見出し画像

データ戦略統括ってなにする人

デジタル庁ができてデータ戦略統括というポジションができたのですが、「これなんですか?」と聞かれることが多いので、一体なになのか?また、何の仕事を、どのようにしているかをまとめてみました。

データ戦略統括とは、どんなポジションか

デジタル庁には多くの幹部がいます。組織経営や分野に総合的に責任を持つ全体経営の人、分野を統括し組織経営にも関わるCxO等の人、担当分野に対して責任を持つ分野統括の人、各業務チームのマネジメントに責任を持つグループ責任者の人の大きく4つに分類されます。データ戦略統括は、このうちの分野統括の1名です。特に、分野統括のうち戦略に責任を持つのはデータ戦略と国際戦略の2名です。

データの責任者は、一般にはCDO(Chief Data Officer)で、CDO(Chief Digital Officer)とどちらですかと聞かれることが多いのですが、デジタル庁はデザインを重視して、CDOをChief Design Officerとしています。
ではデータはどうなるかというと、データ戦略責任者は「デジタル社会の実現に向けた重点計画(2021年6月18日閣議決定)」の中で以下のように役割を定義し、それに従いデータ戦略統括が置かれています。

デジタル庁にデータ戦略責任者を置き、データで行政を変えるという視点からデータの整備、AI を含めたデータの利活用などの具体の政策を担当させることが必要である。また、各府省庁にもデータ責任者を置き、デジタル庁データ戦略責任者と各府省庁データ責任者が連携し、各組織の持つデータを洗い出し、その中から必要なデータの特定、データの活用方策の企画を行い、新たな価値の創造を図っていく。更に、今後のデータ整備や運用の在り方、そのための体制・組織について方針を策定する。

このデータ戦略責任者は、英語名はHead of Data Strategyであり、一般のCDO(Chief Data Officer)の役割であるデータ戦略等のトップとしてマネジメントすることに加え、システム設計・構築、データ管理等の現場のオペレーションまで、一貫したプレイングマネージャーとしての役割が求められています。そういう点で、データ・オーナーからデータの管理を任されるData stewardの役割も担っています。「CDO + Data steward = Head of Data Strategy」という感じでしょうか。

政府にCDOを置かない国は他にもあります。例えば、デジタルガバメント先進国のニュージーランドではGovernment Chief Data Steward (GCDS)を政府全体のデータ戦略のリーダーとして設置しています。欧州委員会(EC)もCDOという役職ではなくInformation management steering board(IMSB)というグループで推進しています。

なぜCDO(Chief Data Officer)はいないのかという意見はありますが、名称よりも中身が重要ですし、Headということでトップとやることが決まっているのでそれでよいのではないでしょうか。

デジタル庁に参加するまでの経緯

もともと民間で電子行政分野に取り組み、2008年にCIO補佐官として経済産業省で働き始めて、そこから内閣官房の政府CIO補佐官、政府CIO上席補佐官を経て、現在のデジタル庁のデータ戦略統括になっています。
その前にも1998年から2年間出向により政府内で働いていました。その時に社会の基盤としての行政システムを勉強し、その後、民間に戻ってからも政府のシステム改革を支援していましたが、外から変えようとしても本格的な改革まで手が届かないので、やはり政府内から変革しようとCIO補佐官として戻ってきました。そういう点で民-官ー民-官のリボルビングドアです。
その後、様々な政府内プロジェクトを推進していく中で、データこそがその本質であると確信し、データ戦略や関連したプロジェクトに取り組んできました。

そうこうしているうちに、デジタル庁の設置の準備が始まりました。既にコアとなるデータ標準は整備されデータ戦略も作られたので、ここで他の人に引き継ぐこともできたのですが、データ標準類の最終整理や普及展開がまだ不十分なので、デジタル庁に参加して最後の仕上げを行うことにしました。

今の具体的な仕事

設置から一か月たちました。現在、19プロジェクトに参加していることになっているらしいのですが、これだけあると、自分が何のプロジェクトに参加しているかわからないし、日々、新しい案件の相談が来るので、いくつプロジェクトやっているかよくわからないです。データ戦略がメインフィールドですが、それ以外の仕事もたくさんやっています。仕事が多く「CDO + Data steward ÷ 2 = Head of Data Strategy」としたいところですが、今は「÷ 2」がない状態です。

コアとなっている仕事は、データ戦略の検討、アーキテクチャの整備、データ標準や体系の整備です。もちろん、それを実現するための実証も参加していますし、自治体との調整、国際調整なども行っています。また、普及するためには実サービスに適用することが必要で、教育、防災、スマートシティ等のプロジェクトにも深くかかわっています。Webサイトのコンテンツや各種入力フォームなど、政府内にある多くのシステムとの連携をとることもやっています。

具体的には、以下のことをしています。
・10年先、100年先をにらんだ物語を書くこと(構想つくり)
・外部組織とのチームビルディングをすること
・システムにおけるデータ設計の基本方針を作ること
・アーキテクチャやデータ標準を最小のプロパティレベルまで検討すること
・データ品質を考えること
・コードやコントロールドボキャブラリの検討をすること
・オープンデータや個人情報の扱いなどのルールの検討をすること
・データへのアクセス(認証)方法等の検討をすること
・データやアーキテクチャの方法論を検討すること
・データに関するエコシステムを考えること
・データのセキュリティを考えること
・データチームの運営、採用、人材育成
・国際的な情報収集と連携

