やデジタル社会を支えるために、少数精鋭のチームでGIFを支えています。
一方、データエンジニアの仕事は、その仕事の成果が各種サービスに組み込まれるので目に見えることはほとんどありません。水道や電気のように当然あるものと考えられるデジタル社会の基盤です。
相田みつおが「土の中の」で「土の中の水道管 高いビルの下の下水 大事なものは表に出ない」、「花を支える枝」で「花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 根はみえねんだなあ」というように、社会を支える役割をデータエンジニアが担っています。
一方、日本にはデータエンジニアが非常に少ないのが現実です。大手IT企業や世界的ITコンサル会社ですら、エンジニアリングの視点からデータを語れる人が少ないです。
今回のGIFの整備は、データをエンジニアリングという観点から見つめなおすきっかけになればと考えています。
エンジニアリングという観点からさらに進めていくところ
今回のGIFではアーキテクチャモデルやクラス図を導入しています。また、プロセスモデルではBPMNを使っています。しかし、これはまだ設計の段階です。
機械や建築の設計では、モデルを使ってシミュレーションや構造計算を行っています。そして、デジタル・ツインが実現しつつあります。
今後のデジタル社会に向けては社会全体のデジタル・ツイン化を目指しています。サービスシミュレーションや経済効果の分析等、エンジニアリングの力を使って実現したいものです。
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