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失恋レーシック

「わたしと一生寄り添ってください!」「え、無理です……」

フラれました。

レーシックの適応検査を受けてきました。
レーシックは、角膜表面をスライスして曲率を調節し、近視を矯正することで、視力を回復する手術です。  

そのため、角膜が薄かったり、角膜を削っても削ってもどうしようもないほどのド近視には受けられない術式であり、レーシックを受けられるか否かを判定する検査が、適応検査です。

適応検査前の問診票にコンタクトの度数を記入する欄がありました。

左:-8.0
右:-11.0  

記入したところ、度数を見たお姉さんに「レーシックは無理かもしれません」と宣言されました。適応検査前なのに。

ただ、医療に従事する方の言葉は悲観的です。楽観を口にせず、希望を持たせる発言をしません。その態度は誠実であり、とても、優しいひとたちです。職業上、楽観を持たせてはならない。それを承知した上で、敵役を担ってくれます。

ですから、「まぁ、そうは言っても」と、私自身は楽観的でありました。


適応検査には、2時間半ほど時間がかかります。

まず、眼の形を立体的に把握する検査がありました。
青い光がぐるぐるとまわっていました。

次に、気球を見る検査がありました。
視力検査につきものの気球です。気球にのってどこまでいくかは定かでないのですが、近視と乱視の度合いを測る検査でした。

そして、緑の輪がいくつも重なる幾何学模様を見つめたり(表面の形状を測る検査)、いつものランドルト環と赤と緑の二重丸を見つめたり(視力検査)、空気をシュパッとされたり(眼圧検査)、 緑の丸を見つめたり(細胞を調べる検査)しました。  

ひととおり終わった後、瞳孔が開く目薬をさされ、ICLについてのDVDを見るよう部屋に通されました。おそらく、この時点で『レーシック不可』と判断されていたのでしょう(レーシックのレの字もないICL一辺倒のDVDでした)。

瞳孔を強制的に開かせる体験ははじめてでしたが、遠慮なく焦点が合いませんでした。eyeだけに。普段、30cm程度で読めるはずの小説が、座った太ももあたりまで本を離さないと読めません。老眼を疑似体験した気分です。

そうして最後にお医者様の診察があり、
結局、レーシックにはフラれてしまいました。  「君の近視にはついていけない……」との別れ文句を残して。


レーシックの代わりに提示されたICLは、眼の中にレンズを入れる術式です。
レーシックと大きく違う点は、

・角膜が薄くても施術可能
・最強度近視にも対応可能
・元の状態に戻すことが可能(レンズを取り出せる)
・飛び立つ諭吉さんの人数が増える

です。特に最後ですが、個人に合わせたレンズを作成するため、羽ばたく諭吉さんの数は倍以上違います。

具体的に言うと、レーシックに貢ぐ諭吉さんの数は「15から~多くても35人」程度に対し、ICLは「最低70人弱、乱視と付き合うなら+10人はもらわないとね」と言った感じです。ICLはお金がかかるのです。

まさか、レーシックさんにフラれるとは思っていませんでした。失恋の痛手が大きいです。主に諭吉さんの人数で。

ただ、失恋はしてしまいましたが、ICLと言う新しいパートナーを見つけたので、この夏からは、ICLと寄り添い、生きていこうと思います。たくさんの諭吉さんと引き換えに……。

気と機が向きました際に、是非。