また対象データは行政で扱うデータなので、テキストデータから画像データ、図形データ、センサーデータまで幅広く、分野もほぼ全てのデータを対象にしています。
これらがメインで、システムガバナンス、デジタル庁内部の調整などもいろいろ行っています。

仕事のスタイル

平日は会議を中心に流れに任せて仕事し、休日に全体のまとめとかをしている感じです。休日というとブラックな感じもしますが、休む時は休むし、最近はコロナでできませんが、バカンスとかで長期休みをとる形でメリハリはつけています。今後はワーケーションも入れていこうかと画策しています。
実は、テレワークはほとんどしていません。オフィスでちょっと相談したいということも多いので、プロジェクトメンバーが相談しやすいようになるべく出勤しています。もちろん、web会議、メールやチャットでの相談も多いです。

オフィスでは、いつもは奥のほうの4人卓の島に陣取っています。フリーアドレスなので、だれでも気軽に相談に来れますし、オフィスの雰囲気などの様子も見渡せるので気に入っています。
web会議していることが多いことからか、書類を広げて2人分の机を使っているからか、相談者が多くて気が散るからか、雰囲気が悪いからか、4人卓なのに誰も着席しないので島全体を占有しています。相談しにくる人も話しやすいので、それはそれでいいのかなと思っています。

コミュニケーションは、メール、Teamsのチャット、slack、Messenger、ショートメッセージを併用しているので、ちょっと整理が必要です。連絡の情報が見つからなくて探していることも多いです。
予定は基本的にスケジューラベースで動いているので、空いていたら誰でも好きに予定を入れられます。(予定があるのに2重に入れてくる人や、昼や夜に予定を入れてくる人もいたりしますw)
外部の人とはメールベースで予定調整するので、たまに見落としたり、web会議のURLが見つけられなくて会議に遅刻することもあります。ここは改善したいです。

呼称は、メールは「さま」付け、口頭は「さん」付けですね。デジタル庁でも、○○参事官とか役職つけて呼ぶ人は多いですが、基本的に呼ぶときも呼ばれるときも「さん」にしています。フラットな組織を目指しているわけですし、そのほうがフランクに話せると思います。

仕事を進めるうえで、透明性が重要なポイントです。どうしてこの政策が考えられたのか、担当者はどのようなビジョンや基礎知識を持っているのかなどがわかることで、戦略への理解が深まります。そのためデータ戦略の推進では透明性の確保を常に考えています。昨年の秋から始めったデータ戦略のタスクフォースでは、毎回、会議後すぐに資料を公開して対話型サイトのアイデアボックスで議論を行ってきました。
また、データチームで行っている研修はビデオと資料ともに公開しています。せっかく研修コンテンツを作るのですから、データチームのメンバーがレベルアップすればよいのではなく、誰もがデータ分野の最新情報に触れれる環境を提供していくことを目指しています。そうすることで、デジタル庁だけではなく、企業や個人、研究機関等と一体となってデータ戦略を推進していきたいと考えています。さらに、これらの情報を見てデジタル庁に参加してくれる人が増えるといいなと思っています。(今は、データ・エンジニアとデータ・サイエンティストを募集中です!)

仕事をしていく上で責任や役割の分担はどこにあるのですかとよく聞かれます。簡単に言うと、行政的な内容は行政出身者が対応し、技術的な内容は民間出身者が対応するという切り分けで、二人三脚で進めています。具体的には国会質問や予算、人員等のリソース管理や調整は行政系の枠組みに合わせて行政出身者が対応しますし、戦略の方向性や標準の正確性、実証の推進等の技術的な内容は民間出身者が対応しています。その境も厳密にしているわけではなく、行政出身者と民間出身者が密にサポートしあうことで、強いマネジメントチームを作っています。

これからやっていきたいこと

データ標準や管理の基本形が一通り揃いましたので、今後進めなければいけないのは、100年後にも通用するような仕組み全体の総仕上げです。そしてそれを大々的に普及展開していくことが重要です。

データ戦略で実現したいことは、誰もがデータを意識することなく様々なサービスの恩恵を享受できる社会です。

今後、社会を支えるサービスのほとんどが、データを使ってサービスの高度化を図っていきます。そのためには必要なデータが簡単に手に入り、活用され、しかも安心して任せておける仕組みが必要です。検索などしなくても、話しかけるだけで自然に答えてくれるイメージでしょうか。電気、ガス、上下水道のような、あって当たり前の基盤を作っていきたいものです。

そのため、前述したように透明性をもってオープンに進めていくとともに、人材育成を頑張りたいです。
データチームはこれまでもそうでしたが、これからも常に世界をベンチマークにして進めていきます。世界トップレベルで活躍できる人材がこのチームからどんどん出てくるといいですね。

また、戦略などの中長期の大きな話だけでなく具体的な成果を出すことも重視しており、とりあえず2022年3月までにデータ標準体系を整理することや実証で分かりやすい成果を出すことをマイルストンにして頑張っていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?